第49話 領地改革3

「えっ?赤ちゃん?」

「領主様って、赤ちゃん?」

「いや!噂にしか聞いてないが、唯一魔法とかが使える、森人エルフでしょう!」

「いやいや!噂なら、儂も聞いた!小人族じゃろう」


「領地改革って、何をやってくれる?暮らし良くなるのか?」


 飲み食いを再開した領民が、こそこそ話をしています。


「サヨ!お酒見に行こう!!」

「オサケ?」

「飲むとフワフワ気持ち良くなる、


 サヨの肩に乗り移動します。

「あ、ボクデン!手配ありがとう!」

「アネエサ様!こちらが酒造所の親方です!」


「親方!無理を言ってすまぬ!」

「いえいえ!大量注文有り難う御座います!領主様」

「少し酌んでもらえるか?」

「へい!!ただいま」

 酒造所の若い衆が、元気の良い返事と共に、酒の入ったカップを差し出してくれました。


 サヨが受け取り、私に差し出します。


 受け取ったカップ内には、少し泡立ったお酒が入っています。

 少量口に含みます。

 少しの酸味、気の抜けた生温い薄味ビール?

「あっ、麦の常温発酵酒、エール?かな?」

「アルコール度数2~3%って所か、サヨも飲んでご覧!」


 サヨもカップを受け取り、一気に飲み干しました。

「どう?」

「アネエサ様が、お菓子と一緒に飲ませてくれた、ジュースの方が良い」

 私もそう思うよ

 サヨにだけ聞き取れる小声で、耳打ちしました。


 赤ちゃん舌の為か、凄く不味く感じます。


「親方!このお酒の名前は?」

「なまえ?麦酒ですが?」

「今後エールと呼びなさい!」

「エール?ですか、何か旨そうに聞こえますな!領主様!命名有り難う御座います!!」


 この時エール入り全ての樽が微かに輝き、不味いお酒が上質の酒になった事に気付く人は居ませんでした。


「他の種類の酒は造っていないの?」

「ブドウで果実酒を試作して居りますが、上手く出来ません」

「エール酒造所と別の場所で試してご覧!」

「別の場所で?」

「果実酒の造り方は、木の桶にブドウを入れ、素足の女性に踏み潰してもらう、潰れたブドウは新しい樽に入れる、7日~10日でブドウ酒が出来るはず、其を絞って液だけにして樽に入れ、1年~10年熟成させればワインの出来上がり!!」


「なななな!!!何ですとぉ!!領主様は酒造方をご存じでしたか!!!で、わいんと命名されたお酒造り!ご指導、お願いします!!!」


「他に特産品って無さそう、良いわ!美味しいお酒造ってアネエサ王国の名産品にしましょう!!」

「あっ、有り難う御座います!!領主様!!!」

「これで喜ぶのは早いよ!今食べてる芋!これをエールと同じように仕込み発酵させれば、お酒になるよ!」

「ワインを蒸留濃縮すると、ブランデーって強いお酒が出来る!」


「わっ!わっわぁ!!夢が膨らみます!!酒造り一筋に打ち込んで、今ほど幸せな事は御座いません!!領主様!何卒宜しくお願い致します!!!」


「酒造所の親方!アネエサ王国特産品製造、取締役に任命し、希望を込めて命名します。

 今後バッカスと名乗りなさい!!」

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