第16話 その名の由来
私は、ロクス様の兄であるラウド様とその妻であるファルティ様と会っていた。
「さて、色々と話したいことはあるが、何から話せばいいものか……」
対面して座りながら、ラウド様はそのように呟いた。
どうやら、何から話すか悩んでいるようだ。
「それなら、まずは私達のことを話しましょう。セレンティナ様は、私達のことをほとんど知らないのだから、知ってもらうことから始めてもらった方がいいと思うの」
「なるほど、それはいい案だ。ならば、まずは私達のことから話させてもらうか」
そんなラウド様に、ファルティ様が助言した。
とりあえず、二人のことを教えてもらえるようだ。
なんというか、この一瞬だけで、夫婦の仲の良さがわかった。お互いに笑い合いながら、このような相談をしたのだから、それは間違いないだろう。
「実は、私にとって、君はとても関わりが深い人物なのだ。是非、会ってみたいと思っていたのだよ」
「え? そうなのですか?」
「ああ、最も、正確には君の父上と関わりが深いと言った方がいいだろうか」
「私の父とですか?」
ラウド様が話してきたのは、そのようなことだった。
ラウド様は、私の父と関わりが深いようだ。一体、どういうことなのだろうか。
「私の父上は、君の父上とかなり仲が良かった。仲が良すぎて、私に君の父上と似たような名前をつけたのだ」
「似たような名前……確かに、似ていますね」
「君の父上は、私にとってルーツなのだよ。そういう面で、私は君と関わりが深いのだ」
どうやら、ラウド様の名前は、私の父の名前にあやかってつけられたらしい。
実の弟にあやかって名前をつけるとは、ログド様は中々すごいことをしていたようだ。
そういう事情があるなら、私とラウド様は関わりが深いといえるだろう。実の娘と、名前を受け継いだ者。そのような関係性なのだ。
「ちなみに、僕の名前は父上の名前にあやかってつけられたそうです。普通は、逆だと思うのですが、何故かそうなっているのです」
「それだけ、父上が君の父上を愛していたということなのかもしれないな……」
ロクス様の名前は、ログド様にあやかってつけられているらしい。
確かに、それは何か違和感のある話だ。長男に弟、次男に自分。そういう面からも、私の父はログド様から愛されていたことがわかる。
というか、少し愛し過ぎではないだろうか。流石に、少し引いてしまいそうだ。
「君の父上は、私がこの名前になると聞いて、大いに動揺したらしい。兄が自分の名前に、あやかった名前をつけようというのだ。その驚きは、相当のものだっただろうな」
「それは……多分、そうでしょうね」
私の父も、その事実には大いに動揺したようである。
それは、当然だろう。突然、長男に自分にあやかった名前をつけられると言われれば、誰だってそうなるはずだ。
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