第2話 老師はなにげに凄かった

ソールAIが作り出す亜空間に入った僕は、執務室の様なところで、一向に自分の体に元らない体の主と対面していた。

「娘と合わせてくれ。」

「娘さん?」といって、その情報を伝えてくれたが、本人はインセクター種のムカデであるから、当然娘さんもそうなのだろうと思いながら、その情報にアクセスすると

「ジュガさん!」

「しってるのか?」

「はい、兄の恋人ですけど。」

「ほうー、あいつもそんな年になったか。たしか、200歳位か。」

長々と、娘さんの話をするムカデ長老を気の毒に思いながらも

「ともかく、連絡は取ってみますから、その先の事を考えておいてください。5000年もの量子情報を無駄にしてしまうのはとっても惜しいことだし、娘さんにあげれば遺産として引き継がれますので。」

ちょっと神妙になった、長老を残して、亜空間を出たぼくは、まず、兄と連絡を取った。兄達は、ミッション中らしくアクセスが制限されていたが、暫く待つと兄から連絡が入り状況を説明して協力してくれるように頼んでみた。

「今は、作戦行動中なんで、ひと段落したら、ジュガと相談するから。」との返事だったので、状況説明のために、老師の所に行くと

「ほー、呼び寄せるのも、わるいかのう。なんなら出向いても良いのじゃがのう。」と予想に反した返事が返ってきたので

「僕は、戦闘訓練は受けていませんが!」

「まー。危ない所は避けて行けば大丈夫じゃろう。わしも、昔はサルベージャーをやっておってのう。その頃は結構派手に活躍していたもんじゃ、次元戦争の調停に行った事も有るんじゃが、あれは、なかなかキツカッタわい。」老師の意外な経歴にビックリする僕を

「ついでだから、シップの整備でもしておくかのう。」といって、地下室に行くと

「わしが、現役を引退する時にせしめたもんじゃ。ちょっと古いがまだまだ使えるしろものじゃぞ。」そう言うと、老師は患者のリストを見ていた。

「ここには、結構サルベージャーをやっていた者もおるでのう、体はボロボロだが、まだまだ気骨はある連中じゃな。いざとなれば少し手助けをお願いするとするかのう。」と言って

ソウルAIから、引き出された、魂の一部がシップに移植されると、ナビゲーターや航路が計算され始めていた。そんな準備をしている最中に、兄から連絡が入り

「ジュガの了承は貰ったが、そちらに出向くのは当分ムリそうだ。」との内容で、この結果が分かっていたかの様な老師が

「ほほー、予想通りじゃのう。」と言っていた。

ピコ(医療AI)と何やらコンタクトしていた老師が戻ってくると、

「さて出かけるとするかの。」と言いながら、

「戦闘モードのコスチュームがいまいち良いのが見つからんのう。テラ種の二足歩行型の英雄と言うのは大体パターンが決まっておっての、スーパー××かウルトラ××、しっくり来るのがなかなか無いじゃよ。まあ、しょうがないのう。」と言って

「これは、現役当時のコスチュームを少し改良したものじゃが。」

それは、今でも戦闘用アバターの基本モデルとなっているコスチュームだった。

「おぬしも、ねんのため、これに変身しておいてくれんかのう。それだけで、大分、防御力も戦闘力も上がるでのう。」

「僕、本当に戦闘訓練は受けていないんですけど。」

「うむ、通常の戦闘なら、コスチュームのAIが対応してくれるじゃろうから、大丈夫じゃよ。本当に危ない時は緊急転送で逃げれば良いのじゃよ。」事も無さげに言う老師に不安を感じながら僕は、コスチュームを装備した。

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