第11話 異世界の朝
朝、目が覚めると馬小屋だった、どうやら昨日は酒を飲んで少し酔っぱらってしまったようだ。それにしても馬小屋で寝られたなんて疲れが溜まっていたのかな。
体を少し動かすとあちこちが痛い、筋肉痛だ。歳取ると後からくるんだよな・・・
隣を見るとゲイルさんも丁度起きだした。
「おはようございます、ゲイルさん」
「ああ、おはようです、ジローさん」
二人で顔を洗いに行く、そこでちょっと気になる事があったのでゲイルさんに聞いてみた。
「1G(ゴルド)って銅貨1枚ですか?」
「へ、? 何言ってるんですかい、1Gは鉄貨1枚でやすよ」
「あ、そうなんですか、という事は10Gは銅貨1枚ですか」
「そうでさ、で、100Gが大銅貨1枚でさ」
「なるほど、1000Gが銀貨1枚ですね」
「そうでさ、何ですかい急に?」
「いえ、気になっていただけですから」
「あ、もしかして金が流通しづらい相当な田舎から出てきたんですかい」
「そうなんですよ、何も知らずお恥ずかしい」
「気にしねえでくだせい、あっしも田舎から出てきたもんで」
なるほど、大体分かってきた。つまり鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨の順に価値が上がる訳か。
二人で井戸に行き、井戸水で顔を洗う。早朝のこの寒空の下、井戸水はやはり冷たい。一気に目が覚める。
「腹が減りやしたね、冒険者ギルドに行きやしょう」
「あ、私はお金が・・・」
今の俺は文無しだ。着の身着のまま異世界に放り込まれた訳だからな。何の準備も無い。
「な~に、あっしが奢りやすよ、昔ルビーの姐御に世話になってやすからね、その分をジローさんに奢る番に回ってきただけでさ」
「ありがとうございます、お言葉に甘えさせて頂きます」
どうやらゲイルさんが飯を奢ってくれるらしい、感謝しかないな。今の俺に出来る事っといったら。
俺達二人は冒険者ギルドに行く事にした。朝はやはり肌寒い、温かい飯でも頂きたいところだな。
冒険者ギルドに着いてみると何だかギルド内が騒がしい、何だろう。
中に入ってみるとルビーさんともう一人、耳が長いからたぶんエルフだろう、セミロングの髪型をポニーテールにし、水色の髪の色、身長は高い方だと思う、身体のラインがシュッとしていて身軽そうだ、皮の胸当てにロングボウの弓を装備している、エルフってのはみんな見た目が17歳位に見える人ばかりなので、実際の年齢は解らない。映画や小説なんかでは長寿として有名だが、どうなんだろう。その女の子がルビーさんと言い合いをしていた。
「何でやすかね、ルビーの姐御とエルフのサーシャじゃねえですかい」
「知り合いですか?」
「知ってるって言うか、ルビーの姐御の元パーティーメンバーでさ」
「なるほど、サーシャさんと言うんですね」
二人は言い合いをしているけど、険悪という訳でもない。
何を話しているのか気になって近くに行く事にした。ルビーさんの声が聞こえる。
「だから、何であんたにアトラス金貨を売らなきゃなんないのさ」
「だからお金なら出すって言っているでしょ」
「たった銀貨2枚でかい、安く見ないでおくれ、アトラス金貨だよ」
「今は持ち合わせがないだけって言ってるじゃない」
「じゃあいくら出すんだい」
「う、それは・・・」
「ほらごらん、こっちだって命懸けで手に入れた物なんだから安くはできないよ」
「でも、どうせ成金貴族に売るつもりなんでしょ、そんなのダメよ」
「何がダメなんだい」
「アトラス金貨って言うのは古代魔法文明の魔力が宿っている物なの、とても危険なのよ」
「成金貴族がコレクションしているだけだろ、何か事故があったなんて聞いた事ないよ」
どうやらアトラス金貨の事について話しているみたいだ。俺のアイテムのスキルにそこまでの情報は表示されてなかったよな。
アトラス金貨に魔力が宿っているなんて、確かに扱い方によっては危険かもしれないな。ゲーム、「ラングサーガ」をやってた頃は魔力が宿っているアイテムは使い勝手が難しい物が多かったからな。
「とにかく、この話は終わりだよ」
ルビーさんは一方的に話しを終わらせた。
「アトラス金貨の様な古代の物は、私たちエルフが管理するべきなのよ」
どうやら一段落したみたいだ、ギルド内も静かになったようだ。ルビーさんに声をかけて挨拶をする。
「おはようございますルビーさん、何かあったのですか」
「ああ、おはようジローさん、いやね、ちょいと昔の仲間と話してただけさね」
「おはようございやすルビーの姐御、それとサーシャさん」
ゲイルさんも挨拶をする。その時にサーシャと呼ばれていた女性エルフがこちらを向き、朝の挨拶をしてくれた。
「おはよーゲイル、そちらの方は?」
サーシャさんが俺の事を見ているので、自己紹介をする。
「初めまして、ジローと言います。よろしくお願いします」
「よろしく、私はサーシャ、ご覧の通りのエルフで弓使いのスナイパーよ」
スナイパーと言うと中級職の弓使いか、ルビーさんと並んで強そうだ。
「スナイパーですか凄そうですね」
「ジローさんね、それで?」
「はい?、」
「だから、クラスよクラス、職業は?」
「ああ、え~と一応、戦士(ファイター)です」
「え、?ジローさん、あんたファイターだったのかい!」
ルビーさんが俺の発言に驚いた。
「そうです、と言ってもなったばかりですけどね」
そこで、ゲイルさんが俺に助言を言ってきた。
「ジローさん、あんた戦士だってんなら冒険者ギルドに登録しなさったが方がいいでさ」
「そうだよジローさん、身分を証明するものを持ってないんだろ」
そこへ、エルフのサーシャさんも会話に加わってきた。
「まあ、冒険者ギルドは世界中に支部があるからね、ギルドカードがあればどの街も入る時の税金が免除されるから、便利ちゃ便利だけどね」
なるほど、ギルドカードか、持っていると便利そうだな。
「そうですか、分かりました。早速登録してきます」
俺が冒険者登録をしに行こうとしていたら、ルビーさんから声が掛かった。
「あ、でも確か登録にはお金がいるんじゃなかったかい」
「そう言えば」
なに? ここでもお金が必要なのか、参ったなあ。
「そうですか、今の私は無一文ですからねえ」
「そういや、ジローさんに報酬が出るんじゃなかったですかい」
「そうだよ、騎士グレンから報酬があるんだったね」
そうだった騎士グレンから報酬が貰えるんだった。
その時だった、冒険者ギルドに鎧を着た兵士っぽい人が現れて、俺達の前にやってきて話かけてきた。
「冒険者ルビーと、それからジローと言う者は?」
「ルビーはあたいだよ」
「ジローは私ですが」
「そうか、冒険者ルビーとジローはメンデル子爵様の屋敷に来るように」
呼び出しかな? 一体何だろうか。
「ジローさんは分かるけど、あたいもかい」
「そうだ、とくに冒険者ルビーはくれぐれも来るように、との事だ」
「なんだろうねえ、あたいもなんて?」
「では、確かに伝えたぞ。俺はこれで」
「あ、はい、分かりました。ご苦労様です」
兵士は伝言を伝えるとすぐに冒険者ギルドを出て行った。
「それじゃあルビーさん、メンデル子爵の屋敷に行きましょうか」
「そうだね、屋敷はあたいが案内するよ」
「それじゃああっしは街の診療所に行って足の怪我を診てもらいやす」
「じゃあ今日は別行動だね、ゲイルの足が治るまで、しばらく冒険者稼業は休もうかね」
「分かりやした」
俺とルビーさんは冒険者ギルドを出て歩き出した。貴族の屋敷か、緊張するなあ、サリー王女様も確かメンデル子爵の屋敷に居るんだったな。
俺とルビーさんは冒険者ギルドを出て、メンデル子爵の屋敷へ向かって歩いて行く。
おじさんどーなるの
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