第5話

 合図と同時に悟が中央に走り出した。


「悟が来るぞ、作戦開始だ!!」


「作戦?」


 道隆の声で3人が魔法書を取り出し千尋と春樹が左右に広がるように動き出し、千尋が魔法書を大きな声で詠唱をし始めた。


「魔法書か、一体どんなのを使うのかわからないな、一彩、魔法書を唱えてる千尋の動きを封じてくれ俺は道隆を叩く!」


「おう!」


 一彩は千尋の方に向かい詠唱を阻止しようとした。


 その間に春樹が美希に近づきながら気づかれない程度に魔法の詠唱を終えようとしていた。


「悟!春樹の方も魔法書の詠唱をしてる!」


 それに気づいた美希は悟に大きな声で叫ぶんだ、


 その瞬間地面が湿りだしてぬかるみ始めた。


「うおっ」


 一彩が足を滑らせて転んだ。


「一彩大丈夫か!」


 道隆から目を離し一彩の方に近づいた時、千尋の詠唱も終え次の瞬間、


 地面から岩が飛び出してきた。


「なんだこれは!」


 岩が沢山でてきてその影に隠れたのか相手チームを見失ってしまい悟と一彩の二人と美希で二つに分断された。



 模擬戦開始前、道隆達は相手チームが悟達だと知り、ある一つの作戦考えた。


「道隆君、相手チームは悟達になったねバルター先生との模擬戦で初めて褒められたチームどつやって戦うの?」


「作戦としては変わらないけど倒し方を変えるよ、水をぬからせてから岩で姿を隠す、三人が僕達を探す間に1人ずつになった所を3人で各個撃破これで行く」


 道隆達の購入した道具は、水の魔法書と土の魔法書、そしてブラフ用の何も書かれてない魔法書であった。


「もし、固まった時はどうする?」


 春樹が道隆の作戦で考えられる危険性を意見した。


「その時は、最初の所に集まって標的を決めたのち二手に別れてから相手誘導させる、その後に標的になったターゲットの所に集まって撃破に持っていく、今回の勝敗要因は全滅、相手の戦闘不能条件は木剣で1発あてることだがら相手が相手だけに複数体単体に持っていくことは絶対だ」


「わかった」




「二人と一人かまずは美希を倒そう」


 集まった3人は手筈通り一人になった標的を狙うことにした。


 美希は最初のところから動いていなかった。


「悟、一彩どこにいるの」


 と大きな声を出している美希を囲むように岩陰に隠れていた。


「よし、いくぞ!」


 と道隆は合図を出し3人で襲いかかり木剣を美希に当てることに成功した。


「美希、戦闘不能だ模擬場から退場!」


 バルターの声が聞こえた、悟と一彩は美希が声が聞こえた瞬間にやられた、二人はこれを踏まえ彼等はこの岩に隠れて不意打ちを狙ってくると考えた。


「美希が倒されたか、やはり美希も自分達となるべく近づかせて置いた方がよかったか……」


 悟が自分の組んだ布陣が甘かったことを感じた。


「まぁ、今回は模擬戦だ悟、死ぬわけじゃない」


「そうだけど完封したかったよ」


 話している2人に既に近づいてた3人は次のやはり手筈通りに分断を試みた。


 道隆と千尋の2人と春樹で別れ左右に魔法書の詠唱を始めた。


「詠唱?どこから」


 と悟が左右に首を振ると


「両サイドから聞こえるぞ!」


 一彩が両方から聞こえることを察知した。


「魔法書は1回しか使えないはずってことは、道隆の方か」


 一彩が、前の模擬戦を見ていたので魔法書が1回しか使えない事を知っていた。


「いや、1個隠していたかもしれない、急いで撃破するまたこちらもが不利になることを避けなければ」


 悟はそれを言い2人は分かれ移動し始めた。


 悟は突っ走ったものの相手チームの姿はなかった、しかもここに来たとたん、詠唱も聞こえなくなっていた。


「しまった分断された、なるべく一彩とは離れたくなかったんだが魔法書の詠唱がどんな物なのか分からず焦ってしまったな」


 悟は戦闘中で起きたことを把握しながら戦略を立てようとしてたいがそれがなかなか行かず常に不利な状態に立たされていた。


「一彩は戦闘力だけなら俺より上だったからなるべく離れたくなかったけど仕方ないこうなったら一人でやるしかないな」


 悟が独り言を言っている傍に、実はこちらに息を潜めて3人が岩陰に隠れていた。


「よし行くぞ!」


「しまった……こっちに来てたのか!!」


 道隆の合図で3人は悟に目掛け木剣を振った瞬間、


「くっ!!」


 悟はポケットから何かを地面に叩きつけた。


 その瞬間、閃光と破裂音が発せられると瞬時に悟は木剣を三人に当てた。


「道隆、千尋、春樹戦闘不能、勝者悟、一彩、美希」


 勝利者宣言が行われていた。


「何が起きて俺達は負けたんだ」


 とまだ目を上手く開けられず耳が遠く感じていた。


 遡ること、模擬戦当日の朝


 美希と一彩は悟から模擬場の所に呼ばれていた。


「おはよう悟」


「悟おはよう」


「おはよう2人とも」


 軽い挨拶を交わし一彩が朝に呼ばれた理由を聞いた。


「この時間に呼んで何かしたのか悟」


「今日行われる、模擬戦で使う道具を説明するために呼んだんだ、これを見てくれ」


 紙で巻かれその上に小さな魔法石が置かれていた。


「これは何、悟?」


 と疑問に思った美希が問いかけた。


「閃光玉だよ」


「はっ?」


「えっ?」


 2人が何てもの作ってるんだって言う顔をしている。


「商店街で買った、静電気を流す石と黒い粉これは火薬だねそれに燃やすとマグネシウムを混ぜたものを紙で巻いてるものだね上手くなるように時間が掛かって今になったけど使用方法と合図を教える。」


「マグネシウム?そんなのあったか?」


 疑問に思った一彩に対して悟は答えた。


「燃えたら光る石がそれだね」


 と最初に買ったものがそれだったのかを思いだした一彩


「なるほど、それでどうやって使うんだ?」


 悟は一彩と美希に閃光玉の使用方法を教えた。


「この石は強い衝撃を与えると静電気が走るようになってる、それで火薬とマグネシウムが混ぜられた粉末に引火するように出来ている、簡単に言うととりあえず衝撃与えたら直ぐに耳と目を閉じることだね。」


「耳も?」


「そうだね、火薬を使っている以上爆発音が大きいから至近距離で使うとその音で気分が悪くなるから直ぐに耳を塞ぐんだ。」


 ある程度の使用方法を教えた悟達は、今日の模擬戦に挑むことになった。


 そして、悟が3人を戦闘不能する前。


「よし行くぞ!」


 現れた3人を視認した瞬間悟は、ポケットに入れていた閃光玉を地面に叩きつけた。


 その瞬間、激しい光と音に見舞われた悟を瞬く間に3人はその場で倒れ込んだ。


「すごい音だなここまで聞こえる」


 一彩は模擬場の反対側でもその音が聞こえ、すごい威力だと感心をしてしまった。


「閃光玉ってああやって使うんだ!」


 よく使い方が分かってなかった美希は模擬場の外で悟の戦い方を見ていた。


「さてと、戦略では負けたけど戦術でひっくり返せてよかったよ」


 まだ、立ち直れてない3人を木剣で当て戦闘が終了した。


 戦闘が終了した後バルターに集められた2人は


「うっうぅ」


 まだ立ち直れてない3人を見たバルターは先に悟達の戦い方を評価した。


「最初は相手の道具に翻弄されていて、不利な状況になったがまさかフラッシュの魔法を詠唱しているとは、よく予想が出来たな悟」


 この魔法世界での道具は基本は、魔法書と魔法石の力で構成されている、科学の方はほとんどいっていい程成長はしてない。


「いえ、魔法ではありません、これを使ってあの状況を生み出しました」


 と言いながら悟は小さな紙の包を出した。


「こんな、小さい物であの状況を」


「はい、閃光玉といいます、火薬と燃やすと光る石を混ぜ込みそれを紙に包、発火剤として衝撃を与えることで静電気を引き起こす魔法石で作りました」


「なるほど、これはいいものだな1個くれないか、これがあれば魔物に襲われた時フラッシュの魔法を使わなくても、これを使うだけで飛躍的に生存率を上げれる」


「沢山あるので、1個とは言わずに」


 その瞬間、模擬場に入るための扉が1人の兵士らしき人物に遮られた。


「バルター騎士団長、魔王の因子の人間が城からでて街を襲い始めています」

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