バイト

「今日、新しい人来るからよろしくねん」 


 学校終わりのバイト、バイトの先輩がそう言ってきた。

 今日は新規で入ってくるアルバイトの人がいるので、少し気分が上がる。


 そして、僕と同い年で女子と言う。


 どうやらバイトの先輩はアルバイト面接を担当したらしく、すごい可愛い人だったらしい。


 ますます気になってくる。

 僕のバイト先では後輩や同年代の人がいない。


 なので、同年代の子が来ないかなと思っていた頃に、アルバイトの女の子が来た。


「じゃあ先上がるねん」


 先輩はもう上がる時間なので、ここでいなくなる。


「お疲れ様です」


 僕がそう言うとニコッと少しだけ笑い奥へと消えていった。

 と、そこで先輩と入れ替わりのようにお客様が来た。


「あの、アルバイトの人なんですけどぉ……」


 どうやらアルバイトの人らしい。


「はーいって……白河さん⁈」


 声の主の方を振り向くと、目の前にいたのはそう、白河さんだった。


「あ……」


 どうやらアルバイトというのは白河さんだったようだ。


***

 

「如月さんここでバイトしていたんですね」

「うん」


 あれから用意されていた制服に着替えた後、普通に僕たちは2人、店に並んで話していた。


 今は研修期間なので、ルールや覚えておくべきことを教えながら他愛のない会話をした。


 新しく入る人が白河さんだということに驚きをまだ隠せなかったが、これは現実なので何とか切り替えることを意識するしかない。


「意外ですね」

「……そうかな」


 白河さんは僕がクレープ屋で働いていることを意外と言う。


「如月さんほんとに前と変わりましたよね」


 すると、白河さんから見て、僕に変化があるのか今の僕を見てそんな感想を口にした。


「なにかあったのですか?」


 僕はなんて答えればいいか困っていると、続けて白河さんは言った。気を遣わせてしまっている。


「まあきっかけがあったんだよ」


 具体的ではなく抽象的な答えだが、間違ってはいない。

 別にきっかけまでも話す必要はないだろう。


「髪の毛が邪魔だったから切ったわけじゃない感じですか?」

「まあ、そういうことかな。邪魔だったのはほんとだけど」


 髪の毛は邪魔だったけど、別に切ろうとは思っていなかった。前が見えない方が気持ち的にも安心するし、陽キャラたちを見なくて済む。


 が、視野が広がる良さを今は身に染みて分かる。僕的には髪を切った方が今のところ良いと思っている。


 と、考えていると、また白河さんは僕の方を向いて嬉しい言葉を言った。


「似合ってますね」


 ふふっと可愛らしく。


 僕は思わず頬をポリポリとかき、照れてしまった。照れ隠しのつもりだが、白河さんは僕が照れていることに気づいているだろう。


 僕は話題を変えるしかないと思い、アルバイトをするに当たってのルール説明に話題を戻した。


「と、とにかく、これは──」


 そうして話題を変えルールなどを話していき、僕のバイトは終わりの時間を迎えたので、途中で来たもう1人の先輩と交代した。


 今頃は焼き方などを教えられている頃だろうか。

なんにせよ今回のバイトのおかげで話せるきっかけができたので、良かったと思いながら帰路についた。


 またシフト被ったとき、たくさん話すぞと決心した。

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