第39話 密かな陰り

 結局、新領民は私を救出の女神と誤解したまま、私を魔物を導く魔神と信じる旧領民との交流が始まりました。


 村長達は、人が変わったようで(サヨの徹底洗脳処理で人格が変わってる)恵の森領地警備に、励んでくれてます。

 元野党25人は、即戦力西の開拓村警備兵として常駐しています。

 揃いの革鎧に短槍と剣を装備、ゴロツキ野党だったと思えない、立派な兵隊になってる。


 真実の語り部が居る村です、受け入れの下地は出来て居ます、最初は蜥蜴人でも人に見えるハジメ酋長や頭領ハチ、ハヤテ達が交易品を持って訪問、西の開拓村の村民が土鍋、鉄製農機具、ナイフや米を買う、そのお金で西の開拓村の野菜や卵などを買って帰っていたのですが、人語を覚えた一般の緑鬼、小鬼、豚人、蜥蜴人との交易も盛んに行われるようになりました。

 異形な風体の集団ですが、なんと言っても、魅力的な商品がものを言いました。



 やがて、協同販売所が建設され、自由市が発足しました。


 珍しい、芋や干物、籠や草鞋、特に干物と履き物の草鞋は評判が良く、持って訪問した品は全て完売します。


 開拓村の村民、女性に年長の子供達が積極的に、緑鬼豚人村へ訪問仕入れをするようになりました。


 交流が盛んになると、交易の為の貨幣不足が妨げになって来ます。

 盗賊団が溜め込んだ、豊富な金貨銀貨を財源にして。

 領内の産業発展の為に、各村を行き来する、道作りに参加日当支払いを謳い文句に銀貨銅貨をばら蒔きました。


 更に休憩宿泊施設の建設を要所に実施、建設参加日当で貨幣をばら蒔き、住民の資金を増やし、宿の女将や賄い要員として、女達や子供の働ける場所も確保しました。


 わらじの需要は、裸足が基本のこの世界で、人々に絶賛され更に増して行きます。


 便利な物の噂は予想外に広まり、他の開拓村や農村漁村、遥か遠くの領主街からも、購入に訪れる商人が日増しに増えています。


 訪問商人の増加に伴い、自由市の規模が増大し宿泊施設も充実させて、更に村の発展に拍車が掛かりました。


 ワラや布で作っていた鞋ですが、需要増加で材料不足が起こり、獣の革で編んだ革鞋が量産され出しました。


 製作時間は掛かりますが、西の開拓村の老人、女子供も作業に携わり、村外れに私指導で工場を建て、大量生産が可能になりました。


 新製品として、ドワーフ並の技術力を持った蜥蜴人に、革靴の試作を指示し、私専用の鋼鉄仕込みの安全靴を発注しました。



 ◎◎◎



 開拓村なんて、所詮は食い積め者、不要人員の追放場所です。

 西の開拓村のように、開拓が成功しても食って行くのがやっとの、貧乏村です。


 領主は非生産者、スラムの浮浪者を追放する事が目標であって、後がどうなろうが知った事では有りませんでした。


 貧乏村と放置していた、西の開拓村の繁栄を聞き付けた中央領主は、即事実態調査を命じました。



 やがて、実態調査第一報が中央領主に届きました。


「恵の森領主とは誰だ?その領主とやらが、西の開拓村を統治して繁栄させた?ふざけるな!!西の開拓村は私が統治して居る所!!不法占拠だ!!!兵を出して取り戻せ!!!」


 勝手に人の領地を占拠した、如何に発展させようが私の領地、恵の森領主が逆らうようであれば滅ぼして、恵の森領も私の物にする!!!

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