第22話 策略とかずるいよ
拠点は2階建ての塔だ。
内部の螺旋階段を上がれば直ぐに旗の立っている台に到達できる。
塔の上からの視界は広いが隠れやすい場所があり見通すことは出来ない。
「作戦通りに一気に相手の拠点に攻め込むわ」
「待って罠を仕掛けておく」
絶対に通る場所は塔の入り口と螺旋階段だろう。
外側から飛んで行くのは無防備で狙い撃ちに出来る。
魔法の糸を適当に張り巡らせておいた。
一時しのぎにしか成らないが、気がつけば対処するために止まる必要がある。
「相手も罠を仕掛けてくると思う?」
「策士ならありえる事だ」
「私が先に行くからユウキ君は後ろから支援して」
ジュリエンヌの性格を考えればまっすぐに突撃すると予想は出来たはずだ。
迂闊にもそんな単純なことはしないと思ってしまったのだ。
まっすぐって一番危険で障害物無いんだけど……。
「やれやれ、それでも補佐するのが俺の役目だ」
相手はライムントに周りで群れている女達だ。
ハブられて5人で組んだ寄せ集めに過ぎない。
注意すべきなのは風使いのロアナぐらいだ。
後は雑魚と言っていい。
「さあ私に挑むものは居ないの?
何処からでもかかってきなさい」
待ち伏せしていた3人が岩影から火の鳥の魔法を放った。
彼女を囮にしているみたいだけど、後方のほうが視野が広くて位置を特定しやすいんだな。
「盾となって彼女を守れ!」
光の蝶を放ち彼女の周りに飛ばす。
火の鳥とぶつかり散る。
攻撃をしたら移動するのか。
遠距離からこそこそと狙い射っていたら迎撃で十分対応できる。
彼女は攻撃する素振りは見せずゆっくりと真っ直ぐに塔に向かう。
3人は相手するよりも旗を取りに行ったようだ。
挟み撃ちにされる可能性も出てきたな。
って、思って居たらもう相手の塔に到着した。
入り口を守っているのはロアナ一人のようだ。
彼女は波打つ腰丈の金髪でツリ目が怒っているような印象を与える。
かなり真面目で冗談は通じない融通の効かない奴だ。
「さて一騎打ちのようね」
2対1で戦える状況だ。
一騎打ちする理由はない。
ジュリエンヌは大笑いし言い放つ。
「その勝負受けて立つわ。
ユウキ君は手を出さないで!」
えっ。
いや、旗を取られたら負けなんだけど。
明らかな時間稼ぎだって解る状況なのに。
まあ彼女らしいか。
「解った見ている」
俺は勝手にやらせてもらう。
杖に乗り座る。
浮遊の魔法でそのまま塔の上へと来た。
塔の上で待つ地味な女子と目が合う。
「やあ、旗を渡してくれないか?」
「駄目です。
撃ち落としますよ」
「それは残念だ」
塔の上に立ち杖で殴る。
軽く頬に当たると彼女のはちまきが外れ落ちた。
「ええっ? 杖で直接殴るのってありなんですか?」
「駄目ってルールに書いてない。
さて死者はすぐに退場してくれ」
「あっはい……」
彼女は丁寧に旗を下ろしてくれた。
まあいいか。
塔の上から決闘を見守る。
二人は魔法で作り出した
律儀に剣のみで戦う姿は勇ましい。
「有利な武器で戦わないんだろうな。
同じ長さに揃える意味があるのか?」
「騎士としての礼儀ではないでしょうか?」
「君は……」
「私はマリタです。
ユウキ君は本当に名前を覚えるのが苦手なのね」
「ごめん、あまり話したこと無かったから」
「いつも、ジュリエンヌと一緒にいるから遠慮して話しかけないのよ」
ライムントは彼女が居るのに付き纏ってるじゃないか。
俺が女でも一番の方が良いのは解るがモヤモヤするな。
「そうなんだ。
彼女とは友達ってだけで恋仲って感じじゃないんだけどね」
「そうなの?
てっきり付き合っているのかと思っていました」
流石に焦りを感じたジュリエンヌが連続で突きを繰り出す。
ロアナが体制を崩した。
そこを一気に畳み掛け数十の腕に見えるほどの速さで突き続けた。
ロアナの体は宙に浮き落ちること無く無数の突きを食らう。
魔法で身体を強化してなければ出来ない技だ。
すごいオーバーキル状態だな……。
「はぁはぁ……、ユウキ君勝ったわ。
早く旗をお願い……」
ジュリエンヌが振り返っても誰も居ない。
「おーい、もう旗は取っている」
「えっ?」
マリタは隣で手を振る。
「ここから彼女の胸の谷間が見えますね。
ずっと眺めていたのはそういう目的ですか?」
「はぁ? そんな物見えるわけ無いだろう。
そもそも彼女を応援して見守っていただけだ」
「何を慌てているんですか?
やましい事を考えていましたね」
「それは君の方だろう」
「勝負しませんか?
もし私が勝ったらさっきの事をバラします」
あんまり関わってないからマリタの事は知らないんだよな。
印象がないから特になにかする訳でもなく居るだけだと思っていた。
ハレームの為に積極的に女の情報をカルメラに集めさせるなんて事はできないし。
これまでは個人の能力を高める事が中心で連帯とかは無かった。
でもこれからは関わる機会が増えるんだろうな。
「俺が勝ったら君の事を教えて欲しい」
「そうやってカーチャを口説いたの?」
「それは違う、彼女からデートの誘いがあってフラレたんだ。
あれは悲惨な出来事だった」
話している間に相手チームの3人が戻ってくる。
後数分で勝利だ。
耐えれば勝ちだが、油断すれば全滅負けもあり得る。
俺は階段の所に行き下を見るが、ジュリエンヌが登ってくる気配はない。
「何やっているんだ?」
仕方ない妨害工作でもするか。
魔法の球体を作り出し転がしていく。
これで転べば良いし時間稼ぎに成る。
「勝負の方法だけど、私はユウキ君が勝つ方に掛ける」
「それってずるくないか?
俺はわざと負ける気はない。
と言うか、死んだんだから君はさっさと退場しろよ」
「魔法に巻き込まれる可能性があれば、その場で待機しても良いことに成っています。
その魔法を私が受けて効果が無くなってもいいの?」
「いや、それは困る。
後少しで勝ちだ」
ジュリエンヌの呼ぶ声が聞こえる。
「ユウキ君、下りてきてくれる?
もう終わったわ」
「勝ったみたいだな」
俺は階段を下り彼女の前に立つ。
彼女はいきなり細剣で俺を突いた。
「えっ?」
「ごめんなさい。
取引に応じたから今回は負けということでお願い」
ロアナが俺の前にやって来る。
「ユウキ君は本当に凄いわ。
こんな手を使いたくは無かったけど、どうしても勝たないと行けなかったの。
後で埋め合わせはするから許して」
ジュリエンヌと彼女達は組んでいたんだ。
やられた。
チーミング利敵じゃないか。
「こんな不正が許されるはずがない」
「買収も立派な戦略よ。
これは認められている行為だから覚えておきなさい」
資金力のある奴が勝つのは何処に行っても同じか。
この勝敗は成績に大きく響く事はないが、裏切りで負けると言うのは一番嫌な負け方だ。
「訳を聞かせて欲しい。
この勝敗で成績が変わるわけでもないだろう?」
「隊長の選抜も兼ねています。
私はどうしても隊長になりたい」
隊長なんてどうでも良いな。
それなら彼女に譲っても構わないが……。
「俺は勝負は真剣にやりたい。
譲ってもらった地位に何の意味があるんだ?
自分の実力で手に入れてこその地位だろう」
ロアナは泣き崩れる。
ええっずるい。
「ごめん、つい勝負で負けたのが悔しくて。
言い過ぎた」
結局俺は勝ちを譲ることにした。
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