第42話 作戦完了、そして宴会
バルト要塞奪還作戦が無事に終わって、俺達は
さすがに疲れた、もう一歩も動けない。動きたくない。その場で横になる。体中あちこちが痛い、筋肉痛と戦闘のダメージがまだ残っている。
だけど、朝日を浴びて心地よい暖かさを大地から感じた。
そこへスグ男爵がやって来た。
「やりましたな、ジロー殿、まさか一日で要塞を取り戻すとは思いませんでしたよ」
「スグ男爵ですか、このような格好で失礼、貴方の持って来た物資のおかげですよ」
「わしは商売をしただけですよ、実際にバルト要塞を奪還したのはあなた方一人一人が命を懸けて戦った結果です」
「スグ男爵としてはバルト要塞が取り戻せて爵位もそのまま男爵に留まれてよかったじゃないですか」
「ええ、ですからあなた方には頭が上がりません、そこで、わしからささやかですが宴の用意をさせて頂きました、存分に楽しんで頂きたい」
「そこまで見越して酒を多めに持ってきましたか、さすが豪商」
「はっはっはっ、流石なのはジロー殿ですよ、それではこれで」
しばらく休んで、皆がいる所に合流する、サリー王女様や騎士グレン、メディオン殿も一緒だ。
メディオン司令代理と、兵士の一人が何やら話している。
「それじゃあ祝勝会をやるんですね、メディオン司令代理」
「ああ、すまんがお前たちには今少し見張りと基地の防衛をしてもらいたい。酒は後になってしまうが」
「構いません、折角バルト要塞を取り戻したのに、また易々とモンスターに奪われたくないですからね」
「すまんな、交代は早めにするから」
「いえ、それでは自分はこれで失礼します」
王国軍兵士が報告を終えて持ち場に戻っていく。大変だな兵士というのも。
ルビーさんが先陣を切って音頭(おんど)を取った。
「それじゃあ宴会といこうかねえ」
「「「 乾杯 」」」
俺とファンナ、騎士グレンは
ルビーさんが皆に一言お礼を言った。
「改めて、みんな、助けに来てくれてありがとうよ、おかげで助かったよ」
「何の、ルビー嬢が捕まったと聞いた時のサリー様はかなり慌てていたからのう」
「ルビーお姉様がわたくしを助けに来て頂いたのです。今度はわたくしがルビーお姉様達を助ける番だと思っただけですわ」
「それでもさ、本当に助かったよ」
サーシャも今回の事でお礼を言う。
「私からもお礼を言うわ、ありがとう、みんな」
こうして少しずつ酒が進み、みんながほろ酔い気分になっていった。俺もエールを少しずつチビチビ飲む。酒飲みって訳じゃないからね。それでも少し酔っぱらってきた。周りを見るとみんな結構出来上がっていた。王国軍兵士達もそこかしこで飲んでいる様だ。
「へえ~、ルビーさんって元踊り子だったんですねぇ」
「そ~なんだよジロ~さ~ん、あたいの踊りどうだった」
「とても素敵でしたよ」
「わたくしも驚きましたわ~、ルビ~お姉様があのように踊るなんて、素敵でした~」
「ねえ~ジロ~、ルビ~とばっか話してない」
「そ、そんなことは」
「ジロ~は私を助けに来てくれたんだから~、もっと私と話そうよ~」
「ちょ、何言ってんだいサ~シャ、ジロ~さんはあたいを助けに来てくれたんだよ~」
「ちょっとジロ~、この勘違い女になんとか言ってやって~」
「うっさい貧乳~、すっこんでな~」
「お? 今面白れ~こと言ったな~、貧乳とか聞こえたが~」
「あれ~、酔っぱらってんの~サ~シャ、ひんにゅうって言ったんだよ~」
「上等だよ~、いい娘だ、立ちな~、おね~さんが教育してやんよ~」
「おう~、やらいでか~、バストアップの仕方おしえてやるよ~」
「え!ホント~」
「ああ、まず四つん這いになりな~」
「こ、こう~」
「そしてこう言うのさ~、ルビ~さんには敵いません~って」
「てめえええ~~、覚えてろよ~、豊胸の実を手に入れたら私だって~~!」
「ジローさん、お二人を止めなくていいんですか、なんか今にも掴みかかりそうなんですが」
「大丈夫ですよファンナ、あの二人は仲がいいですからねぇ」
「そ、そうなのですか」
「ええ、いつもこんな感じですから」
「そ、そうですか」
「これこれ、ルビー嬢、サーシャ殿、サリー様の御前じゃぞ、もっとこう、慎みをじゃな・・・」
「「 は~い、すいませ~ん 」」
「そう言えばメディオン殿、他の女性冒険者は大丈夫でしたか」
「はい、全員無事だと聞いておりますが」
「それはよかった」
「メディオン殿の見事な指揮ぶりは大したもんじゃ、兵に負傷者がいなかったそうじゃないか」
「いえ、自分にはこれぐらいしか出来ませんので」
「それでもですわメディオン、わたくし戦っている最中は周りが見えなくなってしまって」
「サリー様が前に突出した時はひやひやしましたわい」
「メディオン殿の指揮でバルト要塞を取り戻せたようなものですね」
「何を言われますかジロー殿、ジロー殿の作戦のおかげですよ」
「いえ、俺は何も、それよりルビーさんのブレイズダンスのおかげでオークロードを倒せたんですから、助けに来たつもりが逆に助けられましたね」
「そうですよ、あの踊りは凄かったです、あの時私、何も出来なくて」
「またルビーお姉様に助けて頂いた訳ですね、わたくしもまだまだですわ」
「なに言ってんだい二人とも、サリー様達があたい達を助けに来てくれたんだろう、恩に着るよ」
この言葉に、俺もファンナもサリー王女も心打たれた。
「ルビーお姉様・・・」
「ルビーさん・・・」
「私でもお役に立てたでしょうか・・・」
「オークロードと戦っていたサリー様を援護してくれたお主達は、立派に役に立っていたぞい」
「騎士グレンにそう言っていただけると、胸を張れそうです」
何だかこそばゆい、誉められ慣れていないからな。
メディオン殿もルビーさんのブレイズダンスの事を、誉めていた。
「それにしても見事なダンスでしたね、自分は見惚れてしまいましたよ」
「あたいの奥の手だからねぇ、滅多に使わない技だけどね」
「さすがルビーお姉様ですわ」
「大した事じゃないさ、さあ! 飲むよ!」
こうして朝から酒を飲み、昼過ぎぐらいにみんな睡眠を取るのだった。
俺もいい感じに酔っぱらってきたからね。休むよ。
翌日、冒険者達はそれぞれ拠点にしている街や都へと帰っていった。
俺達もサラミスの街へと帰る事にした、スグ男爵はすでに王都へ出発した様だ。
「それではメディオン殿、我々は帰ります、お世話になりました」
「いえいえ、お世話になったのはこちらの方ですよ、道中お気を付けて」
「メディオン、後続の王国軍が来るまで大変でしょうが、あなたなら出来ます」
「は! サリー王女殿下! お気を付けてお帰り下さい」
「それでは参りましょう皆さん」
「「「 はい、サリー様 」」」
こうして俺達は何の問題もなく乗って来た馬で二人乗りしてサラミスの街に向かい出発した。
サラミスの街に到着しても俺達は冒険者ギルドの酒場でまた酒を飲んでいた。サリー王女と騎士グレンはメンデル子爵の屋敷へ帰っていった。報告があるんだそうだ。
「いや~、今回は大変だったねぇ~サ~シャ」
「ホントよ~、飲まなきゃやってらんないわ~」
そこで、ギルドの受け付けのおねえさんから労いの言葉を貰った。
「皆さん、ほんと~にお疲れ様でした、冒険者ギルドから多額の報酬が出ていますよ」
「受付のお姉さん、あんたも大変だねぇ~」
「あ、それから冒険者のジローさんとファンナさんにも少しですが金一封がありますよ」
「え、本当ですか! やりましたねジローさん」
「よかったですねファンナ」
そうか、俺達は冒険者ランクFだったっけ。本来ならばバルト要塞関係の依頼とは関係なかったんだよな。
・・・だけどルビーさんとサーシャが無事で本当に良かった。
「・・・・・・ねえ、ジロ~」
「なんですかサーシャ」
「・・・なんでもない」
「?」
「あ~もう、煮え切らないねえ~、ジロ~さん!」
「な、なんでしょう」
「あたいらのパーティーに入っとくれよ!」
「え? あの~、俺Fランクですけど」
「ランクなんて上げればいいのさ、ジロ~さんならすぐだよ」
「え~と、今はファンナと組んでいるのですが・・・」
「ファンナもランクを上げればいいのよ~」
「そんな簡単に上がるものですか」
「実力で言えばジロ~さんもファンナもとっくにDランクぐらいだよ、ねえ~サ~シャ」
「そうね~、二人ともいい動きしてたもの~」
「じゃ、じゃあこうしましょう、俺とファンナがDランクに上がったらルビーさん達のパーティーに入れて下さい、今はまだ実力がついていないので、このままをキープという事で」
「「 ええ~~ 」」
「すいません」
誘ってくれるのは嬉しいが、今はまだこのままがいいと思う。
エールをチビチビ飲みながら、ほろ酔い気分のまま、そんなことを考えるのだった。
おじさん、仲間ができたみたいだ
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