第1話 運が良いのか悪いのか
ハロワで基金訓練(失業保険貰いながら資格が手に入る)の手続きして、半年の受講終了、晴れて介護職員初任者資格(昔で言うとヘルパー2級かな?)が貰えました。
勤めて居た会社が倒産、会社都合の退職だから、失業保険は直ぐに支給始まったけど、呑気に構えず頑張ったんだよ、私。
運良く、タイミングも抜群で、失業保険支給終了と同時に、訪問介護事業所の仕事に就けました。
3Kって知ってる?きつい、汚い、危険の3K、介護者にはYまで+される給料安い。
贅沢言わなければ、介護の世界は引く手あまたなんだよね。
折角携わったんだから3年頑張って、介護福祉士取得目指すよ。
私は、育ててくれたお婆ちゃんに負担を掛けない為、進学諦めたけど10年程前は偏差値70超えの天才少女だったのよ。
今は、多少記憶力が良いだけの、只の人だけどね。
新人の私、難易度の高い割の合わない仕事に回されるって、試練が待ってました。
脳性麻痺の障害者、月に2回のお散歩介護です。
「宮本さん、お散歩に行きましょう。車椅子に移乗しますよ」
これから何をするか声掛けをします。
障害者の残存機能を上手く利用すれば、私でも小柄とは言え男性の宮本さんを抱き上げる事は何とか出来ます。
でも、腰を痛める介護者結構多いけどね。
ベッドから電動車椅子への移乗。順調です。
道路に出ました。
宮本さん、指一本で上手に電動車椅子を操作してる。
後ろを着いて行くだけ、押す必要が無いので私のお散歩みたい、身体介護の難易度は高いけど、考え様では運が良かったかな?
近所のコンビニに到着です。
コンビニで買い物、って言っても視線を追って、欲しい物を探ります。
「これ?」首を振るので次を指差し「これ?」うなずいてくれたので、買い物かごに入れます。
こんな調子だから、飲み物とパン程度ですが、結構時間がかかりました。
後は公園に行くだけですが、寝たきり状態の宮本さんにとっては、短時間でも屋外に出る事が出来るって、少ない娯楽の一つなんです。
話し掛ける度に、笑顔でうなずいてくれます。
押ボタン押して、信号が青に変わる車は居ない。
「公園に行くよ!」
宮本さんが電動車椅子を発車します。
自動車が信号無視で突っ込んで来る!!私は咄嗟に電動車椅子を力一杯押しました。
私にこんな力が有ったのか、重い電動車椅子が安全な場所まで動いてくれた、火事場の糞力だね。
私は無事では済まないな、この勢いで跳ねられたら、良くて障害者の仲間入り、こんな最後悔しいよ!!
高齢者にオートマ車運転させるなぁ!ブレーキとアクセル間違ったな!スピードがアップしてる!!フロントガラス越しに、おじいさんの慌てた顔を見たのを最後に、意識が途切れました。
電動車椅子を押した後の、一瞬の出来事でした。
◎◎◎
「知らない・・・てんじ・・・天井じゃ無い?何?まるで洞窟の中に居るみたい」
疲れて生気の無い目をした、私より若い女性が覗き込んで来ます。
胸をはだけて、私を抱上げ乳首を口に押し付けて来るの。
(あははっ私赤ちゃんだ!!)
何で慌てず笑えるかって?
お馴染みの、ありふれた異世界転生ってやつでしょう。
幸運な事に人間の赤ちゃんに成ってるんだよ!!スライムやゴブリン、蜘蛛でも無い、最近では、転生したらリンゴや雑草だったって酷いのまであるよ!!
大事な事なので2度言うね!転生したら人間の女の赤ちゃんだったよ!!運が良い。
お腹もふくれ、おしめも替えて貰い、うつらうつら
(五月蝿くて眠れん!)
寝帰りを打ち腹這いに、はいはいで逃亡します。
(始めて試したけど、四つん這い歩行結構出来るもんだね、私生後何ヵ月なんでしょう?)
これ程逃げても夜泣きの大合唱、ガンガン響いて来ます。
突然「やかましい!!!」どら声と供に2度、ビチャって音が聞こえ、夜泣きの声が止まりました。
はいはいで戻り、コッソリ覗くと有り得ない光景、洞窟の壁に叩き付けられ、潰れた赤ちゃんが2人、酔って居るのかフラフラ揺れてる髭面の大男が仁王立ちしてる。
ゾワッと全身に悪寒が走ります。
(理解不能だけど、とんでも無い所に私は居る!!!)
赤子の私、対処不能状態、最悪だぁ転生直後に詰んでるよ。
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