第131話 貴族会議 前編




 俺とスカーレットさん、ピピとシスターマリーは騎士ヨムンさんの案内で、セレニア城の敷地内にある議事堂に向かう事になった。なんでも貴族会議で決まった事をシスターマリーに直接伝えるんだそうだ。一体何をシスターマリーに伝えるつもりなんだか。


セレニア城の中を歩いているとジョアンナ様とばったり遭遇した、今日も美しい。


「あら、ジロー達、これからどこへ行くの? わたくし、これからジローの所へ行って冒険話を聞こうと思っていましたのに!」


騎士ヨムンさんが返事をした。


「これはジョアンナ様、我等はこれから議事堂へ向かうところでございます」


「え!?、議事堂!?、何! あいつ等の所に行って何をするのかしら!」


「はい、何でもマリアンデール様に貴族会議で決まった事を直接伝えたいという事でございまして、今から議事堂に集まっている貴族方達の元へ向かうところでございます」


「!?マリアンデールに! 貴方達だけじゃ駄目よ! わたくしも一緒に行きますわ!」


「え?、ジョアンナお姉様・・・」


「いい事、マリアンデール! 貴方は議事堂に着いたら何も喋ってはいけませんわよ! あいつ等にいいように丸め込まれるだけですわ! わたくしに任せなさい! いいわね!」


「は、はい? わかりました、・・・お姉様・・・」


どうやらジョアンナ様も一緒に来てくれるようだ、なんだかんだ言っても妹の事が心配なんだろうな、素直じゃないな、このお姉さんは。


俺達はセレニア城を出てそのまま議事堂の方へ歩いて行く。そう言えばこの国の街中にあるスカーレットさんの知り合いがやっている酒場のマスターの、シゲイルさんが言っていたな、貴族達には十分に気をつけろって。


「ジョアンナ様、一つ聞きたいことがあるのですが」


「何かしら!、ジロー?」


「議事堂に集まっている貴族達というのはどの様な方達なのですか」


「・・・あいつ等はこの国の寄生虫よ!・・・このセレニアで最高意思決定は公爵なのですけど、お父様が倒れた時から、この国の上級貴族達が貴族会議において次の公爵が決まるまでの代理で、最高意思決定機関になってしまったの!・・・そして、今まで公爵の爵位を誰にも継がせていないのよ! わたくしとジョナサンお兄様がいるにも関わらず・・・おそらく、これをいい事に自分達だけでこの国を好きに動かしていく気なのね!」


「・・・そうなのですか、・・・この国の貴族というのは、人物と言うのはいるのでしょうか?」


「それこそ期待しない方がいいわよ! さっきも言ったけど、あいつ等はこの国の寄生虫だから!」


随分と辛辣な意見だな、もしかしてジョアンナ様はこの国の貴族連中と仲が悪いのかな。まあ確かに今まで公爵位継承の儀をやっていない様だし、この国の公爵がいない事になっている状態はあまり好ましくないよな。この国にとっては。


「・・・わかりました・・・」


どうやらこの国の貴族達は一癖も二癖もあるようだな、ジョナサンさんやジョアンナ様に公爵位を継承させていない事から鑑みても、貴族連中だけでこの国を好き勝手にしているっぽいな。


 俺達はセレニア城のすぐ近くにある議事堂へ到着した、石造りのなかなか立派な建物だ。早速中へ入る、中も綺麗に掃除されていてピカピカだ、威厳あふれる感じだな、この建物の中に貴族達がいるようだ。ホールの中央の扉を開けて議事堂の中央へと進む。周りには一段高い所に机や椅子があり、その周りの椅子に貴族達がずらりと座っている。まるで審問を受けるみたいになっている感じだ。


周りを見渡すと、いずれも上級貴族といった偉そうな感じの佇まいをしている。あちらこちらで談笑する声が聞こえてきて、どの貴族も、にやにやと薄ら笑いをしている。なんか感じ悪いな。


貴族の1人が咳払いをする。


「うおっほん、まずはようこそお越しくださいました、マリアンデール様」


議事堂内の一番高い所に座っている人が喋り出すと、周りの貴族達も大人しく静かになった。しかし、にやにやと薄ら笑いを浮かべているのは変わらずだ。


「わたくしの妹に何やら伝えたい事があるとか、一体何かしら!」


「これはジョアンナ様、貴方様はお呼びしてはおりませんが?」


「あら! わたくしが居てはいけないのかしら!」


「・・・いえ、その様な事は・・・」


「なら、早く言いなさい! わたくし達は忙しいのです!」


ジョアンナ様は初めから喧嘩腰だ、シスターマリーに喋らせないつもりらしい。


「・・・それでは、早速、マリアンデール様、貴方に我が貴族会議で出た決議をお伝えいたします、・・・・・・マリアンデール様、貴方には50人の兵を率いてパラス・アテネ王国まで派兵していただきます、わが国の盟主でもあるパラス・アテネ王国の危機をお救いする為に馳せ参じる訳でございますな」


「な!?、なんですって! たった50人の兵で何が出来ますか! マリアンデールを謀殺するおつもりですか! パラス・アテネは今、魔物の大進行(スタンピード)の真っ最中だというのに! そんな危険な所へ妹を死地へ赴かせる訳にはいきませんわよ!」


「困りましたな・・・、これは貴族会議で出た結論なのですよ、ジョアンナ様」


「お父様を少ない兵力で死地へ追いやっておきながら! 今またマリアンデールまでも毒牙にかけるつもりですか! 撤回しなさい!」


「ジョアンナ様、貴方はまだこの国の公爵ではありません、ただの公爵家の人間なのです、・・・口をお慎み下さい」


「黙りなさい! あなた方こそ、公爵家でもないのにこの国を好き勝手にしてよいはずはありません!」


・・・なんて事だ、シスターマリーに戦場へ行けと言っているのか! しかもたった50人の兵士だけ与えて、そんな横暴がまかり通る訳ないじゃないか。シスターマリーは確かに妾の子だと思うが、一応公爵家の一員なのだがな。にも関わらず無茶な命令をしている、こいつ等わかっているのか。そんな事したらシスターマリーは・・・・・・。































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る