第108話 病院廃墟の探索

晴南達は昔に閉鎖された九木礼炭鉱病院の廃墟の階段を登って3階までやってきた。


階段や廊下も年数相応に劣化しており、階段や廊下にはゴミが散乱していた。


建物の中にも老朽化によって崩れている箇所がいくつかあった。


晴南達は崩れている場所をうまく避けながら三階までやってきたのだった。


晴南達は3階の廊下に出た。


そして晴南は一番階段の近くにあった部屋の表札をLEDライトで照らした。


晴南がみんなに言った。


「それじゃあまずここから見ていきましょうか。」


古めかしいその病室の表札には318号室と表示されていた。


優斗が晴南に言った。


「晴南??部屋の中がどうなってるか分からないから慎重にね。」


晴南が優斗に言った。


「分かってるわ。それじゃあ開けるわよ。」


晴南は古くなっていた引き戸を開けようとした。


ギイイイイという音と共に引き戸がゆっくり開いた。


晴南達はゆっくりと318号室へと入っていった。


晴南が病室の中をLEDライトで照らしてみた。


晴南が言った。


「どうやら誰もいないみたいね。」


麻衣子が晴南に言った。


「まあこんな廃墟の病室の中に誰かいた方が怖いけどね。」


318号室の病室の中はかなり荒れ果てていた。


病室内には当時使われていたであろう患者用のベッドが片付けられずに放置されていた。


しかも病室の床には衣類が散乱していた。コップやお箸やお皿まで床に転がっていた。


さらにはホコリがかなりたまっており部屋中がホコリまみれだった。


晴南が部屋を一通り見渡した後でみんなに言った。


「ベッドは片付けられてないのね。」


晃太が晴南に言った。


「処分するにもお金がかかるからな。」


二実がみんなに言った。


「なんか服にしてもコップにしても年代物って感じよね。」


優斗が二実に言った。


「そうですね、かなり昔の物だってすぐに分かりますね。」


転がっているコップにしても服にしても年代を感じるものばかりであり、ここが現代から取り残された場所のように感じられるのだった。


すると晴南が二実に尋ねた。


「二実さん??どうですか??」


二実が晴南に言った。


「うーん、この部屋には何の気配もないわね。」


晴南が二実に言った。


「そうですか。じゃあ隣の部屋にいきましょうか?」


晴南達は隣の病室の前にやってきた。


晴南がその病室の表札をLEDライトで照らすと部屋の表札には316号室と書かれていた。


晴南が病室の引き戸を開けるとまたギイイイイという嫌な音がした。


そして晴南達は316号室へゆっくり入っていった。


晴南がLEDライトで部屋の中を照らしてみた。


晴南がみんなに言った。


「あらここは結構広いのね??」


優斗が晴南に言った。


「ベッドが四つ置いてあるからたぶん4人部屋だったんだと思うよ。」


晴南が優斗に言った。


「確かにベッドが4つ置いてあるわね。」


316号室はさきほどの318号室よりもかなり広い部屋となっており、316号室の中には四つのベッドが放置されていた。


316号室の中も318号室と同様に荒れ果てていた。


机や椅子やテレビ等が無造作に置かれていた。


また衣類や食器や文庫本なども床に無造作に散乱していた。


麻衣子が晴南に言った。


「こっちの部屋も年代物のコップや食器が転がってるけど、広さ以外はさっきの318号室とあんまり変わらないわね。」


晴南が麻衣子に言った。


「そうね。」


晃太が二実に尋ねた。


「二実さん??どうですか??」


二実が晃太に言った。


「うーん、この部屋からも特に何の気配も感じないわね。」


晴南がみんなに言った。


「それじゃあ隣の部屋にいきましょうか??」


晴南達は316号室を出ると隣の部屋へ向かった。


晴南が隣の部屋の表札をLEDライトで確認した。


すると隣の部屋はまた用途の違う部屋であった。


「ここトイレじゃない?」


優斗が晴南に言った。


「そうだね。男女のトイレの表札があるし。」


すると晴南が躊躇なく女子トイレの木製の扉を開けようとした。


麻衣子が晴南を呼び止めた。


「ちょっと待って、晴南??」


晴南が麻衣子に尋ねた。


「何?」


麻衣子が晴南に尋ねた。


「ねえ??本当にトイレの中に入るつもりなの??」


晴南が麻衣子に言った。


「えっ??ああ、大丈夫よ麻衣子。男子トイレには優斗達に確認に行ってもらうから。」


優斗が晴南に尋ねた。


「えっ?僕たちが男子トイレを確認しに行くの?」


晴南が優斗に言った。


「当たり前でしょう。女子トイレは私達が確認してくるんだから優斗達は男子トイレを確認してきてよ。」


晃太が優斗に言った。


「優斗、腹をくくろう。」


優斗が晃太に言った。


「はあー。」


晴南が麻衣子に言った。


「それじゃあ入りましょうか?」


麻衣子が晴南に言った。


「いや私も優斗君と一緒でこんな真っ暗闇で廃墟のトイレに入るのが怖いんだけど??」


晴南が麻衣子に尋ねた。


「えっ??麻衣子?この中に入りたくないの?入って中を確認しておいた方がいいでしょう?」


麻衣子が晴南に言った。


「いやさ私も入らなきゃいけないなとは思うけど、ただ晴南みたいに廃墟のトイレに何の躊躇もなく入れるほど度胸が据わってないからさ。ちょっと心の準備だけさせてくれない?」


麻衣子が晴南に言った。


「ええいいわよ。」


麻衣子がフウとため息をしてから晴南に言った。


「晴南、ありがと。」


晴南がみんなに言った。


「それじゃあ入りましょう!!優斗達は、男子トイレを見てきてね!!」


二実と晴南と麻衣子は古びた木製の扉をゆっくり開けて女子トイレの中に入っていった。


晴南がLEDライトで女子トイレの中を照らして確認した。


女子トイレの中は天井の一部分が崩れてきており、粉々になったタイル片が女子トイレ中に散乱していた。


女子トイレの中はカビ臭くて、6基の和式便器があったがトイレの個室の木製の扉は半数が壊れていた。


手洗い場には大きな鏡が設置されていた。


さらにその鏡には斜めに大きなヒビが入っていた。


そしてその鏡の横に古めかしいポスターが張られていた。


その小さなポスターには(手洗いを徹底しよう)と書かれていた。


晴南がそのポスターをLEDライトで照らしながら言った。


「手洗いをしようってポスターみたいね。」


二実が晴南に言った。


「だいぶ昔に張られたやつみたいね。ポスターの上の所が変色してるわ。」


すると晴南が手洗い場の蛇口を捻った。


そして麻衣子に言った。


「あら??おかしいわよ??水が出ないわよ。」


麻衣子が晴南に言った。


「おかしくないから。廃墟のトイレで水が出るわけないでしょ。」


晴南が麻衣子に言った。


「麻衣子?ちょっとはジョークにつきあってよ。」


麻衣子が晴南に言った。


「悪いけどこんな場所ではジョークに付き合えないわ。」


晴南が麻衣子に言った。


「ここも特に変わった所はないわね。」


晴南が二実に尋ねた。


「二実さんどうですか、何か感じますか??」


二実が晴南に言った。


「ううん、ここでも何も感じられないわ。」


すると二実が女子トイレの扉の方を見ながら晴南に言った。


「いや待って、何か気配があるわ??」


麻衣子が驚いて言った。


「ええ??」


晴南が二実に尋ねた。


「幽霊がここにいるんですか?」


二実が晴南に言った。


「ええ何か霊的な気配を感じるわ。ただしトイレの中じゃなくて廊下の方からだけど。」


晴南が二人に言った。


「すぐに確認にいきましょう!!」


晴南は女子トイレの扉を開けてすぐに廊下に出たのだった。


麻衣子と二実もそれに続いた。


晴南がキョロキョロしながら異変がないかを伺った。


そして二実に尋ねた。


「二実さん?霊的な気配はどの辺にいるんですか?」


二実もキョロキョロしながら晴南に言った。


「あれっ??また気配が消えちゃった。」


するとバーンと男子トイレの扉が勢いよく開いた。


優斗と晃太が男子トイレから出てきたのだった。


晃太が晴南に言った。


「晴南??何か見つけたか??黒輪さんが廊下から気配を感じたらしくて廊下に出てきたんだが。」


晴南が晃太に言った。


「私達も二実さんが気配を感じて外に出てきたんだけど?」


黒輪がみんなに言った。


「気配がまた消えてしまったな。」


二実が黒輪に言った。


「ええ、また何の気配も感じなくなりましたね。」


晃太が二実に尋ねた。


「どうしますか??」


二実が晃太に言った。


「気配が消えちゃうと探しようがないわ。3階の捜索を続けましょうか。」


晃太が二実に言った。


「分かりました。」


晴南達はこの調子で3階の部屋を調べていったが、その後は特に変わった事も起こらず3階の捜索を終えた。


そのまま階段を下りて九木礼炭鉱病院の2階へとやって来た。


二階の各部屋も晴南達は慎重に調べていったが、特に何も見つける事はできずに2階の1番奥にある部屋を調べるだけとなっていた。


晴南達は2階の最後の部屋の扉を開けて中に入っていった。


晴南がLEDライトで部屋の中を照らして確認した。


晴南がみんなに言った。


「ここが2階の最後の部屋よ。」


優斗が麻衣子に言った。


「部屋の表札がなかったから何の部屋かとは思ってたけど、ここは手術室みたいだね。」


麻衣子が優斗に言った。


「うん、円盤みたいな巨大なライトがあるもんね。」


晴南達がやってきたのは手術室だった。


部屋の中央部には古びた白いベッドが一つ置かれており、その真上に大きな円盤のようなライトが二つ備え付けられていた。


手術室の端の方には様々な薬品やメスなどの手術で使う器具などが納められた棚がいくつも置かれていた。


また部屋の中には少し古い感じがする医療機器がいくつも置かれていた。


晃太が麻衣子に言った。


「無影灯(むえいとう)だな。手術は繊細な作業になるから極力ライトによる影を作らない方がいい。だからたくさんのライトで照らす事で影ができないようにしたのが、あの無影灯(むえいとう)だ。」


すると晴南が部屋の中央に置かれていたベッドのシーツを照らしながら晃太に尋ねた。


「あのベッドが赤くなってない?」


麻衣子が中央のベットを見て言った。


「本当だ。」


晴南がLEDライトで照らした手術用のベッドには赤い血の跡がいくつも付着していた。


晴南がみんなに言った。


「ここで一体なにがあったのかしら???もしかしてとんでもない惨劇があったんじゃない??」


晃太が晴南に言った。


「ここは手術室なんだから血痕のシーツがあっても不思議じゃないだろう。」


麻衣子が二実に尋ねた。


「二実さん??どうですか??」


二実が首を振りながら麻衣子に言った。


「だめね、ここにもなにもいないみたい。」


麻衣子が二実に言った。


「そうですか。」


優斗が二実に言った。


「2階では何も見つけられませんでしたね。」


二実が優斗に言った。


「そうね。」


すると突然手術室の扉がギイイイイと開けられた。


晴南達は驚いて扉の方を振り返った。


「えっ????」


すると廊下側から三緒達が入ってきたのだった。


二実が三緒の姿を見て安堵した様子で言った。


「なんだ??三緒達か??びっくりさせないでよ??」


三緒が二実に言った。


「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど??1階では特に何も発見できなかったわ。そっちはどう??」


二実が三緒に言った。


「一回だけ何か霊的な気配を感じたんだけど。」


三緒が二実に尋ねた。


「幽霊を見つけたの?」


二実が三緒に言った。


「ううん、すぐに気配が消えちゃって何も見つけられなかったわ。」


三緒が二実に言った。


「そっか。」


二実が三緒に言った。


「一旦外に戻りましょうか??」


三緒が二実に言った。


「そうね。」


晴南達は階段を下りて廃墟の外にでる為に一階のロビーの所まで戻って来たのだった。


すると拓也が大きな声をあげた。


「なあ!!!あれを見てくれ!!!」


二実が驚いて拓也に尋ねた。


「何か見つけたの??」


拓也が二実に言った。


「今だれかがあの階段を下りていったように見えました。」


晴南と三緒がすぐに奥にある階段をLEDライトで照らした。


晴南は懸命にLEDライトで拓也が見た人影を探したが何もみつける事はできなかった。


晴南が拓也に言った。


「だれもいないわよ。」


拓也が晴南に言った。


「おかしいな?誰かが階段を下りていったように見えたんだが?」


三緒が二実に尋ねた。


「どうする??二実??」


二実が三緒に言った。


「あの下に行ってみましょう。」


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