第14話 父親の面影
私は、ヴァンデイン家の当主であるログド様と対面していた。
私も緊張していたが、ログド様も緊張していたらしい。そのことで、私は少しだけ安心できて、緊張が薄まったのである。
「さて、改めて、歓迎しよう」
「あ、ありがとうございます」
私とロクス様は、ログド様と向かい合って座っていた。
とりあえず、話すことになったのだ。
「うむ……」
「ど、どうかしましたか?」
そこで、ログド様は私の顔をじっと見つめてきた。
そのことに、私は少し緊張してしまう。
「いや、すまない。君が、ラグドに似ていると思って、見つめてしまったのだ」
「ラグド様……私の父ですか?」
「ああ、君にはあいつの面影が確かにある。間違いなく、君はラグドの娘だ」
どうやら、ログド様は私に弟のラグド様の面影を見ていたようだ。
そんなに私はラグド様と似ているのだろうか。私は、父親の顔を知らないのでよくわからない。
それに、なんというか、この言葉は喜んでいいのかわからない言葉だった。父親と似ていると言われるのは、喜ぶべきことなのだろうか。
「君は、ラグドのことを知らないのだね?」
「え?」
「いや、君があいつのことをどこまで知っているのか、確認しておきたくてね」
そこで、ログド様はそのようなことを聞いてきた。
私が、父親のことをどこまで知っているか、聞いておきたいようだ。
「お母さんから、優しい人だとは聞いたことがありますけど、それ以外はよく知りません」
「そうか……」
私は、父親のことはよく知らなかった。
お母さんから、優しい人だったということくらいしか聞いたことがないのだ。
そのことに、ログド様は少し悲しそうな表情を見せた。それは、何に対する悲しみなのだろうか。
「君のお母さんは、確か……」
「はい。一昨年に亡くなりました」
「残念だ……会っておきたかったものだ」
ログドさまは、さらにお母さんのことを聞いてきた。
私のお母さんは、一昨年に亡くなっている。女手一つで私を育てたためか、体を壊してしまい、亡くなってしまったのである。
もっと早く、私が公爵家の人間だとわかっていれば、そのようなことにはならなかったかもしれない。
だが、きっとお母さんはその運命を受け入れていたのだろう。お母さんは、私が公爵家の人間であることを当然わかっていたはずだ。それでも、助けを求めなかったのだから、そういうことなのだろう。
「……さて、君はもう公爵家の人間だ。これからも、よろしく頼むよ」
「はい……」
ログド様が言葉とともに差し出してきた手を、私は握った。
その手には、力が込められている。その力の大きさが、ログド様の思いの大きさなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます