砂の惑星オーコッツ

犬時保志

第1話 オーコッツ星って?

商店街を通行中、スマホに夢中の女子高校生を避けた拍子に、穴も無いのに落ちました。


落下中意識はあった、頭にショックが有り、頭痛が起こったのも、突然、柔らかい光に満ちた、広々としたロビーに、こうして立って居る事も、しっかり認識してます。





まずは深呼吸して、餅突け慌てるな!!

持ち物は、財布に、さっき買ったばかりのメンソールシガレットDOUBLEHAPPINESS3箱とライター、携帯灰皿、畳んだレジ袋3枚。

タバコはハイライトメンソールが高価に成りすぎ、禁煙しようか迷った末、ダブルハピネス350円を見つけ、吸い続ける事になりました。

意思が弱い?放っといて!


(注、2021年10月にまた値上げしやがって、現在470円)


「こんな事ならタバコもっと買っておけば良かった」

後は100均の小さな十徳ナイフ、名刺入れと家の鍵だけ。

財布の中には1万8千円(内500円硬貨4枚)と677円、歩いて5分の商店街での、食料品の買い出し中です、そんなに金を持ってるはずが無い。



辺りを見回し、ノースモーキングの標示無し、それに無人だ!

「ヨッシ!」

タバコをくわえて、火を点ける。

携帯灰皿の口を拡げ、一息煙を肺まで飲み込む。

DOUBLEHAPPINESS独特の、強いハッカが心地好く染み込みます。

「ふ~~っ」

「重いから最後に買おうなんて思わず、ペットボトル位買って置けば良かった、喉が渇いたな」



はめ殺しの大きな窓から、外を眺める余裕が持てました。




喫煙しながら眺めて居ると、サン○ーバード2号みたいな、ずんぐりとした飛行機が、ストンと着陸した所が目に入ります。

「この建物、防音性が優れてる?ジェット音が無かったような?」


見ている内にハッチが開き、タラップが延び、護衛っぽい黒服の男が2人かけ降りて、辺りを警戒する中、前後に黒服の護衛に挟まれ、腰までのロングヘアー金髪の女性が降りて来ます。

夜目遠目傘の内じゃ無いが、遠くに見える女性は、スターシャかメーテルを彷彿させる超絶美女です。



タバコを吸い終わったころ、5人の護衛に護られた美女がやって来ました。



「貴様!何者!!ここは王室専用」

「即刻立ち去れ!!」

二人が叫び、三人が飛び掛かって来ます。


言葉が解る事にひと安心ですが、こんな事になるとは思いもよらず、美女しか見て居なかった私は、逃げる事も出来ず、固まってしまいました。

三人の護衛は、私を取り押さえようと、襲い掛かります。



170センチの私に対し、男達は2メートル以上の大男!!

見上げる大男だが、細い!ヒョロヒョロ体型。

でも、私はガリガリ、簡単に弾き飛ばされ、組み敷かれると、思われました。



しかし、結果は。

私の顔面を殴った男は、右手を押さえて、うずくまって居ます。

私を吹き飛ばそうと、体当りした男は、弾き飛んで行きました。

この頃になって鈍い私でも、やっと庇い手、右手を前に出して庇う真似事が出来ましたが、運悪く、3人目の胸を押すような動作に成り、最後の男は、ふわり浮き上がり、落ちた後はピクリとも動かなくなりました。



「お辞めなさい!」

優しい声に振り向くと、美女が残りの2人に対して、声を掛けたようです。

美女が進み出て来ます。

遠目の勘違いで無く、近くで見ても、スレンダーな絶世の美女です。



「私は、マリーペキ-オーコッツ、護衛が無礼を働き、申し訳有りません」

見たことの無い、絶世の美女に話し掛けられて、カラカラに渇いた喉からは、言葉が直ぐに出ません。

「いえ、気にしないで下さい」とやっとの思いで、答えられました。


「貴方は、役付き者ですか?」


(役付き者?)

「·····あっ!!はい課長です」

私は、中小企業だが、品質保証課の課長をしてる。

「課長?ですか?爵位で言うと伯爵位ですか?」

(爵位?·····え~と、社長が王様として、主任が騎士爵とすると、男爵は係長、子爵は課長代理だな、管理職である私課長は伯爵と言える、かな?)


「はい、伯爵です」と言って良かったのか?

(子供の頃、婆ちゃんが言ってた、堀川家は元上級武士の家系と。騎士爵みたいに一代限りじゃ無い、身分を継承出来るって事は、当時は男爵以上の身分?明治政府が正式に認めた元士族、廃止されて居ないって事は·····戦後廃止されたかな?)



「失礼しました伯爵閣下」

思考に沈んで居ると、ペキが話し掛けて来ました。

ペキを見ると。

フワリと一礼して、右手の人指し指の関節をポキリと鳴らし、右に首をかしげてポキッと首を鳴らす。

(上級貴族の雅やかな、関節話法か、「貴方は誰ですか?」と聴こえる)

どう返すかは何故か解る、左手親指鳴ら無い、股関節も鳴らせ無い。


代わりに変な所の関節が鳴ったような·····。

ペキは顔を赤くして、大きな瞳を見開いています。

「私は、別の世界地球から、15分前にこの世界に紛れ込んだ者、聴くことは出来ますが、話せません」



ペキは優雅に、頭を後ろにそらし、右膝と、関節話法を続けます。

言ってる事は「音声話法で結構ですよ、どうぞ続けて下さい」


「名前は堀川 迅、家名が堀川、名が迅です」



「挨拶が終りました、此れからは音声話法で行きます」

「はい、助かります」

「堀川様は、異界の戦士辺境伯ですか?頑丈なお身体ですね」

「いえ?平凡な事務員でした」




話が微妙に食い違う、ペキに詳しく聞くと。

オーコッツは巨大な惑星で、人蹟未踏の所の方が多いそうで、コーコッツ星とツーコッツ星二つの衛星が、オーコッツを回って居るそう。



オーコッツが政治・経済を担当し、コーコッツ星は農業工業を担当、ツーコッツ星は軍人の星だそうです。

私の強さは、ツーコッツの軍人以上の強さだそうで、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、私の容姿は、この世の人と思えないそうで、オーコッツ女性の誰より美しいそうです。

卓越した私の容姿が、異世界からの訪問者の証明だとか?

因に、メーテル体型のマリーペキはデブで、取り立てて美形では無いそうです。



係長は、無能で生意気な社長の甥っ子、私は尻拭いで胃に穴があく毎日で、骨皮のガリガリになるのは当然の結果でした。

ひ弱な私が強いので無く、オーコッツ人が弱過ぎる。

骨密度、スカスカじゃないの?



救護班がやって来て、簡単な問診の後、負傷3名を担架で連れて行きました。

ペキは、残りの護衛2人に国王への報告に行くよう、指示しています。

「王女様、この男が怪しいのは事実、護衛がお側を離れる訳には·····」

「護衛は二人以上が決まりです!!」

「貴方達、今日限り護衛任務を解任します!!!」

「オーコッツ城下町に危険は無く、何かあっても堀川伯爵様が、貴方達より完璧に私を護ってくださいます!!!」



護衛達に、ペキは余程腹を立てたのか、辛辣な言葉が出て来ます。

「(お父様がとやかく言い出す前に、街をご案内しますわ)」

ペキは小声で私に言いました。

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