第107話 いない幽霊達
晴南達は九木礼炭鉱病院跡地の中にある古いお堂の前にいた。
優斗が黒輪(こくにん)に尋ねた。
「この霊石の下には何もいないんですよね?」
黒輪(こくりん)が優斗に言った。
「ああ、何の気配も感じられない。恐らくこの霊石の下には何もいないようだ。」
拓也が尋ねた。
「どういう事だ??」
晃太が拓也に言った。
「この状況だけみれば封印が解除されて封じられてたオバケが逃げ出したって所だろうが。」
黒輪が晃太に言った。
「ああ、だがその場合問題になのが封印を誰が解除したかだ。」
晴南が拓也に言った。
「もしかして三象(さんしょう)がここに来て消滅させたんじゃないの??」
リグロが晴南に言った。
「可能性としては十分あり得る話だ。現に奴は封木神社にも現れた。」
優斗がリグロに言った。
「三象(さんしょう)が封印を解除したかどうかは重要ですね。」
リグロが優斗に言った。
「ああ、解除したのが他の存在であればそこまで気にする必要はないが、もしこれをやったのが三象(さんしょう)であった場合ここにいた者はすでに消滅させられているだろう。」
晃太がみんなに言った。
「となると問題はこの後何をするかだな。次の封印の場所に行くべきか?それともここで調査をするべきか?」
優斗が晃太に言った。
「ここで調査をするべきじゃないかな。」
黒輪が晃太に言った。
「うむ、やはり状況の確認をしておいた方がいいだろうな。」
晃太が黒輪に尋ねた。
「でも具体的には何をすればいいんですか?」
黒輪が晃太に言った。
「あの病院の中にいる幽霊を探してほしい。」
晃太が黒輪に言った。
「幽霊を探せばいいんですね。」
黒輪が晃太に言った。
「ああ。」
優斗が黒輪に尋ねた。
「やぱっり病院の中にはたくさん幽霊さんがいるんですか?」
黒輪が優斗に言った。
「恐らくな。」
優斗が黒輪に聞き返した。
「恐らくというのは?」
黒輪が優斗に言った。
「ワシはまだ復活したばかりで把握できてない者達もかなりいるのだ。ただ場所的にここにはたくさんの幽霊がいるはずだ。」
拓也が黒輪に言った。
「確かに廃墟の病院の中なら幽霊さんがいっぱいいそうだな。」
二実が言った。
「ならすぐに炭鉱病院の建物の中を調べに行かないとね。」
三緒が二実に言った。
「こんな真っ暗な中で炭鉱病院の廃墟の中を調べるのは危険じゃない??」
二実が三緒に言った。
「うんそれは分かってるけど、三象が来たかどうかは確認しといた方がいいと私も思うわ。」
三緒が二実に尋ねた。
「みんなを連れてくつもりじゃないでしょうね?」
二実が三緒に言った。
「悪いけどみんなにも来てもらおうと思ってるわ。」
三緒が二実に言った。
「二実??あの中が危険だって分かってるでしょ??」
二実が三緒に言った。
「分かってるけど、晴南ちゃんの性格だと連れってってあげた方がいいでしょ?それに晴南ちゃんがいないと病院の中に入れないし。」
すると二実が晴南に尋ねた。
「ねえ?晴南ちゃんは一緒に来たい?」
晴南が二実に言った。
「はい、もちろん行きたいです。」
麻衣子が晴南に尋ねた。
「こんな真っ暗な中よく行きたいって思えるわね?」
晴南が麻衣子に言った。
「だって面白そうじゃない。」
麻衣子が晴南に言った。
「いやそこは怖いって思うもんでしょう?これを面白そうって思える晴南ってある意味すごいと思うわ。」
晴南が麻衣子に言った。
「そうでしょう。そうでしょう。もっと褒めていいわよ?」
麻衣子がため息をついた。
「はあー!!」
二実が三緒に言った。
「ほら。」
三緒が諦めた様子で二実に言った。
「分かったわ。ただし慎重に行動してよ??」
二実が三緒に言った。
「分かってるって。」
二実がみんなに言った。
「あっ、もちろん中に入りたくない人はここに残ってくれていいわよ。」
すると亜美が二実に言った。
「すいません、それじゃあ怖いんでここに残っていいですか?」
由香も二実に言った。
「私も中に入るのは怖いのでここに残りたいです。」
二実が二人に言った。
「分かった、それじゃあ二人は外で待っててね。」
すると慎吾が二実に言った。
「そんなら二実しゃん俺も残る。女子ば外に残すとは危なか。」
長孝が二実に言った。
「なら俺も残るっす。」
亜美と由香と長孝と慎吾の四人が駐車場跡で待機する事になった。
亜美がみんなに言った。
「みなさん、気をつけてくださいね。」
晴南が亜美に言った。
「大丈夫よ、すぐに戻ってくるから。」
そして晴南が大きな声で言った。
「さあ病院探検に出発よ!!」
晴南の掛け声と共に病院だった建物への移動を始めた。
麻衣子が冬湖に尋ねた。
「そういえば冬湖は一緒についてきて良かったの??由香達と一緒に残っても全然良かったのに?」
冬湖が麻衣子に言った。
「麻衣子さんありがとうございます。ですが私はこういうのも苦手という訳ではないので。」
麻衣子が冬湖に言った。
「冬湖って意外と肝が据わってるわよね。」
晴南達はすぐに炭鉱病院だった建物の正面玄関前に来た。
すでに午後8時を過ぎており周辺は闇に包まれていた。
晴南は炭鉱病院の建物をLEDライトで照らしていった。
廃墟となり果てたコンクリートの大きな建物が晴南達の前にそびえたっていた。
LEDライトで照らされたその建物は不気味な様相を呈していた。
LEDライトで照らされた窓ガラスはほとんどが割れていた。
それだけでこの場所が現代から切り離された場所であるかのように思えるのだった。
ここだけ時間が止まっているそんな錯覚を感じてしまえるほどの不気味さを放っていたのだ。
「それじゃあここからから入りましょうか?」
晴南はそう言うと玄関口のドアをLEDライトで照らしたのだった。
年季を感じる正面玄関口のドアには勝手に入れないように錠前がかけられていた。
「ちょっと待ってね。」
晴南はそう言うとポケットから古そうな鍵を取り出した。
そしてその施錠されている錠前にその鍵を差し込んだ。
カチャという音がした。
「開きました。」
晴南が中央玄関口のドアの取っ手に手を掛けた。
晴南がドアを開けようとした。
するとすでにドアの建付けが悪くなっているらしくギイイイーという嫌な音が周囲に響いた。
そして晴南が完全にドアを開けた。
晴南達は開けたドアから病院の中へと入っていった。
晴南がライトで病院の中を照らした。
晴南達はかつての病院のロビーだった場所にやって来たのだった。
床にはたくさんの椅子や机が乱雑に転がっておりたくさんのゴミが落ちていた。
すると晴南が大きな声で言った。
「すいません!!お邪魔します!!!」
驚いた様子の麻衣子が晴南に言った。
「もういきなり大声あげないでよ、ビックリするでしょう!!」
晴南が麻衣子に言った。
「でもちゃんと挨拶をしとかないとダメでしょう??」
麻衣子が晴南に言った。
「挨拶って誰によ??」
晴南が麻衣子に言った。
「ここに住んでる幽霊さん達に決まってるでしょ。」
麻衣子が晴南に言った。
「晴南?お願いだからこういう場所でサラッと怖い事言わないで。」
すると晴南が何かを見つけたらしくとある場所をLEDライトで照らしながらみんなに言った。
「ねえ??あそこに受付??って書いてあるわ。」
晴南が照らした場所を全員で確認すると確かに受付と書かれた古い表示板が天井から吊るされていた。
冬湖がみんなに言った。
「炭鉱が操業してた頃はここにたくさんの人達が怪我や病気を治すために来ていたんでしょうね。」
優斗がみんなに言った。
「この病院は炭鉱の操業停止が決まってほぼ同時に閉鎖が決まったらしいよ。」
冬湖が優斗に言った。
「そうなんですね。」
すると二実が言った。
「妙ね??」
三緒が二実に頷きながら言った。
「ええ、これはちょっと静かすぎるわね。」
拓也が二実に尋ねた。
「静かなのが妙なんですか?もう閉鎖された病院だから静かなのは当然だと思うんですけど??」
三緒が拓也に言った。
「静かすぎるっていうのは幽霊の気配の事よ。」
二実が拓也に言った。
「病院は死に関わる場所だから本来幽霊とかが出やすい場所のはずなんだけど気配をほとんど感じられないのよ。」
三緒が二実に言った。
「そうね廃病院ならもっと気配を感じられると思うんだけど。」
晴南が黒輪に尋ねた。
「黒輪さん??どうですか??」
黒輪が晴南に言った。
「ああ私も気配を感じる事はできないな。」
二実が三緒に言った。
「こりゃ建物中を片っぱしから調べていかないとダメみたいね。」
晴南が二実に言った。
「ねえ??それなら二手に分かれませんか??」
二実が晴南に言った。
「そうね確かにその方が効率はいいわね。それじゃあそうしましょうか。」
晴南達は二手に分かれて病院の建物を探索することにした。
二実のチームと三緒のチームに分かれて調べていく事になった。
二実のチームには晴南と麻衣子と優斗と晃太の四人が加わり、三緒のチームには冬湖と七緒と拓也の3人が加わる事になった。
そして三緒にリグロが、二実に黒輪が同行する事になった。
そして拓也が携行型のLEDライトをカバンから取り出した。
「三緒さん、これ使ってください。」
拓也はそう言うと三緒に取り出したLEDライトを渡した。
「拓也君ありがとう。」
三緒は拓也にそう言い終わると、受け取ったLEDライトを点灯させた。
二実が三緒に言った。
「それじゃあ私達は三階から調べていくから。」
三緒が二実に言った。
「こっちは1階から調べていくね。」
黒輪がみんなに言った。
「もし何かを見つけたら大声で教えてほしい。」
晴南が黒輪に言った。
「分かりました。」
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