第76話 ローゼンシルの宣言
結婚式は無茶苦茶になってしまった。
バンガード殿達、騎士連中達がローゼンシル姫の愛の宣誓をするところで、突如乱入してきて、結婚式会場を引っ掻き回して大騒動になってしまった。
間違いなく結婚式は中止だろう、しかしバンガード殿達は大丈夫なんだろうか。この一件で間違いなく衛兵やドコス家に騎士達が目を付けられるだろう。バンガード殿が自分に任しとけって言っていたのはこう言う事か、騎士が酒に酔って暴れて式をぶち壊したみたいな感じになっている。今も騎士達と衛兵が揉み合いの喧嘩になっている。
エミリーが言う。
「まさか髭のおっさんがここまでやるなんて」
「さすがにこれはやりすぎですよ、ここからどう収拾を付けるつもりなんですかね」
「まさか、何も考えてないとか」
ルビーさんも一連の動きに翻弄されている感じだ。
「その可能性はあるねえ、ジローさんどうする」
「このまま静観ですね、今の所は」
そう思っていたのだが、なにやらローゼンシル姫の方で動きがあるみたいだ。
ローゼンシル姫が壇上に上がり、大声でみなに何か言っている。
「皆様、落ち着いて下さい、この結婚に反対する者がいる事は知っていました、ですから、ラッセルが王位に就く事はありません、何故なら、わたくしが、女王をやるからです!」
ひとしきり暴れていたそれぞれの陣営が争いをピタリとやめた。辺りはシーンと静まり返っている。
「もう一度言います、わたくしは! 女王を! やります!」
今まで喧騒で騒がしかった大ホールが、ローゼンシル姫の一言で静かになった。
「・・・女王様万歳・・・」
誰かが言った。
「女王様ばんざい・・・」
「女王万歳!」
「「「 女王様ばんざい! 」」」
「「「「「「「「 女王様ばんざい! 」」」」」」」」
周り中から拍手喝采が鳴り響いた。この騒動を一言で治めてしまった。すごいな姫様。
ラッセルの方を見ると苦虫を噛み潰したような顔になっていた、どうやら予定に無かった事が起こって自分が玉座に座れないことになってイラついている様だ。
そして更に、入り口の扉が大きく開かれた、そして2人の人物が大ホールに入ってきた。
「よくぞ申した! 我が娘よ、しかしな、まだまだわしが存命のうちは玉座を譲るつもりはないぞ、はっはっはっ」
「お、お父様! それにお兄様も、生きておいでになられたのですか、生きておられたのでしたら手紙の一つも送って下さいませ、お兄様」
「いやあ、すまないねローゼンシル、色々あってね」
ラッセルがわなわなと体を震わせて、この事実を受け止められない、と言う様な有様になっている。
「・・・そんな・・・まさか・・・何故王がここに・・・それにフレデリック・・・貴様」
「ん? どうしたラッセル、顔色が優れない様だが」
「い、いえ」
「そうであった、我が娘と結婚した婿に王位が就くというのは出鱈目(でたらめ)である。わしはそのような事は言ってはおらぬのでな」
「お、お待ち下さい、それでは私は・・・」
「うむ、婿として迎え入れようではないか、のう、フレデリック」
「はい、父上、しかし父上に毒を盛った者を裁かねばなりません、そうですよねギア・ドコス」
「そ、それは・・・」
ここへきて一発逆転だ。王様の顔色もすこぶる良さそうだぞ。ピピはいい仕事をしてくれた。
王様と王子の登場で場は大盛り上がりだ。どうやら王子は実家に帰れたようだな。
「くくくくくっ、ふはははははははははははっ、なんだ、なんだこの茶番は! こんなの私の予定に無い! この私の思い通りにならない国など滅びてしまえばいいんだ!!」
なんだ?! ラッセルの様子が・・・やけっぱちになっている様だが、何か嫌な予感がするぞ。
ラッセルの懐から何か黒っぽい宝玉の様な物を取り出した。
あ! あれは召喚の宝玉じゃないか。ゲーム、「ラングサーガ」でも出てきたアイテムだ。
なんだ! 何を召喚するつもりだ、宝玉の大きさから見てそんなに大きなモンスターじゃない事は解っているが、こんな人が多いところでモンスターなんか召喚したらどんな被害がでるかわかったもんじゃない。
なんだ! ラッセルはどうするつもりなんだ。
「いでよ! 契約モンスターよ!」
黒い宝玉が粉々になり黒い煙が辺りを包み、そして、召喚されたモンスターは・・・
「グゲゲゲ」
なんてこった! あれはガーゴイルじゃないか!
あんな隠し玉があるなんて、ラッセルは本気か、この場にいる王族を亡き者にすることを本気で考えているのか。
「きゃああああ」
「うわあああ」
「お、おたすけーー」
招待客がみんな混乱している、無理も無い。こんな所にいきなりモンスターが現れたらパニックになるだろう。
「王族の方々をお守りしろ!」
バンガード殿が騎士達に命令する、衛兵も招待客を守る様に動いている。
ならば、俺達のやる事は一つ。
「ルビーさん!サーシャ!ファンナ!」
「あいよ!」
「わかってるわ!」
「はい!」
さあ、ここからは荒事だよ。
おじさん、気合いれるよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます