第三話シュークリームと監視

プロローグ



 ――株式会社バスタルド、新薬開発成功を発表。


 『製薬会社』は様々な新薬を出す。けれどこの『新薬』は別格だった。それほどまでに『当事者』に待たれていた薬だった。しかし同時にその薬は『当事者』ではないものたちからの多くの批判を受けた――『倫理に反する』と――しかしそれでもその薬は『当事者』を救うものだった。


 ――痛みも苦しみもない人生には悲しみはないだろう。しかしそこに喜びはあるのだろうか? 筆者はそれを疑問に思う。


 バスタルド代表にしてその全ての実権を持つ天才は当時十九歳だった。彼はあらゆる分野の人間から絶賛され、同時に批判された。彼はその様々な声の中心で愛らしい笑顔を浮かべ「成人したらバスタルドのワインが飲んでみたいですね」と笑った。

 それが今から三年前の出来事。

 新聞も読まない、『当事者』でもない私は全く知らなかった。

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