第50話 岩山王国

「バッカスとは、私が住んでいた所の、酒の神の名です」

「領主様!!上手く行かず、辞めたくなった事も度々有りましたが、続けて来て良かった!!バッカス名、勿体無くも有り難く承り致します!!!」

 親方感激に泣き崩れてしまいました。

 弟子の若者達も、もらい泣きしてる。


「さっ!!貴方達も飲み食いして、建国を祝って!!!」

「「「「「おっ?はい!!!」」」」」



「あれっ?アネエサ様!何か急速に近付いています」

 暫くして、サヨの言う通り、ぼてっとしたカバの様な、馬と言われても微妙としか言えない物に、兵士が乗って勢い良くやって来ます。


 カバよりはスマートな動物から、飛び降りた兵士が、

「アネエサ様!一大事です!!!2の村の村長が逃亡!!行き先は岩山王国と思われます!!!」

 この人は、2の村から召集された、農民兵の隊長だよね。


 はて?岩山王国?初めて聞くな!

「2の村の村長は、キンキラ男の二男ですか?」

「はい!二男です、実は·····」


 この隊長は、遊び好きで仕事をサボる、二男村長の代わりに、実質村長をやって来たそうで、キンキラ領主の計画が、アホの二男から筒抜けで、詳しく知る立場にいたそうです。


 計画とは、鉱物資源が豊富で資金的に裕福な、岩山王国から莫大な資金援助をしてもらう代償に、岩山王国の属国として建国し、小国侵略の全線基地として協力する取り決めとか。

「成る程!あの金貨銀貨の山は、そう言うお金か、後ろめたさ感じずに頂けるね」


 お金の山全部ポーチの中です。


「因みに、長男村長はどんな人?」

「1の村は酪農の村で、今の村長に代わると、規模の拡大をはかり、領民、全ての村に食肉が供給されるようになりました」

 血抜きを知らない、生産者だった、今頃は召集兵達が血抜きの技術伝えてるでしょう。


「事情は理解しました、2の村の隊長、貴方を命名と共に村長に任命します!!名前は·····所で、2の村は何を生産しています?」


 新村長の側で、大人しくしているスマートカバを指差し、

「乗馬の飼育育成をして居ります!」

(ヤッパ馬なの?太短足のダックス馬、ダクマ···)


「村長!貴方の名はダクマ!!」

「ダクマ···良い響き素晴らしい名を賜り、感激の極みであります!!」

「2の村も、ダクマ村と改名します」


 岩山王国にとって、予想外の領主交代、攻めて来るでしょうね。


 風に声を乗せる。

「親衛隊!防衛軍!集合!!」



「「「アネエサ様!何か問題発生ですか?」」」

「「「魔神様!お呼びにより参上!!」」」

「「「「「女神様!何を致しましょう?」」」」」


「う~ぅ!私は、女神でも魔神でもないよ!!」


「「「「「おーっ!!そうでした!制覇前に知られては、不味いですな」」」」」


「女神様が、エールと命名祝福を与えた直後、酒が極上の旨さになったと、皆が騒いで居ります!!」

(気分の問題でしょう!訳の分からん酒より、エールと名がつく酒は旨く感じる)


「皆に集まって貰ったのは、岩山王国との開戦準備!!北開拓村北方面が戦場になる!明朝精鋭先行で北開拓村に高速移動!!」

「アネエサ様!岩山王国とは?」

「私も今聞いた知識だけど、北開拓村に隣接した、遥か北の鉱山までの広大な領地を持つ国だそうだよ」





 ◎◎◎





 ボロい領主館で雑魚寝宿泊、夜が明けきらない内に北開拓村に向けて進軍です。


 広場では、夜通し飲み食い騒いで居た領民達が、酔い潰れて転がって居ました。


 暖かい気温、放って置いても大丈夫でしょう。

 定位置サヨの肩に乗り「前進!!」


 ダックスに跨がった、ダクマ村長が先導します。

「あれっ?遅い!」

 サヨや親衛隊防衛軍が、つんのめる程ダックス馬の駆ける速度遅い!


 3時間程ユックリ走ると、村が見えてきました。

「領主様!ダクマ村が見えてきました」

 私に振り返り話し掛けてきた、ダクマ村長に聞きます。

「真北に行けば、北開拓村に行ける?」

「はい!馬で5日程で北開拓村に行けます!」


「ダクマ村長は、村で待機して居て!」

「はっ?待機で御座いますか?」

「今は岩山王国の出方を観るだけ!」

「了解しました!他の村にも情報を送り、軍備を整え待機します!!」


「全員!早駆け!!」

 サヨのスピードに全員遅れる事なく着いてきます。


「先を急ぐには、馬の速度足手まといでしたか···」

 あっと言う間に見えなくなる、領主達を見送るダクマが呟いて居ました。

「こうしては居られん!私が出来る事をやって行く!!」




 ◎◎◎




 サヨ達でも、流石に一気に駆け抜ける事は出来ず、途中野営一泊次の日の夕方に、北開拓村に到着しました。


 北開拓村の村長が、召集兵の隊長だったので、私達を歓迎してくれました。

 法外な見舞金が効果を出したようです。

「領主様、ようこそ御出下さいました!」

「村長!2の村二男村長の逃亡知ってます?」

「2の村村長が「急用で岩山王国に向かう!」と言い残し出ていった次の日、連絡を貰いました」


 北開拓村の村民の歓迎を受け、ポーチに入れていた、大量に残った串焼き肉に不味干し肉ハンバーグ、それにカエル足肉の唐揚げを取り出し、歓迎料理の足にして、ここでも建国を祝って貰いました。

 エールも一樽入れていた物を振る舞いました。


「酒が旨い!!」

「どれ?旨い!!!」

 エールマジで旨く成ってるようです、不思議だね。


 気持ち良く眠った次の日


「アネエサ様!大変です!!岩山王国軍と思われる軍勢が、攻めて来ます!!!」

 ハヤテに起こされました。

「えっ?もう攻めて来たの?」

 速き事風の如し!!かよ·····。

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