女性的な男性らしさ

 月命の話。


 彼の髪は腰の長さまである、綺麗なストレート。ニコニコの笑みは優しく、生徒たちに振りまかれる。子供たちが笑うのならば、女装もこなす。またそれが似合っているのだから、驚きである。


 しかし、彼は男らしさに恋い焦がれているのである。双子のお兄さんにない物ねだりで近づきたくて仕方ないのだが、


 髪を短く切っても、月命の個性である以上、一週間ほどで元の長さに強制的に戻ってしまう。


 ピンクのウサギのぬいぐるみを抱いて眠るのが好き。


 シャンプーとリンスは専門店で調合してもらったこだわりの品を使っている。


 女装をして、見えてもいいパンツを履くために、レースのパンツをオーダーメイドするほどのこだわり。


 それでも、月命は男らしくなりたいと言うのだ。


 そんな彼に、私はこう言った。


「月さんの男らしさは女性的なのが男性的なんです。個性なんです」


 と。


 彼らしく生きてほしい、妻の切なる願いだ。というか、三百億年も生きている彼の人生では、昔、女性的なのが男性的だった時代があったのかもしれない。これだけ長ければ、ありえない話ではない。


 しかし、それからというもの、月命は男らしくなりたいと言わなくなった。自分を受け入れられたのかな?


 2021年1月5日、火曜日

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