ヤンキー総長だった俺が惚れた女に近づく為に陽キャになってみた結果、見事に振られた件について

ばてぃ〜

短編集




「「「総長、お疲れ様っした!!!」」」


そう言って総勢200人ばかりの舎弟が一斉に90°頭を下げる





「おう、お前らも他の奴らに舐められんじゃねぇぞ!!」





「「「ッス!!!」」」





「お前たちとの思い出は俺の誇りだ!!俺は今から別の道に進んでいくが気持ちはいつでもお前たちと一緒だ!!」





「「「総長・・・」」」


俺がそう告げると舎弟たちは目を潤ませる


やんちゃな恰好をした奴等200人がこっちを見て目を潤ませてきても・・・キッツイな・・・





「クニ!!今からお前が六代目総長だ!!!法は外れても人の道は外れるなよ!!」





「ッス!!!総長に恥じない様にやっていきます!!!」





「タカ!!クニを助けてやってくれ。だが暴れすぎて母ちゃん泣かすなよ?」





「ウス!!また戻って来た時は家に来てください!!母ちゃんも喜びます!!」





「おう・・・じゃあな!お前ら世話になった!!しっかりやれよ!!」


そう言って舎弟たちに見送られてバイクで立ち去ろうとエンジンをふかすと





「総長!!これからどうされるんですか?!!全国制覇が順調だってのに突然引退するなんて?!俺・・・寂しいです!!」


タカがそう言いながら8割泣き状態になっている





「俺は新しい旅路を見つけたんだ!!これからはその道を突き進んでいくぜ!!じゃあな!!」


そう言ってバイクを走らせて去って言った


・・・これから始まる新生活に胸躍らせながら











「よし!!これで完璧だろ?!」





俺は自宅の洗面台の前で思わず大声を出してしまう


引退して数日でここまで変身出来れば上出来だと思う





「兄貴ぃ、朝から五月蠅いって・・・げぇ?!あんた誰?!」





そう言いながら大声を出して俺が誰か分かっていない妹


妹でも俺の事がすぐ分からないって事は大成功ってことだな!!





「誰ってお前の兄、大津里おおづり 京介きょうすけに決まってんだろ!!どうだ、変わっただろ?!」


そう得意げに返答しても口をあんぐりと開けたまま固まっているのは俺の妹、大津里おおづり 糸いと


糸はヤンキーだった俺と違い、見た目ギャルっぽくはあるものの真面目な今年から中学3年生だ


兄の贔屓目かもしれないが、金髪に近い茶髪と真っ白な肌、何処とは言わないが健康的に育っている部分もありモテるらしい


・・・ま、俺は兄だから全く気にならんが





「い、いや兄貴。・・・変わったとかそんなレベルじゃないんだけど。」





「じゃあ大変身したって事だな!!よし、どうだ?!これで元ヤンなのは分からねぇだろ?!!」





そう、俺はヤンキーを卒業し大変身に成功した


金髪でオールバックにしていた髪は茶髪にして緩めのパーマーでお洒落に変えた


眉を半分剃って部分は丁寧に整えて足りない部分は書いている


ここ数日肌ケアには力を入れた結果、若いだけありプルプルになっているし、臭くない程度の香水を振りかけている


鋭い眼光て定評があった目は鏡で練習し続け眼力を抑える事に成功した


身長は元から高めだったし、制服も木崩したりしていない


客観的に見て爽やかな陽キャになったと思う





「確かに変身しているけど・・・急にどうしたの?」





「いやぁ、この間引退もしたし今日から高校生活も始まるしで心機一転、これまでと別の生き方をしたくなったんだ!!」





そう言うとプルプルと妹が震えだす


どうした?トイレならこの扉開けろよ?





「偉い!!!兄貴!偉いよ!!!」


感涙しそうな勢いで肩を掴んで叫んでくる


妹よ・・寝起きだからか口が臭いぞ・・・





「いや~私も兄貴がヤンキーだから友達家に呼びにくくってさー!!あのだっさいバイクも兄貴の部屋のポスターとか、ファッションセンスとか色々思う所があったのよ!!」





お、おう・・・結構ストレス溜まっていたんだな


表情をコロコロ変えて力説してくる


ただ・・・バイクをノーマルに戻す金は無いから現状今のままだし


〇渕〇の悪口は許さんぞ?!


ファッションセンスは思う所がない訳ではないが・・・





「で、兄貴?!何でヤンキー止めようと思ったの?!!!私たちがあれだけ止めても無理だったじゃん!!なんの心境の変化?!」





・・・こいつグイグイ来るな


後、顔は可愛い方なのに寝起きで口が臭い





「いやまぁ、色々とあるんだよ。今日から高校生だし・・・いつまでもこのままって訳にはいかないだろ?」


少し顔を背けながら回答する


正直、この理由は嘘だ


そんな俺の表情を読んだのかジッと俺を見つめてくる





「・・・恋か?」


おもむろに妹が呟いた一言にドキッとする





「兄貴が急に勉強し出したのは・・・秋だな。秋に恋したな・・・」


妹の鋭い指摘にドキッ!!ドキッ!!としてしまう


いかん、此処は平静を装わないと





「いやだなぁ~、ラブリーシスター。俺が愛しているのはお前だよ。」


「いやキモイから。」





瞬・殺!!


SHUNSATU!!





「兄貴は嘘をつく気があるの?今どきの鈍感系主人公すら騙されないよ?後、実の妹として言わせて貰うけど引く程キモイ・・・」





馬鹿な・・・喧嘩無敗の俺の心がクリティカルダメージを負っている





「で?恋した人はどんな人?同じ高校に行く人?近所町内会に妹を口説いた変態だとビラ回されたくなければさっさと吐いちゃいな。」





・・・詰んでね?


だが俺は屈しない!!強大な権力妹に屈してなるものか!!





「ま、まぁその話は追々な!!ほ、ほらお前も遅刻するぞ?!俺はもう行くから!!」


そう言いながら脱兎のごとく洗面所から逃げて玄関まで突っ走る





「こら兄貴!!」


そう吠える妹の声を尻目に俺は玄関の扉を開ける





「兄貴!!前よりは良い感じになって雰囲気イケメンにはなっているから!!頑張れよ!!振られてもグレるなよ!!」





「応!!じゃぁ行ってくる!!」


そう言って妹のエール(?)を受けて玄関を飛び出していった










「やれやれ・・・」





妹からの追撃を無事に切り抜けた俺は安堵しながら歩いてる


電車6駅、乗車時間約20分を使い俺は新たな学校【堂陣門高校】へ向かう


最寄り駅を降りれば同じ制服を着た男女がキャッキャッしている


少し前の俺ならばナヨナヨしていると思っているだろうが、生憎今の俺はそう思わない





自然にこの雰囲気にも溶け込めている成果に満足感で一杯だ


一杯・・・なのだが・・・


何故か男女関係なくチラチラとこちらを見てくる





(ヤバい・・・ヤンキーっぽい何かを持ってきちまったか・・・?)


これが女性の視線だけならば、俺イケてる?!と勘違いしそうなものだが男女関係無く視線を感じる





(鞄はノーマルだし、ネクタイもちゃんと締めてるし着崩しもしていない・・・香水が臭いのか?)


好奇の視線は受けるものの原因が分からない今、気にしても仕方がない


そう思い視線は気にしない事にした


気にしないけど・・・気になる・・・


モヤモヤとした気持ちを抱えながら校門をくぐって学び舎に入る





「俺は・・・3組か。」


誰に言う訳でも無く校舎前に張り出されているクラス表を眺めて呟く


身長はそこそこある為に後方からでも自分の名前を見つける事が出来た


背が低い女子や発展途上の男子にはできない芸当だろう


発展途上の男子、気にするな筆者は高校時160cmギリなかったそうだぞ?





クラス表を見てから体育館に向かい指定されている席に着く


すると指定された席の両隣は既に生徒が座っていた





「失礼。」


そう言って横の席の生徒の足を避けて自分の席に着席する


俺はこの学校に知り合いがいない


だから隣を見ても後ろを見ても前を見ても知り合いがいない


けれども、あの人の席の場所は気になるので少しキョロキョロとしてしまった





「お!!お前が俺の席の隣か~!!」


そう言いながら右隣のイケメンが屈託なく笑いかけてくる


禿げてないのに眩しい・・・これがイケメンか!!





「俺、神技かみわざ 翔しょうって言うんだ。これから宜しくな。」





目を細める俺に対してキラキラ度マシマシで挨拶してくる


何だよ神技って?!


何が神技なんだよ?!


突っ込んでいいのかも分からねぇよ!!


そんな俺の心の内など知る由も無くキラキラ度を抑えて来ない





「いやぁ~お前みたいなイケメンと席が隣だと嬉しいな!!名前は?どこの中学から来たんだ?地元じゃないよな?」





・・・グイグイ来るな


後誰がイケメンだ


寝言はお前ん家の鏡見てから言え


俺は雰囲気イケメンの称号を寝起きは口が臭い妹から頂いているんだ





・・・い、いかん!!俺は今日から陽キャになるんだ!!


こいつの乗りがナチュラリーに対応できる人間になるんだ!!





「俺は大津里 京ってんだ、地元は6駅先の阿馬令あばれ地区の方だ。中学校も阿馬中だ。」





「阿馬中?!あそこって何かタチ悪いヤンキーいなかったけ?!」





「・・・あ~何か居たけど学校には余り来なかったから実害は無かったなぁ。」





「まぁヤンキーなんてそんなもんか。」





そう言いながら納得する神技


いやゴメン・・・多分それ俺


で、俺意外と学校好きで皆勤ではないけど98%登校してたわ・・・





そんなこんなでたわいのない話を神技としているとスピーカーから


『ただいまより、第87回堂陣門高校、始業式を始めます。』と聞こえてきた





まぁそこからは校長のスピーチがあったり、市長かなんかの挨拶があったり在校生の挨拶があったりした。


ラブコメだったら生徒会長は女性の美人生徒会長だったりして新入生がわちゃつく感じになるが、真面目な雰囲気を出す地味目のメガネ男子生徒だった





・・・うんナイスメガネ





だが、ここから俺は目を見開く事となる


『続きまして、新入生挨拶、新入生代表【華屋敷 まどか】さん』





「はい。」


そう言って立ち上がった生徒こそ俺が陽キャになるキッカケとなった女子だった





「おい、新入生代表の子、すげぇ美人じゃね?」


横からコソコソと神技が話しかけてくる





「おお。」





「しかも新入生代表って事は頭も良いんだろうな。」





「おお。」





「何?お前惚れたの?」





「おお。」





「え?!マジで?!でもライバル多そうだな・・・俺も声掛けてみよっかな~」





「おお~ん?!」


神技がそう言った瞬間、現役さながらの鋭い視線を出してしまう





「いや嘘嘘。俺彼女いるし。てゆーか、おお~んってなんだよ?!視線も怖ぇよ!!」





そうか華屋敷さんっていうのか・・・


神技の言葉を無視して俺はあの日にトリップしてしまう


俺と華屋敷さんが初めて逢ったあの日の事を・・・











去年の夏、世間は夏休みの深夜


俺は舎弟たちと共にカラオケに行っていた





「いや~兄貴の歌は心に染みますね~!!」





「やっぱ歌に漢の深みが漂ってるんですかね?」





「世辞はいらねぇぞー」





「あ、じゃあ正直普通でした。」





「おいっ!!」


とか言いながらいつもの下らない話をしていた


さぁ今からタカの家にでもお邪魔してピーチ太郎電鉄でもやろうかな~等と話しているとどこからか叫び声が聞こえた気がする





「おい、お前ら今なんか聞こえたか?」





「いや~俺は聞こえなかったです。」





「俺もです。」





「じゃ気の所為か・・・」


そう思いながらも何か気持ち悪い


何か面倒事かもしれないが、後で何かあった事を知ると気が引ける





「ちっと気になるから見てくるわ。お前らは先にタカの家に行っとけ。タカの母ちゃんが起きてたらしっかり挨拶しろよ?たしかこっちの方から・・・」


そう言いながら舎弟と別れて俺は路地裏の方へ向かっていった





・・・





「ん゛~ん゛ん゛~~!!」


声がする方へ向かうと、そこには女性の口を塞いだ中年サラリーマンがいた





「・・・おいおっさん。お前何してんだ?」


俺の声を聞いてビクッとするおっさん


目は血走り、顔は興奮してんのか酒飲んでるのか分からないが真っ赤っかだ





「う、五月蠅い!!俺はこんな深夜に徘徊している女子を保護してやってんだ!!」





「いやいやいや・・・どう見ても保護している様な状況じゃねぇだろ。そのまま連れ込みそうな勢いにみえるぞ?」





「勿論落ち着いた場所に行かないと彼女の心も落ち着かないだろ?!」





「いやいやいや・・・おっさん目茶苦茶興奮してんじゃん。正に絵に描いた様な腐れ大人みたいにしか見えないんだけど。」





「う、五月蠅い!!親の脛かじって生きているガキに何が分かる?!こちとら生きているだけで精一杯なんだ!!少し位ストレス発散しても良いだろうが?!」





「いやいやいや・・・誰かの犠牲の上でストレス発散したら駄目だろうが。俺も喧嘩するけどストレス発散で人を殴った事は無いぞ?おっさんのやっている事は法の道も人の道も外れた行為だ。」





俺が至極真っ当な意見を伝えると、ただでさえ赤かった顔がやばい位赤くなる


いやマジで熟したトマト位赤かった





「う、五月蠅い五月蠅い!!この糞ガキがーーーー!!!」





そう言いながら殴り掛かって来る


ただおっさんは喧嘩慣れしていないのか大振りで拳を振ってくるので横に避けて軸足の左膝を前から蹴りだす





「ぐっ・・・!!」


思いのほか痛かったのか少し蹲る





「おっさん、喧嘩中に蹲ったら的だぞ?」


そういうと同時におっさんの顔を思いっ切り蹴り上げた





あ、鼻血出てる


そう思うと同時に頭を思い切り踏みつける





「あ・・・あ・・・」


俺の足元でガクガク震えるおっさん


多分喧嘩なれしていないのだろう


最早戦意なんかない様に見えるが・・・





「おしょっと!!」


そう言いながら再度頭を数度踏みつける


やられたフリみたいな事をする奴もいるからな


徹底的に踏み続ける





「ご、ごめ゛ん゛だざい゛・・・ごめ゛ん゛だざい゛!!!」





アルコールかアドレナリンか知らないが良い感じに抜けて来て冷静になったみたいだな





「おっさん、本来なら出すとこ出すのが筋だが・・・この娘が良いと言うならば突き出さないでおいてやる。その代わりこの娘に誠心誠意謝罪しろ。」





そう言って口を塞がれていた女子を見ると・・・





リーーーーーーーーーンゴーーーーーーーーーーーン





リーーーーーーーーーンゴーーーーーーーーーーーン





金色の鐘が脳内に鳴り響く


白い鳩が数十羽バサバサバサと飛び立ち


フラワーシャワーが脳内を彩った





・・・・・・・・・・ハッ!!


いかん、思考が飛んだ





「おらおっさん、誠心誠意謝れや!!」


気恥ずかしさからか口調がちょっぴり荒々しくなる





「誠に!!誠に申し訳ございませんでしたーーーー!!!」





「・・・はい。」





その後におっさんのガチ土下座と謝罪を女子が受け入れた





「おっさん、今回は何もしないでいてやるが・・・次また見つけた時は、こんなもんじゃ済まさないぞ?」





そう言って脅すと飛ぶ様に逃げ出した


さてと・・・





「おい、大丈夫か?」





「はい・・・有難う御座います・・・」





そう言いながらガタガタ震えている女子


まぁあんな事があった直後だしな


震える気持ちは分からんでもない


てか声も可愛いな!!その声で茶碗3杯は固いわ!!


とは言うものの・・・





「このアホーーーーーーーーーーーー!!!!」


「ひゃん!!」





そう言いながら頭にチョップを入れる


ひゃんって・・・可愛いな、おい





「何があったかは知らんが、こんな時間に1人で居たらそら拉致られるわ!!お前馬鹿か?馬鹿なのか?!」





「ば、馬鹿じゃありません!!これでも全国模試は二ケタ台の順位です!!」





「いや馬鹿だな!!話の流れが分かってない馬鹿だな!!国語の作者の気持ちを答えろって所、絶対間違えているだろ?!」





「な、何故それを?!」





・・・うん、やっぱり馬鹿だ


極端な知識は合っても知恵がないパターンだ





「お前はもうちょっと話の流れや相手の気持ちを考えろ!!そもそも常識で考えればこんな時間に1人でいるんじゃねぇ!!」





「だって・・・私だって普通の女の子でいたかったんですから・・・」


なんかウジウジ言っている


もう少し話をしたい衝動とこんな夜中に付き合わせる事に躊躇いが生じる





「あーーーーもう!!お前家何処だ?!仕方ねぇから送ってやる!!」





「・・・え?」





「こんな時間電車は動いてねぇぞ?!それとも家は直ぐ近くなのか?金持ってんならタクシーでも拾ってやるぞ。若しくは糞ダサいバイクで良いなら送ってやるぞ?」





照れを誤魔化すべく矢継ぎ早に言葉を放つ


その間もずっと「え?」「え?」と言っている


・・・可愛いなおい、茶碗5杯は固いわ





「じゃ、じゃぁ・・・糞ダサいバイクでお願いします。」





「糞ダサくねぇ!!」











(それからバイクに乗せて話ながら家まで送っていったんだよなぁ・・・)





その時の話から堂陣門高校を受験すると聞いてから・・・俺はもう頑張った


名前は聞きそびれたけど受験する高校も分かっているし、全国模試も優秀であれば彼女は落ちる事は無い


問題は俺自身の成績だ!!


そう思ってその日以降、1日3時間睡眠のナポレオン的な生活をし、舎弟たちとの付き合いも週末夜だけ


それ以外は勉強勉強勉強で頑張った





その甲斐あって、俺も堂陣門高校に合格した


だが・・・ヤンキーの恰好では周りからも引かれるし、彼女も良い顔しないだろう


世間一般では陽キャが人気あるらしい


ヤンキーががり勉タイプになる漫画が幾つかあるけど極振りしすぎなんだよ!!


舐める側が舐められる側にジョブチェンジするだけじゃねぇか?!


舐めず、舐められずの陽キャであれば彼女とも釣り合うのではないだろうか?と必死に精一杯見かけも頑張ったのだ!!








「京ーーー!おーーい京ーーー!!」





「ハッ!!!」





気付けば俺の前で神技が声を掛けてくる





「やっと気づいたか!!京、お前どんだけ呆けていたんだよ・・・もう始業式終わって、ここ教室だぜ・・・」





「きょ、教室?!始業式終わったのか?!」





「あぁ・・・お前式終わったら呆けながら歩きだして教室に向かったからな。なんか怖かったわ。」





そう言いながら若干引いた表情をしている


うんまぁ・・・心ここにあらずの状態で動き出したら俺でも怖い





「すまんな、深~い考え事をしていたみたいだ。」


いやまぁ、浅いんだけどね


雨上がりの水たまりレベルに浅い考え事というか過去を思い出していただけだからね・・・





俺がそう言うと神技はニヤリとした表情を浮かべる


なんなの神技?


ニヤリとしてもイケメンなのも神技なの?





「そんなお前に朗報だ。教室後方を見てみ?」





「?」


言われるままに教室後方を見ると・・・








・・・








・・・は、華屋敷さん?!!!!!!!!!





「多分さっきは新入生代表の席に座っていたんだろ。同じクラスだ、良かったな!!」





ニヤニヤとした神技の表情に若干イラッとするが今はそんな事に構ってる場合じゃねぇ!!


俺はおもむろに立ち上がり、彼女の方へ向かっていく





「お、おい京・・・???」


神技の声も無視して華屋敷さんの席の前に立つ





「・・・?」


彼女は突然前にそびえ立つ陽キャ(俺)に対して怪訝な表情を浮かべる


心の中でのシュミレーションは完璧だ


あ、後は言うだけだ!!





「は、華屋敷さん!!初めて逢ったあの日から好きでした!!!俺とお付き合いしてください!!!」





「「「!!!!!!!!!!!」」」





俺が大声でそう言った瞬間に教室の生徒から一斉に視線が注がれる


神技辺りは口をアングリとしているに違いない





俺の一世一代の告白で教室中がシーーンとする


そんな空気の中彼女が口を開く





「・・・え?嫌ですけど?私、婚約者がいるので。」





「「「!!!!!!!!!!!!!!!」」」





その言葉で教室中の生徒が驚いた表情をしている


それはそうだろう・・・15歳か16歳で婚約者がいる人なんてほんとに極稀だ


そして俺は・・・











「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」











そう叫ぶの事が精いっぱいだった・・・































































































因みに余談だが・・・


俺の大声にかき消されて誰一人聞こえていなかったが・・・


「その人は頼もしくて、喧嘩が強くて、一本気に溢れて、糞ダサいバイクに乗っているんです・・・キャ!!」





そう言っていた事が判明するのは後のお話

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ヤンキー総長だった俺が惚れた女に近づく為に陽キャになってみた結果、見事に振られた件について ばてぃ〜 @bady

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