平和な争い

勝利だギューちゃん

第1話

夜空を見る。

今日は満月。


昔の人は、月でウサギが餅をついていると考えた。

なるほど・・・

影が、ウサギが餅をついているように見える。


月にウサギはいないことは、誰でも知っている。

地球の生物は、住むことはできない。


でも、もし本当なら・・・

その餅を食べてみたい。


その晩、夢を見た。

夢で僕は飛んでいた。


月に向かって・・・


これは、夢を夢と認識できる明晰夢。

なので、思いのまま。


さあ、行こう。

月まで・・・

お餅をたらふく食べるんだ。


「あっ、君の行くんだね」

横を見ると、クラスメイトの女の子がそこにいた。


「うん」

「同じ夢を見るなんて、神様のおかげだね」

「偶然だよ」


偶然でもいい。

夢の中でも、好きな女の子とデートが出来る。

それだけでも、十分だ。


「佐々木さん」

「葵でいいよ。夢だし・・・」

「じゃあ、僕は・・・」

「たけると呼ぶね、宮本くん」


こうして、葵と僕は、一緒に月に着いた。

ウサギたちが、出迎えてくれた。


お餅をふるまっている。

既に先客がいる。


さあ、たくさんのお餅を食べよう。


「たける、何やってるの!」

「何って、お餅を食べようと・・・」

「じゃなくて、そのお餅。よく見て」


お餅を見る。


「いつもの、お餅だけど」

「お餅は四角いの。丸いのは邪道よ」


葵さん、それは違う。


「いや、お餅は丸餅。昔から決まってる」

「いいえ。お餅は四角いものと決まっているの」

「丸いの」

「四角いの」


言い争いになった・・・


目が覚めた。


結局、一口も食べられなかった。


夢でよかった・・・


数日後、新学期になる。

教室に着くと、佐々木葵さんと目が合う。


開口一番、こう言いあう。


「おもちは四角」「お餅は丸い」

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平和な争い 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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