第4話 3日目 ~12月24日~

「長崎さん!」

「…はぁい」


三日目。

色々と馴れてきた。

作業も二、三人のチームのときもあるが会話は、ほぼない。

「あ、交代です」

こんな程度。


休憩所でも

ソーシャルディスタンスってやつ。

長机が一人にひとつ。

他人との会話は無い。


なんだろう?

凄く、快適だった。

無心に働く。ただそれだけで。



一人で手区分をしているときだった。

「長崎さんと後藤さん!解束作業お願いしまーす!」


まぁ、こんな感じで

ベース作業の手区分という一人作業をこなしつつ、チーム作業が割り込む感じで時間は過ぎていく。


俺は解束場に向かう。


え?


ヤバい。


可愛い。


感染対策で仕切られたアクリル板の向こう側では

可愛い女子が、すでに解束作業をしていた。

そう、可愛い女子が。


俺は何も言わず作業に入る。

え?会話?

無いだろ普通。


習った通りに解束していく。

うん。簡単だ。


可愛いな。

あ、ダメダメ。

モクモクと作業作業。



「あの、すみません!」

突然、可愛い女子が話し掛けてきた。

その声は、天使だ。


え?あ、ヤバい。

チラチラ見てたのバレた?

「はい?」

何事もない、普通な感じで返事をする。

普通な感じで。


「これって、どうやるんでしたっけ?」

天使の声をしたギャル風な女子は、困った感じで助けを求めていた。そう俺に。

そう俺に。


「…え?」

「あ、あぁこれはこうで、ここはこうして、ハガキの向きはこうね?習った通りだよ」


うん。上手くいったはずだ。

キモくは無いだろう。

突然なイベントに変な汗をかいた。


「わかりました。ありがとうございます!」

後藤さん……良い子やな。

ゴニョゴニョじゃなくて

ありがとうございます!ってはっきり最後まで言える子は良い子。


「あれ?長崎さん……」

そう言いながら社員さんが俺に近づいてくる。

ん?なんだろう?

「これ、ハガキの向き反対だよ。昨日教えたでしょ!」

そう言って笑う。

なんだよこのホワイト企業。

バイトには怒らない縛りでもあるんだろうか?


「あぁすみません!間違えました」

社員さんが笑う。

俺も笑う。

可愛い後藤さんも笑う。

「私には正解の方、教えたのに!」

なんて天使の声が言っている。


「悪い見本見せただけだよ」

こうやって、ごまかした。

三人で笑った。


社員は別にどうでも良かった。


後藤さんが、ただただ可愛いかった。

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