第9話:宣戦布告+不死身人肉

 怪人vsモノ。長与の変身体型vs金属鳥オバケ。

この狭い一室部屋での闘いが始まる。


「ギシャァァア!!」


鋭い爪でモノは怪人の肉体を引き裂こうと攻撃を仕掛けてくる。

モノの脳内イメージでは突き刺し引き裂きの繰り返し。

怪人の肉体をボロボロになるまで引き裂き続けていた。

しかし、現実は違う。

モノの攻撃はすべて怪人には通用しなかったのだ。

傷がつかなかったというわけではないけれど、少量の傷しか与えられていないのだ。


「ギシャァ?」


「ちょっと痛てぇな。この野郎!!」


怪人はモノのくちばしをつかむとそれを握りながら勢いよく床に叩きつける。

モノの体も叩きつけられる。


「ギシ!?」


そして叩きつけられたくちばしを怪人は躊躇なく踏みつけた。

全身の体重をかけて床に這いつくばったままにするために怪人はモノのくちばしを踏みつけたのだ。

そこでようやく怪人は一息つく。


「はぁ……ガソリンが原因なのかねぇ。便利な体になったもんだなぁ。悲しいねぇ」


そう言いながら自身の全身を確認する怪人。

長与という人間態時の面影はない。

そう思ってしまい少し悲しくなっているのだ。


「ギギッギギギッギシャギギギ!!」


「動こうとするとそのくちばしが折れちゃうぞ。おっと!?」


全身の体重をかけているにも関わらず、怪人はバランスを崩してしまった。

モノの全力の抵抗が怪人のバランスを崩したのである。

その隙にモノは怪人の足から脱出。


「敵対者認定。抹殺対象。対処せずに任務続行不可能と断定。不可避案件。これより任務一時中断」


「なんか機械みたいだな。何者なんだよお前はよ」


向かい合うモノと怪人。

モノは先程とは違う勢いで怪人に攻撃を仕掛ける。

モノは目にも止まらぬスピードで部屋中を駆け巡る。

壁だの床だの天井だのはお構い無し。

いろいろな箇所を道として扱い、そこから飛びかかって攻撃を行うのだ。


「こいつ!!」


怪人の全身は機械で覆われている箇所が多かったが、ただ多いだけで全身ではない。

なのでモノはそこを切り裂くように攻撃を行うのだ。

やまない攻撃の嵐。そう、それはまるで嵐。鳥のタイフーン。


「(ちょこまかちょこまかしやがって。左手が千切れちゃうだろうが!!)」


怪人も負けじとモノの動きを止めるためにモノの体を掴もうとするが。

怪人は自分の左手を守るので精一杯。

武装されていないほとんど人間態の左手を守ることしかできないのだ。


「(クソッ。このままじゃマズイ)」


モノによる攻撃の嵐の中で、怪人は対処方法を必死に考える。

このままでは倒されるのも時間の問題。


「(どうする? どうやって戦う? どうする? どうす)」


その最中、怪人は見た。

モノによる攻撃の嵐はこの部屋全体を道として移動している。

そこから飛びかかってを繰り返している。

もちろん、壁も蹴り飛ぶために利用していた。

その壁には覆い被さるように吹き飛んだドアが立て掛けられた。

その裏にはドアを使って隠れていた1人の少女。

その少女の額には血が着いていた。きっと怪我をしたのだろう。

エビルちゃんはモノの意識していないところで怪我をしたのだろう。モノもまだ彼女を襲ってもいないのだ。

けれど、今、この攻撃の巻き添えでエビルちゃんが怪我をおった。


「ッ!!!!」


その後のことについては怪人はうっすらとしか記憶していない。




 怪人が意識を取り戻すと手にはモノの頭が握られていた。

モノはもう抵抗する気力もないくらいにボロボロになっている。


「回……収せ……よ。回」


部屋はもうボロボロ。再び立て掛けられているドアや死にかけている人間以外はもうひどい有り様であった。


「あっ、そうだった。エビルちゃん!!」


怪人はその部屋の有り様を見て、思い出したように立て掛けられているドアに向かう。

その時には手に握っていたモノはその場に捨てていく。


「エビルちゃん。生きてるか?」


怪人は立て掛けられているドアを退かしてその裏を見る。


「…………ありがと」


そこにはエビルちゃんがいた。再びドアを盾代わりにして身を守っていたのだ。

その事に怪人は一旦安堵する。


「よかったぁ。無事で本当によかった。帰ろう。もうここに用なんてないからさ」


怪人はそう言ってエビルちゃんに手を差しのべる。

すると、時間が限られていたのだろう。

怪人の体はまるで卵の殻が割れるようにボロボロと崩れ始める。

そして中から元通りの裸な長与の姿が現れた。


「…………露出しちゃったじゃん」


生まれたての姿でモザイクがかけられるレベルの全裸。

エビルちゃんはその全貌を見ないように顔を隠してくれているが。

長与は焦る。このままでは少女に全裸を見せつけている露出魔だ。


「どないしょ。どないしょ!!」


「…………見」


「ん?」


「見て。見見見見観観観観。観ていいるのだろう。上上上から。この有り様を」


「うわぁ、金属鳥オバケが喋ったァ!?」


「数数数数年前、とある研究所で秘密裏にににに計画さささされた」


モノはボイス機能が壊れたような様子であったのだが、何かを伝えようとしている。

しかし、その音声はよく聞き取れない。


「どないしょ。どないしょ」


全裸と急な音声で、もう冷静な判断すらできないほど焦っていた長与はとりあえず。

───バコッン

斜めから叩いてみる。

すると……。


「研究所の極秘結果。非人道的人体実験の末の技術。神業。

研究所は数百年前の伝承と極秘科学装置と無数の犠牲によって発明した。

【不死身人肉】。

その人肉を生きたまま食えば不死身になれる。人魚のごとき肉。

しかし、その期の実験体は研究所を脱走した。こうして計画は歴史の闇に葬られた。そうだよな日本怪奇物討伐連盟?

だが、今宵我々はピースが揃った。実験体は何人で名前は何か。そのデータが揃った。

我々は何時でも実験体どもを嗜める事ができる。

このモノは日本怪奇物討伐連盟への宣戦布告である。

我が名は『ツキセキガサ』。さぁ奪い合おうぞ!!」


そう言い残し、金属お化けはそれ以上の事を語らなくなってしまった。

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