コンサートに向けて
「てなわけで、今週のスケジュールを立てましょう」
音楽室へと戻ると、鈴音が意気揚々と白紙の大きな紙と、ペンを用意してきた。
「二人とも順応性高くない?俺まだ色々整理が・・・」
「「それがJKっしょ」」
舞雪と鈴音は笑顔で言い放つと、ウキウキと話し始めた。
――一五分後。
「今週のスケジュールを発表します!」
「イエイ!」
「・・・いえーい」
テンションの高い舞雪に鈴音が続き、弦真が渋々と続いた。
「でけでけでけ。
でん!
今日・土日は帰ってゆっくり休みます。
明日・火曜日は、いつも通り練習します。
水曜日はコンサートで着るドレスとスーツを見に行って、選びます。
木曜日はいつも通り練習します。
金曜日は、水曜日に選んだドレスとスーツを取りに行きます。
土曜日は本番のコンサートです!」
様々な色ペンで書かれた紙を見せながら舞雪が説明していった。
「それと、先に言っておくと、私は明日から音楽室には来れません」
鈴音は、主に弦真を見ながら言う。
「私今回は聴く側だからあんまり手出しできない、ってのとアカデミーに向けて私も練習しておきたいっていうことなのよ」
ごめんね、と鈴音は続けて言った。
「何か質問はあるでしょうか」
舞雪が弦真に少し戯けながら尋ねた。
「特にないです。ないですけど、これで演奏が下手くそだったら騎士やめろとか言われない?」
弦真が重々しく尋ねる。
「ごめん、わかんない!」
「マジかよぉ!!!」
「あはははは、弦真君今日イチでテンション高いじゃん!あはは」
舞雪が笑顔で言い切り、弦真が叫び、鈴音が爆笑した。
しばらく話し合っていたのだが、不意に鈴音が立ち上がった。
「てなわけで、私はここまでで!また土曜日ね~」
鈴音は笑顔で音楽室を出て行った。
鈴音が帰ったたあと、音楽室には帰ってもいいんじゃね?と言ったムードが漂っていた。
「まあ。今日は帰って早く寝ましょう。寝る子は育つ!
明日への英気を養うんだぁ。明日からはスパルタだからね」
いつもスパルタじゃん、とは笑顔の舞雪には言い出せなかった弦真であった。
「とりあえず、帰ろっか」
「へーい」
二人は音楽室に散らばったペンなどを片付けると、音楽室を後にした。
次の日からの練習は宣言通りのスパルタだった。
「今日は一回もピアノ触らずに練習するからそのつもりでね」
開口一番舞雪はそう言って、ピアノにカバーをかけ始めた。
「じゃあこれで弦真くんは薬指と小指のトレーンングをしたまえ」
舞雪はスクールバックの中から、ピンク色の四つ大きな突起のついた謎の物体を手渡した。
「これは?」
弦真が舞雪からその物体を受け取りながら尋ねた。
「片手でこれを握って、そのままグッと抑え込む感じ。そうそう、いいよ。
そしたらそのまま薬指と小指だけでそれを抑え込む!はい!」
舞雪の指示通りに弦真は指に力を込めるも、ほんの少ししか沈まない。
「これは貸してあげるから、これから毎日練習してね。これやるだけで指の打鍵が違ってくるから」
弦真は頷くと、ひとまず上着の右ポケットにしまった。
「はい次。じゃあいくつか質問するね。これから弾く『月の光』。
作ったのは誰?」
「ドビュッシーだよね」
舞雪の突然の問いに、少し戸惑いながらも答えた弦真。
「そう。それは常識だよね。じゃあ、『月の光』と言うタイトルに込められた想いって何?」
「え・・・」
続く二つ目の問いの答えとしてふさわしい解答がすぐに思いつかず口ごもる弦真。
「あと、ドビュッシーが初めて実戦した演奏形態って何?」
舞雪は矢継ぎ早に質問を重ねた。
「えと・・・」
弦真はまたも口ごもる。
「ひとまずそれを調べてくること。わかったら戻ってきてよし」
舞雪はそう言って、弦真を椅子から起こすと、背中を押した。
「行ってらっしゃいませ~」
満面の笑みで舞雪は弦真を送り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます