第97話 Eランク昇格試験 3
俺達とボルボ教官は、果物屋を後にしてサラミスの街の農村区へと向かった。
そこで農家の人に交渉してリンゴを一箱譲って貰えないか交渉しに行く事になった。
朝の早い時間帯だが、農家ってのは基本的に朝早いって勝手なイメージがあるのだが、もう起きて朝ご飯の支度を始めているようだ。そこかしこから竈(かまど)の煙が上がっている。
「そう言えばピピ、リンゴ農家でお手伝いしていたんだったね、案内してくれるかい」
「・・・いいよ、こっち・・・」
ピピの案内で街のリンゴ農家の所へ行く。農場は街の外に農地があるようだが、農家の家は街の中にある。そこまで案内してもらう、辺りの農家は結構な大きさの家が目立つ、農地持ちの家だろうか。
「・・・ここだよ」
ピピは一件の家の前で止まった。ここか、農家の人は、もう起きているかな。訪ねてみる事にする。
「朝早くにすいません、冒険者の者ですが」
「は~い、何ですかな~」
玄関から出てきたのはボルボ教官と同じ歳ぐらいのお爺さんだった、リンゴ農家の人かな。
やはり朝が早いのか、すでに作業着を着ている。もう出かけるところなのかな。
「自分は冒険者のジローと申しますが、あなたはリンゴ農家の方ですか?」
「はい、リンゴ農家を営んでおりますが、どの様な用向きですかな」
「実は、リンゴを一箱譲ってほしいのですが、勿論何かお手伝いできる事があれば手伝います」
「ふうむ、リンゴを一箱ですか、商業ギルドの話は通りましたかの?」
「いえ、商業ギルドに話は通しておりません、一個人の取引でお願いしたいのですが」
「なるほど、そう言う事でしたらリンゴの収穫作業を手伝っていただけますかな、それでしたらリンゴを一箱融通できますが、いかがですかな」
「はい、それでお願いします、収穫をお手伝い致します」
「ならば交渉成立です、早速ですが今からリンゴの収穫をしに行くところでしてな、今すぐいけますかな」
「はい、よろしくお願いいたします」
よし、交渉できたぞ、収穫作業を手伝ってリンゴ一箱を報酬で貰う事になった、やったぞ。
こうして、リンゴ農家のお手伝いをする事になり、俺達はサラミスの街の城外へと歩き出した。そして目の当たりにする。リンゴ農園の広大さを、柵の中に沢山のリンゴの木が所狭しと生えている。
これ、一日で終わらないだろ。なんて広いんだ。
「さあ、頼みましたぞ冒険者さん、わしは木箱を持ってきますでな、リンゴを収穫したら木箱に次々と入れていってくだされ」
「・・・わ、わかりました、ファンナ、とにかくやってみよう」
「は、はい、そうですね、急いでやりましょう」
ボルボ教官は緊急時の戦闘以外手出ししないと言っていたからな、今は俺とファンナだけでやらなくては」
「ピピ、ここは街の外だから野生のモンスターが近くに居たら知らせてくれ」
「・・・わかった」
さあ、やるぞ~。まずは立てかけてあった脚立を持ってきて近くのリンゴの木に立てる。借りてきたハサミでリンゴを一つづつ収穫していく。とにかく数が多い、一本のリンゴの木に実っている果実を丁寧に、しかし急いで収穫していく。
ファンナは農家の家の子らしく、テキパキと作業をこなしている。俺は筋肉痛なので無理せずやっていく。リンゴを収穫して木箱に入れて、木箱がいっぱいになったら荷車に載せて一箇所に置いて、また次のリンゴの木に取り掛かる。
どれぐらい時間が経っただろうか、もう随分と収穫作業をしているような気がする。木箱にリンゴを入れて荷車に載せる。これで6箱目だ、周りを見る、まだまだ農場は広い、俺の収穫したリンゴなんて大して物の数ではないか、作業に戻る、リンゴを収穫する。木箱に入れる。荷車に載せる。一箇所に置く。それを繰り返す。
気がついたらもう夜だった。
「お疲れさん、今日はここまでですわい、明日また頼みますぞ」
農家の人に労われて一日が終わる。周りを見る、ようやく半分ぐらい終了?。やはり一日では終わらなかったか。筋肉痛で、体中のあちこちが痛い。こりゃあ明日も筋肉痛だな。
ファンナに声を掛ける。
「ファンナ、お疲れ、さすがに一日では終わらなかったね」
「そうですね、明日またやりましょう、ジローさん」
「ピピ、帰ろう」
「・・・うん」
「ボルボ教官殿、明日もよろしくお願い致します」
「うむ、今日はご苦労じゃったのう、二人ともゆっくり休むがええ、明日の朝はここに集合じゃ」
「「 はい、教官殿 」」
あ~、疲れた、早く帰って寝よう。明日も朝が早い、疲れを残さないようにしないとな。
俺達はそれぞれ帰路についた。明日も収穫作業だ、早いとこ寝よう。
干し肉を齧りながら空腹を満たす、ピピにも少し千切って渡す。おいしそうに干し肉を齧っている。
おじさん、明日も収穫作業だよ
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