6話 空を自由に飛びたいな
学園の裏の広場へとやってきた特別クラス御一行。
釣り竿、槍、卒塔婆をもった一行、最早何の集団か完全に謎である。メルリカ婆さんも箒を持っていた、ローブの老婆に箒、まさに魔女!
「よし、ここでいいだろう。さっき作った道具は持ってきたね?」
「やっぱ箒持ってこればよかったわー」
「今更言っても遅いッスよ……」
諦めの悪いのもオバちゃんである、マーシャの方はもう吹っ切っていた。
「グダグダ言ってても仕方ないよ、飛び方自体は簡単さ。ちょいと得物に魔力を込めるだけさ、するとこうなる」
説明しつつ、メルリカ婆さんが自分の持ってきた箒に魔力を込めると、箒が一瞬淡い光を放った。
光った後、箒が宙に浮いていた。箒にメルリカ婆さんがまたがるとゆっくりと空へ上昇していった。
「まあ、こんな感じさ。まずは持ってきた物に魔力を込め浮かせてみるんだよ」
「なるほどなるほど、そうやるのね」
アンジェリカも真似してみる、すると釣り竿が光だし宙に浮いた。
これはマーシャもヴィヴィアンも案外あっさりと成功させた。
「槍に跨って飛ぶってなんかシュールっすね」
「釣り竿よりマシよ」
二人はそう言いつつ、卒塔婆に跨り飛んでるヴィヴィアンを見ていた。
「流石に卒塔婆よりはマシっすよね」
「え、ええ。流石のオバさんも、卒塔婆よりは槍や釣り竿の方がましかなって思うわ」
「む、我もアレはシュールだと思う」
嬉しそう(?)に卒塔婆に乗って飛んでるヴィヴィアンを見ながら呟く三名。
そしてバランスを崩し卒塔婆から落ちるヴィヴィアン、しかも頭から真っ逆さまだ。凄い音を立てて落ちるヴィヴィアン。
「うわあああ!」
「ちょっとヴィヴィアン落ちちゃったわよ!」
アンジェリカとマーシャがヴィヴィアンの元へと走っていく。メルリカ婆さんは生徒が事故ったというのにのんびりしていた。
「あー、言い忘れてたけど。フライの魔法を覚えるまでは高く飛ぶんじゃないよ」
「言うの遅いっスよ!」
マーシャがメルリカ婆さんに文句を言っている、そしてヴィヴィアンの所についたアンジェリカが叫んだ。
「あらら! ヴィヴィアンの首が凄い方向に曲がってるわよ!」
そう、アンジェリカが叫んだが、ヴィヴィアンはすくっと立ち上がる。首が後ろに九〇度曲がっているがヴィヴィアンは平気そうだった。
「あわわわわ! ……あら? そういえばヴィヴィアンはゾンビだったわねぇ」
「あ、そう言えばそうだったッスね」
二人はホっとして胸をなでおろした。
「あわてんぼうだねえ、ゾンビがそれくらいで死ぬわけないだろうが。だがアンタたち二人はそれでおっちんじまうから注意はしなよ」
「はいはい」
「了解ッス」
ゾンビが死ぬわけないって言ってるけど、ゾンビって死ぬのか? 何と言うのか? 疑問ではある。
「槍のカッコイイ乗り方って、何か無いッスかね?」
マーシャがアンジェリカに割とどうでもいい事を聞く、そもそも槍は乗るものではない、カッコイイ乗り方とは何なのか?
「そうねぇ、槍を投げてその上に飛び乗って立って乗るのはどうかしら?」
「難易度高そうっすね……」
難易度高そうと言いながら、マーシャは槍を構えて投げる、そして追いかけていくが追いつけないでいた。
「やっぱ無理っすよー! あー、飛んで行っちゃう!」
そう言いながら飛んで行った槍を探しに行くことになったマーシャであった。
「あの子は何してんだい?」
「槍のカッコイイ乗り方の練習かしら? 若い子には色々あるのよ」
「そんなもんかねぇ?」
「そんなものなのよ」
メルリカ婆さんと会話しつつ、アンジェリカは無難に釣り竿に乗って浮いていた、割と何でも器用にこなすオバちゃんである。
なんとなく釣り竿の糸を見ると、釣り竿の糸が光ってるのを発見した。
(あら? 糸が光ってるわね、ひょっとするとアレンジした刻印のせいかしら? 何かできそうねぇとりあえず適当に試してみましょう)
アンジェリカは光った糸で何かできそうだと思い、釣り竿から降りると釣り竿を掲げた。
「アンタも何してるんだい?」
その行動を見たメルリカ婆さんはアンジェリカに尋ねる、アンジェリカは含みのある笑いをすると釣り竿先端の糸を指さした。
指先に釣られてメルリカ婆さんと隣にいたリヴァイアサンに、戻ってきたばかりのマーシャまでが糸を見る。すると糸が回転しだした。
「さあ、何がおきるかしら?」
アンジェリカが釣り竿に魔力を少し込めると、なんと今度は糸が凄い勢いで回転しだす、するとアンジェリカが宙に浮きだした。
ヘリコプターのローターのような感じになって、ホバリングしているのだ。糸で浮くとか訳が分からない。
「どうなってんだいそれ?」
「わかんないのよー、気付いたらできたのよこれ。でもこれ動けないわー」
ホバリングするだけで移動は出来ないようだ。変なアレンジを入れた結果がこれだよ。
「困ったわねぇ、これ使えそうで使えないわねぇ」
「普通に飛ぶことは出来るんだし問題ないだろ」
「それもそうねぇ」
オバちゃんは悩んでも割とどうでもいい事だとすぐに悩むのをやめる、ある意味正しい。
「そういえば、リヴァイアサンは空飛ぶ箒が無いけどどうするのかしら?」
「我は魔女ではないからな、魔女の刻印は使う事が出来ん。まあ、魔法で飛ぶことぐらいは出来るから問題は無い」
「あらあら、そうなの? 悪魔って便利ねぇ」
「高位ではあるが人間の魔法を使っているだけだぞ」
「あら? そうなの?」
なんとなくで魔女になったオバちゃんは実に魔法関連の知識は適当であった。
そんな会話を使い魔としていたオバちゃん、するとメルリカ婆さんが皆に声をかける。
「よーし、なんか色々と不安は残るが全員一応飛ぶことは出来たようだね」
メルリカ婆さんがそう言うと全員がうんうんと頷いた、ヴィヴィアンだけは首がいまだに後ろに折れており、頷いてはいるが不思議な動作になっていた。
「まあカッコイイ乗り方は見つかってないけど、飛ぶことは出来たっすね」
「あの浮くだけの機能は改善しないとダメねぇ」
「うぁ、ゴポ……」
「むぅ、このゾンビなんか変な液を口から出してるが大丈夫なのか?」
三者三様の感想を言い合っていた三名であった。
「それじゃあ、明日からは本格的な魔法について勉強していこうかねぇ。そんなわけで今日はここまでにしとこうかね」
そして本日も無事に授業は終わるのであった。
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