第7話 駆け落ち騒動

何時の時代でもそうなのかもしれないが、男女(オスとメス)の機微は他人からは計り知れない事情がある様で、体の一部が崩壊しかかっているボゾン生命体のカップルが病院を抜け出してしまっていた。

「まあ、本人たちの自由意志だから、わしらにどうこうする権利は無いのじゃが、あやつらが完全崩壊するとなると一寸厄介なのじゃよ。一人なら、大丈夫じゃが、二人が同時に

崩壊した場合、ボゾン共鳴を引き起こす可能性が有るんじゃ。」

「ボゾン共鳴?」

「うむ、下手な所で、ボゾン共鳴が起こると、新しい宇宙が誕生してしまうのじゃ。」

「新しい宇宙?」

「そうじゃ、ボゾンが無限共鳴すると、空間を無限に広げてしまうのじゃ、つまり、インフレーションが始まってしまうからの。」

「ええ、じゃーこの世界(統合次元体)で起こったら!」

「まあ、この世界なら、抑制システムが働き食い止められるがのう、他の所では、宇宙の中にもう一つの宇宙ができてしまうか、元の宇宙を丸呑みにしてしまうかもしれないのう。」

「宇宙を丸吞みって、元の宇宙が書き換えられてしまうと言う事ですか?」

「うむ、まーそんな所じゃのう。」

僕が知っている、ボゾン生命体は兄と一緒に働いているサルベージャーのアイだが、この病院にきて、他のボゾン生命体が居る事を知ったのだが、

「もともと、ボゾン生命体は、めったにペアーを組まんのじゃが、たまたま波長でも合ってしまったのか、あやつらは、どうも時々他の場所で密会をしていたらしいのう。」

「密会?」

「あやつらの密会は少々激しくてのう。特別な空間を作り出して燃え上がるんじゃ。それは一兆℃にもなるので、こんな所でやられたら大迷惑なのじゃが、それを知っておるから

どこか、迷惑のかからぬ所へでも行っておったんじゃろうが。次元の硲あたりかのう。」

「駆け落ち先もそんな所ですかね?」

「ふむ、そうであればまあ一安心なんじゃが、もしかしたら、故郷に帰ったかもしれないのが気がかりじゃのう。」

「それでは、僕の兄の仲間のボゾン生命体に聞いてみましょうか?たしか、老師もブラックイーグルの騒動の時にお会いしてると思いますが。」

「ほー、確かアイとか言った生命体かな?」

「ええ、あの時は、アバターの体でしたが。」

老師はカルテの様な、書類を映し出すと

「ボゾン生命体の故郷は、天の川銀河の硬直円盤の中じゃがな、まあ、色々ないきさつがあって、今は出入り禁止になっておるでな。今回の様な事を心配してじゃろうが。」

「ええ、銀河の中心で大爆発でも起こしたら大変な事になりますよ。」

「大変で済めばいいが、我々の母宇宙が無くなってしまうかもしれんのう。」と例によって事も無さげに喋る老師だが、ぼくはそれを聞いて慌てて兄に連絡を入れた。

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