嘘つきエゴイスト。幸せのしるべ。

しーえー

第1話

 入学式後のホームルーム。自己紹介の順番が巡ってきた江古は、ポケットに手を入れたまま、おもむろに教壇へ向かった。

 鮮やかな金髪と、白い肌。芸術品のごとく整った顔立ち。神に造形されし美貌に、男も女もなく、その場の全員が呼吸を忘れた。

「江古輪(えご・りん)。触覚の片病っす」

 彼女は冷めた声で、自身の抱える奇病を打ち明けた。

「へんびょう?」「マジで?」

 ざわめく教室。

 そんな眼前の光景から視線をそらして、教師の顔に右手をかざした。

 ――江古の掌が、教師の顔の中に潜り込んだ。

 悲鳴にも似た驚きの声が、そこら中から上がる。

 彼女は憮然とした顔で手を引き抜いて、薄味な声で言った。

「アタシは、他人に触れらんないんす」

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