第6話 ダンジョンアタック





 街道から道を逸れて歩く事15分、俺達は目的地のドム遺跡にやって来た。


「着いたぞい、ここがドム遺跡じゃ」


なんて事だ、ゲーム「ラングサーガ」にそっくりじゃないか。やり込んでてよかった。


ドム遺跡は地上1階層、上に1階層の2階層構造のダンジョンだ。


ところどころ崩れていて日の光が差し込んでいる、割と探索し易い感じになっている。


「ところで、遺跡に入る目的を聞いてもいいですか」


俺の質問に、騎士グレンさんが答えた。


「おお、そういや言うとらんかったかの」


「あたいも聞きたいねえ、仲間を1人置いてきてゴタゴタしてたから」


「うむ、実はの、遺跡の調査なのじゃ、この国でモンスターどもが活発に動いておってな」


騎士グレンさんの答えに、ルビーさんが怪訝そうな顔をして遺跡を指差した。


「遺跡調査?こんな街から近い探索され尽くされた場所をかい?」


俺も疑問に思う。


「どちらかと言うとモンスター退治の様に聞こえますけど」


騎士グレンさんが更に説明する。


「ドム遺跡だけではない、バーミンカム王国中の遺跡やら洞窟やらが調査対象じゃ」


「と言う事は、騎士グレン様だけではなく・・・」


「うむ、その他の騎士も国王陛下より任務を賜っておる」


この言葉にルビーさんは納得した様だ。


「と言う事は、この仕事は国の依頼と思えばいいんだね」


「遺跡調査はワシの任務じゃ、おぬし達はワシに雇われただけじゃ、そう気負わんでいい」


「へ~、どうりで依頼料が良かったワケだ」


遺跡の探索にモンスター退治か、まさにダンジョンアタックって感じだ。ドム遺跡はそんなに広くない筈だ、だけど盗賊(シーフ)がいない、探索は慎重にいかなくては。


「それじゃあ、前衛は騎士グレン、中央に松明を持った俺、後衛にルビーさんでいいですか」


「うむ、よかろう」


「異存はないよ、それでいこう」


「俺は荷物持ちなんで戦闘は苦手です。護衛宜しくお願いします」


「その手斧は飾りかい、自分の身ぐらい守れるだろ」


ルビーさんに言われてしまった、戦いは苦手なんだけどな。


「ルビーさんの様に強くないですから」


「ここまで1人旅してきたんだろ、当てにしてるよ」


騎士グレンさんが準備を整えて、遺跡探索を急(せ)かした。


「ほれ、いつまでも言うとらんで行くぞい」


いよいよダンジョンか、気を引き締めねば。


松明に火をつける。


「ちょいと待ちな、今どうやって火を付けたんだい?」


「え?ライターで・・・」


しまった、こっちにはライターなんて無かったか。喫煙者の癖でつい。


「ま、まあこれで松明の準備は出来ました、さっそく行きましょう」


「・・・まあ、いいけど・・・ね・・・」


ほ、何とか誤魔化せたみたいだ、これからは気を付けよう。


「そうだ、今言っておくけど、あたいは魔法は一日6回しか使えないからね」


「え、一日6回も魔法が使えるのですか、それはそれで凄いと思いますけど」


一日6回か、確かクラスは中級職のメイジと言っていたな。これは心強い。


「さあ、ジローさん、行こうじゃないかい、慎重にね」


「はい」


遺跡の中に入ると、1階はうす暗かった。


正面に広間があって左右に通路がある、2階への階段はもう目の前にある。


ルビーさんがこの遺跡の地図を広げて、確認している。


「地図を見るとそんなに広くはないねえ」


「目的は調査じゃ、とりあえず右からじゃな」


「了解」


「分かりました」


右の通路へと進む、盗賊がいないんだ、慎重にいく。


通路はほぼ一直線だ、途中小部屋なんかもあったが何もなかった。


「行き止まりじゃ、右の通路は調べたな、戻って左の方を調べるぞい」


「・・・おかしいねえ、そろそろモンスターが出てきてもいいんだけどねえ」


モンスターか、怖いなあ、いつ出てくるのか解らないってのがいかん。


「いや、いない方がいいんですけどね」


「やはりゲイル氏がおらんと探索は難しいかの」


盗賊シーフの特技は優秀だからねえ、ゲイルがいないんじゃしょうがないよ」


通路を戻って広間に出た、次は左の通路だ。


こちらも右の通路同様に途中に小部屋があるくらいだ。


「とくに問題はなさそうですね」


「うむ、この遺跡はハズレかのう」


「まだ2階が残っているよ、ここからだよお二人さん」


「そうじゃな、油断は禁物じゃな」


「そうですね」


広間まで戻る、ここまでモンスターとのエンカウントはなかった。


順調? なのかな・・・


「2階に上がるぞい」


騎士グレンを先頭に後に続く、2階に上がると・・・いた! モンスターだ。


あれはビックラットだ、ゲームのまんまの姿をしている。体長50センチ位のねずみ型モンスターだ、冒険の初めの頃お世話になるやつだ。


「ビッグラットだね、いくよ!」


「待て待てルビー嬢、4匹おる、作戦はどうするんじゃ」


「あたいの魔法で3匹やるよ、残りは頼めるかい」


「わかった、やるかのう」


「二人とも、お気を付けて」


ルビーさんが魔法の詠唱を唱える、騎士グレンと俺は待機。


「いくよ! 燃え盛る炎よ、《ファイアーストーム》!」


ルビーさんの魔法が炸裂する、すごいな、あれが魔法か。


火柱がビッグラットが密集している中央で上がる。


炎がビッグラットを2匹燃やし尽くす。


「2匹もらした!」


「まかせい!」


騎士グレンが前に出る。


「ふんっ」


騎士グレンのロングソードが素早く振り下ろされる。


ビッグラット1匹を倒す。一撃だった。


残りの1匹が俺の方へ向かってくる。


「うわっ」


咄嗟にハンドアックスを振る、当たらない。


その間、ビッグラットの体当たりをまともに受ける。


「ぐはっ」


やばい!、今のでダメージいくつだ。


そのままハンドアックスをもう一度横薙ぎに振るう。


やった、当たった、ビッグラットは弱っている。


「それっ」


今度はモンスターの動きを良く見て、またハンドアックスを振り下ろす。


ビッグラットに当たり、かなりのダメージを与えたみたいだ、ビッグラットはピクリとも動かない。


今度こそビッグラットを倒した。


「はあっはあっ、やった・・・」


「ジロー殿、無事か」


「ええ、なんとか」


「やるねえジローさん、ちゃんと戦えるじゃないか」


「いや~、結構きついですよ」


何はともあれ、何とかなった、そうだステータス。メニューコマンドのステータスを確かめる。・・・よかった、HPは2残っている、って事はさっきのダメージは1ポイントか。


まだなんとかなるか、探索を続けよう。


確かこの先は大広間になっているはずだ、・・・ボス部屋の・・・


「この先は注意して行きましょう、何があるか解りません」


「そうじゃな、ジロー殿の言うとおりじゃ」


「そうだね、いきなり4匹はおかしいからねえ」


さて、ボス部屋か・・・何が出てくるやら・・・




おじさんちょっと怖いなあ






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