第3話 突然の訪問者

 私は、公爵家の次男であるロクス・ヴァンデイン様と対面していた。

 よくわからないが、私に用があるらしいのだ。


「えっと、今日は一体どのようなご用件でしょうか……?」

「ええ、実はあなたに話があるのです」


 私の質問に、ロクス様はそのよう言ってきた。

 どうやら、私に何か話があるようだ。

 貴族からこういうことを言われると、大抵面倒なことを頼まれる。今日も、そういう話なのだろうか。

 厄介なことに、相手は公爵家の人間である。すごい権力を持っているので、無下にすることもできないだろう。

 いつも思うのだが、貴族が個人的に何かを頼んでくるのはやめて欲しい。そういう権力の濫用は、とても迷惑である。


「何か、私に頼みごとですか?」

「いえ、そうではありません。なんというか……事実を伝えに来たのです」

「事実を伝えに来た?」


 しかし、私の予想は外れていた。

 どうやら、ロクス様は私に何かを頼みに来た訳ではないようだ。

 だが、事実を伝えに来たというのはどういうことだろうか。その言葉だけでは、何を言いに来たのかまったくわからない。


「ええ、これはあなたにとって、かなり衝撃的なことだと思います。だから、心して聞いてもらえますか?」

「は、はい……」


 ロクス様の言葉に、私は緊張してきた。

 衝撃的なことを言われるという前置きは、とても恐ろしいものである。一体、私は何を言われるのだろうか。


「僕の父親であるログド・ヴァンデインには、兄弟がいます。その中のラグド・ヴァンデインは若くして亡くなり、子を残すこともなかったとされていました」

「え? あ、はい?」

「しかし、近年よく調べてみると、彼は子供を残していたようなのです」

「え?」


 ロクス様がそこまで言って、私は驚いていた。

 ここまでの発言の流れから、その子供が誰なのかはなんとなく予想できる。

 なぜなら、このような話を私にする時点で、それが誰かは決まっているようなものだ。


「まさか……」

「ええ、あなたはラグド・ヴァンデインの娘なのです」

「そんな……」


 ロクス様の言葉に、私は固まってしまった。

 予想はしていたが、実際に言われると、驚いてしまうのだ。

 私が、ラグド・ヴァンデイン様の娘。その事実は、私を大いに動揺させていた。


「突然、このようなことを言われて、驚くのも無理はないでしょう。しかし、これは事実なのです」

「そうなのですか?」

「様々な証言から、それは裏付けられているのです」


 このことは、本当のことであるらしい。

 私は、公爵家の人間だったのだ。

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