時が来るその瞬間まで

くみんの寝心地

第1話 前夜


明日はついに入試本番。今までの努力の成果を出し切るところ。

最寄り駅の電車の時間を確認しながらふと時計を見る。午後11時20分。

今日の夕飯はカツカレーだった。こういう大事なテストの前日や試合の前日は決まって母が作ってくれる。期待通りに成果を出したことは一度もないけど。

そんな息子でも笑顔で送り出してくれるんだから親には頭が上がらない。

親って職業はつくづく苛酷なもんだ。毎回これを思いながらもどこか甘えている自分がいる。

明日の荷物の準備を終えて寝床に入る。受験票を見るとなんだか緊張した。

明日はよくやれるだろうか。雲交じりな空からうっすら星が見えた。

こんなときだけ星に願う。人間は都合よく神や星に願う生き物だ。

自分もその一部なので特に否定はしないが、こういう願い事をするほど自分に余裕がないんだと実感した。  もう寝よう。


自信は特にないんだけどなんだかやれる気がしている。

なんだかんだやれるだろうと本気で思っている。

いつもそれで乗り切ってきた。たまに自分のいい加減さに嫌気がさすけど。

今度もこれでいけるんじゃないか。

いつかこの中途半端さが身を滅ぼすと薄々気付いていながらも僕は眠りについた。




「」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

時が来るその瞬間まで くみんの寝心地 @kumin299

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ