第40話 バルト要塞奪還作戦 ③




 バルト要塞の建物の一つから脱出した俺達は要塞の中央広場まで出た。


そこでは王国軍である第一軍がオークやゴブリン共と戦っていた。戦況は第一軍が優勢の様に思われる、建物の制圧をした冒険者達が加勢している様だ。


そんな中、オークの中でも一回り大きい奴がいた、あれはオークロードだ。オークロードは群れのリーダー的な存在だ、おそらくバルト要塞を攻撃したのもこいつのせいだ。


オークロードは今、サリー王女とタイマンで戦っている。


騎士グレンや他の王国軍兵士が援護しようにも、モンスターが邪魔でうまく近づけない様だ。オークロードはオークとは違う。間違いなくボスモンスターだ。


「なんだい! あのデカいオークは!」


ルビーさんが声を上げた。


「あれはオークロードです、この群れのボスでしょうね」


「サリー王女が戦っているのかい! なんて格好だい」


ルビーさんはビキニアーマーを装備したサリー王女がいる事に驚いていた。


「サリー王女様がルビーさん達を助けに行くと言ってここまで来たのですよ」


「え!? サリー王女が、なんて無茶を」


「それよりサリー王女を支援しましょう、相手はオークロード、並じゃありません」


「そうだね、急いだ方が良さそうだよ」


そこで、サーシャが俺に聞いて来た。


「ジロー、作戦は」


「まず、ルビーさんの魔法でオークロードまでの進路を確保します、その後アタックの魔法を俺とサーシャに」


「あいよ!」


「サーシャはオークロードを牽制しつつオークをメインに仕留めていって」


「わかったわ!」


「ファンナ、悪いけど魔法少女よろしく、その後オークロードに攻撃しつつモンスターを倒していって」


「わかりました!」


「俺はオークロードに取りかかるから!」


「え!? ジロー大丈夫、無理しない方が」


サーシャが俺を心配してくれている、嬉しいけど、その気持ちだけ受け取っておく。


「何とかやってみます、無理なら後退しますから」


「それならいいけど・・・」


「さ~て、それじゃあいくよ! 炎よ、燃え盛れ、《ファイアーストーム》!」


ルビーさんの魔法でモンスター達が焼かれていく。


「マジカルアーープ!!」


ファンナが魔法少女になっていく、派手だな。光に包まれてあられもない姿になり、どこからともなくリボンがファンナの体に巻き付いてミニスカートのコスチュームになっていく。ショートソードはすでに魔法のステッキに変わっていた。そして魔法少女になったファンナは、決めポーズを取って。


「魔法少女マジカルファンナ! 愛と共にここに見参!!」


「・・・ジローさん、なんだいこれ」


ルビーさんが聞いて来た。


「気にしてはいけません」


「え? だってこの娘剣士じゃなかったの」


サーシャも聞いて来た。


「気にしてはいけません」


「ジローさん、この娘魔法少女って言ったよ、魔法使いなのかい」


「気にしてはいけません」


「「 ジロー」さん 」


「気にしてはいけません」


「もういいよ、そこ! 狙ったわよ!」


サーシャが進路上のオークに弓を射掛けた。


「ブヒィィ・・・」


「よし、オークロードまでの道が開いた! ファンナ!」


「さあ! いくわよ豚さん達! スパークウィップ!!」


ファンナの稲妻の鞭が次々とモンスターを倒していく。凄いな。


ファンナを先頭にして俺もオークロードまで行く。


サリー王女が戦っているところまで近づき、声を掛ける。


「サリー様! 支援します!」


「ジローさんですか、ルビーお姉様は!」


「あたいならここに居るよ!」


「ルビーお姉様!! よかった」


「今、アタックの魔法をかけるよ、それ!《アタック》」


「ありがとうございます、ルビーお姉様」


「サリー様、オークロードは並ではありません、お下がりを!」


「いえ! わたくしも戦います!」


「解りました、決して無理せずやっていきましょう」


「わかりましたわ!」


魔法少女に変身したファンナが号令を飛ばす。


「ジロー! ふぉーめーしょん2よ!!」


「わかった! サリー様、オークロードの後ろへ回り込んで攻撃を!」


「はい!」


オークロードに対してそれぞれが位置取りをしていく。


オークロードに対して、俺が正面に、ファンナが右側面に、サリー王女が背後に移動した。


「さあ! こい!」


「ブモーー!」


オークロードのこん棒を鉄の盾で防ぐ。


「ぐっ!?」


物凄い衝撃だ。ダメージは・・・12!?マジか!残りHP24。


もう2発も食らえない。少し距離をとる。


「スパークウィップ!」


ファンナが横から攻撃してくれる。


オークロードの注意がファンナの方に向いた。


「せえええい!!」


その隙にサリー王女が飛び蹴りを喰らわす。


よし、少しづつだけどダメージを与えている。


俺もショートアックスを振り下ろす。当たった、ダメージを与える。


「ブフォオオオーーー!」


オークロードの怒りの咆哮で足がすくみそうだ。


ん!? 足がすくみそうだと! まさか!?


ファンナの方を見るとファンナは立ちすくんでいた。サリー王女の方も同様だ。


「サリー様! ファンナ! 大丈夫か!」


「ジ、ジローさん、私・・・」


「わ、わたくしとした事が・・・」


まずい! 二人とも身動き取れていない。


「お前の相手は俺だ!」


俺も必死にショートアックスを振り回す。


ダメージは与えているのだが、こいつはタフだ。一向に怯む様子がない。


「ブフォ!」


オークロードのこん棒の攻撃が容赦なく俺を叩く。


「ぐっ!」


ダメージ12! マズイ! 残りHP12!?


痛い! やばい! まずい! 洒落にならん!


「もういいよジローさん!」


気が付くと、ルビーさんが近くに居た。


「え? ルビーさん? いつの間にすぐ側まで」


「ジローさん、その腰にあるダガーをあたいに貸してくれるかい」


「え? いいですけど、何故ですか」


「あたいがオークロードを倒すのさ」


「え?」


「ダガーをダメにしちまうけど確実に倒すからさ」


「撤退を考えているのですが、ルビーさん・・・無茶はしないんですよね」


「ああ、任せな」


俺は腰だめにあるダガーを抜いてルビーさんに渡した。


どうするつもりだろう、俺に出来る事はもうなさそうだけど。




おじさん、何もできない自分が情けないよ













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