第163話 中途半端な仙人不定記(終)

『半端仙人のダラダラ不定記』


 大地歴:2201年(西暦:5137年)


 著者:高橋 実   享年:3137歳


 代筆:SK-ゴン


 _______________


 タイトルからしてふざけたネーミングです。ついに私の名前も変えてくれませんでした。

 まぁ、良いでしょう。

 時空転移という面白い現象も見れました。


 他にも面白いデータがとれました。

 マスターが亡くなった後、体は砂に変わってしまいました。しかもすぐ横にあった枝が成長して大木になったのです。

 これも興味深い現象です。魔法という新しい力が働いても、ここまで急な成長はしないでしょう。

 観察を続けていると、木の上で動く物がいます。ちょこまかと動き回りせわしない奴ですね。

 さらに観察していると、果物を持って降りて来ました。

 一緒にいたドラさんとドワーフも顔を歪ませています。


「そっくりじゃな」

「そうだな」


 パッとしない顔の猿が果物をかじりながらこちらを眺めています。ふいに左を向いたので、そちらを見てみると何もありません。

 猿にカメラを戻すと手を叩いて笑っていました。人を小馬鹿にしたような行動が嫌らしいですね。


「ん? そいつ精霊じゃろ!?」

「本当だ! 実体化する精霊は初めて見たな」


 珍しい個体のようです。しかし、先ほどから私の体を登ったり叩いたりと、行動が読めませんね。

 しばらくすると、座りが良いのか肩パーツに乗ってくつろいでいます。


「精霊は気に入った場所を見つけると、しばらく住み着くらしいからのぉ」

「そいつの相手はゴンに頼むよ」


 それだけ言うと、2人は笑いながら去っていきました。


 書き終えたマスターの日記は、データに取り込みネットワークに乗せておきましょう。原本は保護コーティングして……どこに置くか聞いていませんでした。

 読み取ったブルンザ国の家に行ってみましょうか。




 相変わらず質素な家が好きですね。屋根の上に牡鹿さんがいます。挨拶しておきましょう。


「どうも、こんにちは」


 横からキーキー聞こえて来ます。どうやらお辞儀してるみたいです。

 牡鹿さんと仲良くなったのか、またがって遊び始めてしまいました。

 その間に、家で聞いてみましょう。


「あ、あなたは!」

「機人でしたね!?」


 この人たちはマスターと一緒にいた個体ですね。


「マスターの日記が書けたので、置く場所を確認しに来ました」

「そ、そうですか。とりあえず中へ」


 中に案内されると、以前と変わりなく、様々な植物が吊り下げられています。


「あの。カオルちゃんの最後は」

「マスターが送りました」

「そうですか。それで実さんは?」


 日記の最後のページを見せてあげると、座り込んでしまった。


「そんな気はしていましたが……」

「先生。もしかして」

「あぁ。そういうのではありません。こっちに来てからのお父さんみたいな」

「ふふ。少し頼りないお父さんでしたね」


 その話には私も同感です。


「物忘れが多くて、逃げ癖があって、たまに何かにのめり込みます」

「そうです。それでいて、変なところで人助けして、自分で困って」

「私には憎めない人でした」


 この人たちの前でも変わらないようですね。ここにしましょう。


「この日記はここで保管してもらいましょう」

「は、はい!」

「それでは失礼します」

「この後はどちらへ?」

「いくつかの国へ寄ってから、あっちへ行こうと」


 人差し指部分を上に突き出す。


「え? それって」

「新惑星を開拓しに行きます」


 それを言い終わったところで、牡鹿と猿がやってきて、体に纏わりつく。


「あなた方も宇宙に行くんですか?」

 プエプエ。

 キーキー。


「仕方ないですね」

「あの!」

「どうしました?」

「私も行きたいです!」


 困りました。

 精霊と鹿さんは、空気無くても平気そうですが、生物は難しいですね。


「それなら宇宙船の開発からしなければいけませんね」

「作ります」

「仲間も必要ですね」

つのります」


 我々ロボットのデータにも、人間の希望を叶えると成長するとありました。この人のやりたいことを手伝っても稼働時間はあります。


「わかりました。あなたの個体名を確認します」

「海野ソラです!」


 宇宙へ行くのはまだ先になりそうです。

 色々回ることになりそうですし、師匠の軌跡でも辿って、日記に付け加えておきますか。

 ラクガキするわけじゃ無いんです!

 だから叩くな!

 全く、困った猿ですね。





fin.

 _______________


 これにて『サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道』の完結となります。


 誤字などの修正で更新すると思いますが、ここではストーリーの変更などをしない予定です。


 面白かったら星をいただけると嬉しいです。

 皆様に頂いた星やハートが励みとなって、最後まで書き切ることが出来ました。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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