第13話 スグ男爵の屋敷
俺とルビーさんはメンデル子爵の屋敷を後にして、スグ男爵の屋敷に行く事にした。アトラス金貨をスグ男爵に売る為だ。
スグ男爵の屋敷はすぐ近くにあった、同じ高級住宅街にあるので見つけるのが楽だ。門番の男に取り次いで貰い、屋敷に入る事になった、デカい屋敷だ。男爵って子爵の下だよな、豪商の家柄って話だったから金持ちなのかな。
ルビーさんがアトラス金貨の入った鞄をポンポンと叩き、これからの交渉に臨もうとしている。
「さ~て、いくらで売れるかね」
「そうですねえ、男爵の機嫌次第だと思いますけど」
屋敷の玄関に着くといろんな種族のメイドさんが出迎えてきた。
「いらっしゃいませ、お客様、どうぞこちらへ」
案内されたのは凄く煌びやかな部屋だった、調度品など金が掛かってそうだ。ソファーに座って待っていると部屋に二人の男が入って来た。
「待たせたな、スグ・オール男爵だ」
あれがスグ男爵か、30代ぐらいの丸まる肥え太った男だった、仕事はできるかな?
俺達はその場で立ち上がり、挨拶をする。
「初めまして、ジローと言います」
「ルビー、冒険者だ」
ルビーさん、自己紹介が雑になってる。
「私は忙しいんだ、早くアトラス金貨を見せろ」
「はい、こちらになります」
アトラス金貨を見せてテーブルの上に置く。
スグ男爵はテーブルの上に置かれた金貨を覗き込み、後ろに控えている男に向けて言った。
「おいバインダー、鑑定奴隷を呼んで来い」
「はい、旦那様」
バインダーと呼ばれた男は部屋を出て行った、その間取り止めのない話をしていたけど、ルビーさんは一言も喋っていない。しばらくしてバインダーと女の子が部屋に入って来た。
「お待たせしました」
「うむ、おい奴隷、これを鑑定しろ」
「は、はい」
鑑定奴隷と呼ばれた女の子はアトラス金貨を見つめている。
「どうだ、早く教えろ」
「は、はい・・・間違いなく本物のアトラス金貨です」
「そうか、よし」
どうやら偽物と疑われていたらしい、鑑定奴隷か、鑑定のスキル持ちなのかな。
「ところで奴隷、この部屋を掃除したのは誰だ」
「わ、私・・・です」
「ツボが汚れておるではないか!」
「キャッ」
なんてことだ、奴隷の女の子を蹴ったぞ!
これにはさすがにルビーさんも怒りを露にした。
「ちょっとあんた、何やってんだい!!」
しかし、スグ男爵はさも平然とした態度で、ルビーさんに対応した。
「なんだ、冒険者風情が大声を出しおって」
「いくら奴隷でもやっていいことと悪いことがあるよ!」
「わしの奴隷だ、わしの好きにして何が悪い」
「なんだいその言い方、もういいジローさん帰ろう、こんな奴に売る事ないよ!」
「なんだと!せっかくわしが買い取ってやろうとしておるのに、もうよいわ!」
気持ちは解るけど堪えて、ルビーさん。
そこで、スグ男爵の後ろに控えていたバインダーとかいう男が、スグ男爵に何か伝えた。
「お待ちください旦那様、アトラス金貨は買うべきです」
「なんだと、・・・うむ・・・そうか・・・そうだな・・・」
なんだ? さっきまで怒っていたのに、スグ男爵が急に大人しくなったぞ。
バインダーと呼ばれた男は何やら手を動かしている。
スグ男爵の頭がフラフラと揺れているが、それには構わず俺達に向き直った。
「おい、アトラス金貨を30万Gで買おう」
「30万!」
まさかの金貨3枚だ、どういう風の吹き回しだ。
「どうします、ルビーさん」
「・・・30万だね、いいよ、それで・・・」
「解りました、30万Gで売りましょう」
「そうか」
なんだろうな、目が虚ろだ、それにスグ男爵の右手の指輪が怪しく光っている。
「旦那様、良い買い物をしましたな」
「ああ、良い買い物をした」
なんだか操られてる感じがするんだが、バインダーの目がぎらついている。ちょっと怖いぞ、なんか違和感があるんだが、まあいいか、アトラス金貨が売れただけでも。
「ちょっとジローさん、なんだろうねえ?」
「さあ、なんなんでしょうねえ?」
ともかく商談成立だ、ルビーさんとゲイルさんの3人で分けて一人金貨1枚だ。俺達は30万Gを手にしてスグ男爵の屋敷を後にした。
あの指輪、俺のゲーム知識だとたぶん黒の指輪だ。ゲーム「ラングサーガ」にも出てきた・・・アトラス金貨に宿っている魔力が悪いことに使われなきゃいいけどな。
外に出て、ルビーさんは一つ伸びをした。
「あ~終わった、ジローさん、これからどうする」
「そうですねえ、冒険者ギルドに戻りましょうか」
「分かったよ、そういや冒険者ギルドに登録しに行くんだったね」
「そうです、ギルドカードを手に入れたいので」
報酬と合わせて10万3千Gか、登録料には十分だろう。
俺達は冒険者ギルドへ向けて歩き出した。
おじさんちょっと心配だよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます