雪の騎士
「もう一回言うね。」
舞雪は、先ほどとは異なり満足そうな表情を浮かべて、もう一度同じ言葉を口にする。
「弓波弦真くん。どうか私、雪姫の騎士になってくれませんか。
まだまだ未熟で、至らないことばかりですが、
私と連弾して後悔はさせないから!絶対楽しかったって笑って言えるようにするから! みんなに誇れる姫になるから!
だからこんな弱くて脆くてダメダメな私を。私を守る騎士に、なってくれませんか・・・」
最後の方は涙を浮かべながらではあったが、終始力強く言葉を伝えた舞雪。
舞雪は言い終わると、頭を下げて再度手を伸ばした。
「俺は別に、少し舞雪と連弾がしたかっただけなんだ、でも舞雪と接して君がすごいいいやつなんだってことはすごくわかった。
だから困ってるなら手助けをしてやりたい、って強く思ってる。
・・・言いたりないことがたくさんあるんだ」
「・・・うん」
「納得いかないことだってある」
「・・・うん、わかってる」
「俺にはまだ進む道が見えてない。
だから、俺は君だけをみて進む。君を守りながら進むから。
俺に、道を示してくれ、舞雪」
そう言って弦真は舞雪の手を取って、舞雪の顔を上げさせた。
「雪姫の従者、騎士になることを、ここに誓うよ」
「・・・ありがとう、弦真くん。こんな私の手を取ってくれて」
彼女は力強く弦真の手を握った。
まばゆいばかりの太陽の光が部屋に差し込み、二人を優しく包んでいた。
二人の顔には充実感に満ちた、溶け落ちる前の雪のような儚さを孕んだ笑顔が浮かんでいた。
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