第10話

「配信するにあたって自己紹介をしましょう。私こと冥土の本名は雷善らいぜん 芽衣めいです。」


冥土さんもとい芽衣さんの名字にバウヒュッテは聞き覚えがあった。


「えっと確か雷善ってANDの日本支店の総取締役の人の名前じゃなかったっけ?」


AND、元はネットインはインしてるというCMで有名だったCPUメーカーの子会社で今は独立して従来のCPU構造とは異なる製造方法を用いたことでクリエイターに愛されるCPUメーカーに発展した企業だ。


「そうですよ。だから私が最新ゲーム機を持ってこれるんですよ」

「国内家庭向けゲーム機メーカーのCPUシェアの全てを誇る天下のANDだからね。持ってないと逆に示しが付かない気もするけど冥土さんがゲーマーなのはもしかして親の影響もあって?」

「そうですよ。うちのパパもゲーム好きで今回出た最新ゲームの一個前のPX4のロジホットのレースゲーム専用のハンドルコントローラーに別売りの椅子とギアまで全部自腹で揃えちゃってるんですよ」


ハンドルコントローラー通称ハンコンで親しまれる自宅でレースゲームを体感できるように設計された特殊なコントローラーだ。特にPX4の独占タイトルのレースゲームには㍶に補助をしてもらうことでクラッチ操作ありきのギア操作も可能にした。ゲームセンターのレースゲームを超えた現実に限りなく近い操作は警察も18歳未満が車を無許可で運転する原因にならないか警告を鳴らしたほどだという。


「それは凄いね。僕も車の免許はアメリカで取ったけどハンコンまで買いたいとは思わなかったよ」

「うちで配信してくれればいくらでも貸しますよ」

「ははは、考えておくよ」


ちょっとスライムからの攻撃が出されたのは言わないでおく。


「めいちゃん私の自己紹介もさせてよ」

「ごめん、しーちゃん」

「もうめーちゃんはバウヒュッテさんの話になると止まらなくなるんだから」


死辻さんがこちらを向くと同時に冥土さんがこちらに向かってウインクしてきた。その姿からなんとなくだが言いたいことはわかった。


「コホン、改めして死辻ことつつじ 静葉しずはと申します。めいちゃんとは幼馴染です」

「うん二人ともよろしく、でも聞きたいんだけどオフ会はともかく配信までやろうってなんでなったの?二人とも見たところ大学生くらいだし不労所得に入っているだろうからネット友達には親の許可とかが有りそうなものだけど?」

「スライム師さんについては芽衣の実家の企業つながりでアメリカでの活躍のことを聞いていたんですよ」


それはつまりバウヒュッテとしての本名を知っているということだ。

思わず目を見開いてしまったがそういえばと思い出す。


「パソコン関係はANDさんに頼りっぱなしだったからね。それで横から垂れ流しに成っちゃたのかな?」

「実はこれタブーっちゃタブーなんですけどね。製品型番とシリアルナンバーから特定しちゃいました。」

「まあ、僕がサブで使ってるパソコンはアメリカに居た当時のままだしね。OSもアメリカ版にしてあるから特定されるのも当然だよね」


メーカーが調べてしまえばオンラインなら特定されてしまう可能性が高いのがインターネットの怖いところでもある。


「まあいいよ。じゃあ知ってるなら僕の自己紹介もするね。僕はバウヒュッテ、一応自然科学の博士号をもってるよ」


負けを認めたようにバウヒュッテは自分のことを明かすのだった。

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