第67話 学校再開

6月27日の午前8時30分になった。


九木礼中学の3年1組の教室では全生徒が登校していた。


晴南達は席に座って熊田(くまだ)校長の話を聞いていた。


熊田校長が晴南達に言った。


「この学校で共に過ごした大柳(おおやなぎ)柚羽(ゆずは)さんが帰らぬ人となってしまいました。大柳さんは真面目でやさしい子でした。このような悲劇に巻き込まれてしまった事は本当に残念で仕方ありません。今から大柳(おおやなぎ)柚羽(ゆずは)さんの為に黙祷(もくとう)をしたいと思います。」


そして晴南達が立ち上がり目をつむると黙祷(もくとう)を始めた。


1分間の黙祷(もくとう)がおわると晴南達が席に座った。


美咲が言った。


「柚羽と成人式一緒に出るって約束してたのよ。それなのにそれなのに。」


優斗が言った。


「もう柚羽には二度と会えないんだね。」


晃太が優斗に言った。


「本当になんでこんな事になったんだろうな。」


優斗が晃太に言った。


「そうだね。」


冬湖がみんなに言った。


「みなさん。落ち着いたら大柳君を元気づけにいきませんか?」


麻衣子が冬湖に言った。


「そうね。いいと思う。」


晴南が言った。


「健太と一緒に遊び倒すわよ。」


すると熊田(くまだ)校長が言った。


「みんなも大柳(おおやなぎ)柚羽(ゆずは)さんが亡くなってしまって、大きなショックを受けていると思います。もし辛い事があったら一人で抱え込まずに先生に相談してください。」


晴南達が熊田校長の言葉に頷いた。


熊田校長が言った。


「それでは朝の会を始めます。」


優斗が手を上げた。


「校長先生いいですか??」


熊田校長が優斗に尋ねた。


「何かな、坂倉君?」


優斗が校長に尋ねた。


「なんで校長先生が朝の会をしてるんですか?」


麻衣子が優斗に言った。


「あっそうね。月曜日の朝の会って1時間目が国語だからいつも鳥岩先生がやってるわよね?」


校長がみんなに言った。


「ああっそうじゃった。実は鳥岩先生も武藤先生も明井田中学の方が立て込んでおっての。しばらくの間は戻ってこれんのじゃ。その間はワシが担当させてもらうからの。」


すると晴南が手を挙げて校長に言った。


「はい!!校長先生!!お願いがあります。」


校長が晴南に尋ねた。


「なんじゃ??水内さん??」


晴南が校長に言った。


「校長先生?今日は授業なしがいいです。」


校長が晴南に言った。


「うん?水内さんは授業は嫌なのかの?」


晴南が校長に言った。


「たるいからとっても嫌です。きょうから授業とかしんどすぎます!!」


校長が晴南に言った。


「それで授業をなしにしてほしいというのじゃな?」


晴南が校長に言った。


「はい!できれば明日も明後日も授業なしがいいです。」


すると麻衣子が晴南に言った。


「ねえ晴南?そんな事言ったって授業はなくならないわよ?」


晴南が麻衣子に言った。


「麻衣子!やさしい校長先生ならきっと授業をなしにしてくるわ!」


校長が申し訳なさそうに晴南に言った。


「残念じゃが授業をなしにはできんのじゃ。すまんのう水内さん。」


晴南が校長に言った。


「えー!!なんでですか??」


麻衣子が晴南に言った。


「なんでってそりゃそうでしょう。生徒が授業したくないです。て言って先生がはいいいよ。なんて言う訳ないでしょ。」


晴南が残念そうに言った。


「がっくし。」


校長が晴南に言った。


「すまんのう。」


晃太が校長に尋ねた。


「それじゃあ校長先生が国語の授業をしてくれるって事ですか?」


校長が晃太に言った。


「悪いんじゃが鳥岩先生と武藤先生の担当教科はワシでは教えられん。じゃから時間割通りの授業はしばらくできんのじゃ。」


晃太が校長に尋ねた。


「それじゃあどうするんですか?」


校長が晃太に言った。


「体育と美術の二教科だけで授業をしていこうと思っておる。」


晃太が校長に尋ねた。


「体育と美術だけですか???」


校長が晃太に言った。


「そうじゃ。他の教科は鳥岩先生と武藤先生が戻ってきてからとなるの。」


これを聞いた晴南は満面の笑みで喜んでいた。


「やったー!!!」


晴南が校長に言った。


「校長先生、それをもっとはやく言ってください。」


校長が言った。


「えっ??」


晴南が校長に言った。


「体育なら全然いいです!!」


校長が晴南に言った。


「よく分からんが水内さんが納得してくれて良かったわい。」


晴南が校長に言った。


「むしろもっと増やしてください!!!時間割の全部の授業を体育にしてください。」


校長が晴南に尋ねた。


「月曜の1時間目から金曜の6時間目まで全部体育の授業で本当にいいのかのう?」


晴南が校長に言った。


「もちろんいいです!!」


美咲が晴南に言った。


「ちょっと晴南!!いいわけないでしょ!!なんで朝から晩まで体育の授業を受けなきゃならないのよ!!」


晴南が美咲に言った。


「まあいいじゃない美咲。ほんの少し体育の授業が増えるだけでしょ。」


美咲が晴南に言った。


「週2時間の体育が週30時間になるのよ!!どこがほんの少しなのよ??」


晴南が美咲に言った。


「毎時間楽しい体育があるのよ。1日中体育の授業を堪能できるのよ?なんでそんな事を言うの?」


美咲が晴南に言った。


「体育が楽しいのは晴南と拓也君ぐらいでしょ!私は体育なんて大嫌いなの。全部の時間割を体育にするぐらいなら国語の方が座ってられる分まだましよ!!」


晴南が美咲に言った。


「国語はできないって言ってるでしょ??諦めて体育にしましょう??体育はいいわよ??」


美咲が晴南に言った。


「絶対に嫌よ!!体力がもたないわよ!!」


晴南が美咲に言った。


「1日たったの6時間体育をやるだけよ、ちょこっと運動するだけじゃない?」


美咲が晴南に言った。


「6時間のどこがちょこっとなのよ??そんな長時間、動き続けられる訳ないでしょ!!」


晴南が美咲に言った。


「それぐらいなら全然余裕でしょ??」


美咲が晴南に言った。


「余裕な訳ないでしょ!!私はそんなの絶対無理なの!!」


晴南が美咲に言った。


「私はみんなが有意義な時間を過ごせるように頑張ってるだけなのよ。」


美咲が晴南に言った。


「だから有意義な時間を過ごせるのは晴南と拓也君だけでしょ!!」


すると美咲が校長に尋ねた。


「校長先生?他に教えられる教科はないんですか?」


校長が美咲に言った。


「すまんのう内藤さん、他の教科も教えられない事はないんじゃが自信を持って教えられるのは体育と美術だけでな。美術の時間数はそれなりに消化できておるしのう。」


晴南が美咲に言った。


「これで分かったでしょう美咲?諦めて体育の授業を受け入れなさい?」


すると優斗が校長に言った。


「だったら道徳はどうですか?去年の10月に校長先生に道徳の授業してもらった事がありましたよね?」


校長が優斗に言った。


「そうじゃったのう、確かに道徳なら教えられるの。」


美咲が校長に言った。


「賛成、賛成、道徳にしましょうよ。道徳の方が体育より絶対にいいです!!!」


晴南が優斗に言った。


「ちょっと優斗??邪魔しないでよ。せっかく幸せの学校生活が始まろうとしてるのに!!」


美咲が晴南に言った。


「地獄の学校生活の間違いでしょ?」


晴南が美咲に言った。


「道徳の授業なんてダメよ!!体育をするの!!みすみす幸せの学校生活を逃してたまるもんですか。」


美咲が晴南に言った。


「ちょっと晴南、諦めてよ!!私は体育なんて嫌なのよ!!」


晴南が美咲に言った。


「絶対に諦めないわよ!!」


校長は困った様子でみんなに言った。


「ふーむどうしたもんかの??」


晃太が校長に言った。


「校長先生。そもそも体育、美術、道徳の三教科だけで時間割を全部埋めるのは無理がありませんか。」


校長が晃太に言った。


「そうじゃな、よしなら部活動の時間を増やそうかの。」


晃太が校長に尋ねた。


「どういう事ですか?」


校長が晃太に言った。


「1時間目に道徳か美術の授業をして2時間目に体育をやって、残りは部活動の時間にしようという事じゃ。」


晃太が校長に言った。


「そうですね、確かにその方がいいと思います。」


麻衣子が校長に尋ねた。


「でも授業時間に部活動やっちゃっていいんですか?」


校長が麻衣子に言った。


「全然構わんよ。」


校長が晴南に尋ねた。


「それでどうじゃろうか水内さん?」


晴南が校長に言った。


「部活動の時間が増えるって事ですよね。もちろんいいです。」


校長が美咲に尋ねた。


「内藤さんはどうじゃ??」


美咲がみんなに言った。


「うーん大丈夫かしら?部活動が全部運動系になったら同じ事でしょう?」


麻衣子が美咲に言った。


「大丈夫よ美咲。部活動の半分は文科系の活動をするって決めたでしょ。」


麻衣子が晴南に聞き返した。


「ねえ晴南??」


晴南が麻衣子に言った。


「うっ!!麻衣子覚えてたの?もう忘れてると思ってたのに。」


麻衣子が晴南に言った。


「そりゃ覚えてるって。それで晴南?ちゃんと守ってくれるのよね?」


晴南が麻衣子に言った。


「もう分かったわ。守ればいいんでしょ。」


これを聞いた美咲が校長に言った。


「なら分かりました。私もいいです。」


校長がみんなに言った。


「それじゃあ道徳の授業を始めるかのう。」


晴南達は道徳の授業を受けた。


そして2時間目に体育の授業を受けた。


その後は部活動の時間となった。


晴南達は校舎の2階にある部活動の教室へと移動していた。


晴南がみんなに言った。


「さあて今日は何の部活をしようかしら?」


七緒が晴南に言った。


「ねえまた帰宅部をやろうよ??」


晴南が七緒に尋ねた。


「また部活動せずに家に帰るつもりなの?」


七緒が晴南に言った。


「うん、帰りたい。」


晴南が七緒に言った。


「そんなのダメに決まってるでしょ!久しぶりの部活なんだから!!」


晃太が七緒に言った。


「それにまだ通常の授業時間内だからどのみち帰れないぞ。」


七緒が晴南に言った。


「そんなー。」


拓也がみんなに尋ねた。


「そういえば前回の部活は何をしたっけな?」


優斗が拓也に言った。


「前回は書道だね。その前は太陽の観測をしてその前は茶道をやったよ。」


晴南が嬉しそうに言った。


「なら水曜日までは運動系の部活動ができるわね。」


美咲が残念そうに言った。


「今日は運動系の部活動か、はあー。」


麻衣子が美咲に言った。


「ぼやかない、木曜からは文科系の活動ができるでしょ。」


美咲が麻衣子に言った。


「わかってるわ。」


晴南が美咲に言った。


「そうよ太陽のはんぺん観測とかとーってもつまらなかったんだから、今回は面白い事をやるわよ。」


晃太が晴南に言った。


「晴南??太陽のはんぺんじゃなくて黒点(こくてん)だからな。」


晴南が晃太に言った。


「もう細かいわね。どっちでも似たようなもんでしょ?」


晃太が晴南に言った。


「いや似てはないと思うんだが。」


拓也がみんなに言った。


「前回の部活から少し日が空いたな。前回が6月10日だったからおよそ2週間か。この2週間でいろんな事があったっな。」


麻衣子が拓也に言った。


「本当に濃密な2週間だったわね。」


麻衣子が優斗に尋ねた。


「そういえば優斗君?10日分の部活動レポートは??」


優斗が麻衣子に言った。


「さっき校長先生に提出してきたよ。」


麻衣子が優斗に尋ねた。


「部活動レポートって鳥岩先生に提出する約束じゃなかったっけ?」


優斗が麻衣子に言った。


「鳥岩先生はまだ学校に来れないから校長先生でいいんじゃないかな。」


麻衣子が優斗に言った。


「それもそうね。」


すると美咲がみんなに言った。


「ねえ??まだ午前11時よ。ここから部活終了時間の午後6時まで部活動する気なの??」


拓也が美咲に言った。


「7時間は結構長いな。」


晴南がみんなに言った。


「ねえせっかく時間もあるんだしどこかに行かない?」


麻衣子が晴南に言った。


「外出か。そういえば部活動で外出できるようになってたわね。でもでこに行くの?」


晴南が麻衣子に言った。


「うーん??そうね、せっかく初の外出なんだしどこか遠くに行きたいわね。」


美咲が晴南に言った。


「遠くっていうと明井田とか?」


晃太が美咲に言った。


「先週いっぱい行ったから、まだ行かなくてもいいんじゃないか。近場の方がいいと思うぞ。」


晴南がみんなに言った。


「それじゃあ九木礼団地に肝試しにでも行く??」


美咲が晴南に言った。


「ちょっと肝試しなんて勘弁してよ。」


麻衣子が晴南に言った。


「そうね肝試しは私も気乗りしないかな。」


晴南がみんなに言った。


「だったら潜りましょうよ?」


美咲が晴南に言った。


「えっ??潜るの??服汚れるから嫌なんだけど?前回土まみれで家に帰ってお母さんにすごく怒られたんだから!!」


晴南が美咲に言った。


「大丈夫よ、ちゃんと考えてあるわ。」





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