第24話
「どうなってるんだろうな、全く」
柔らかな風に揺れる木漏れ日の下で、緑の草の上にあぐらをかいたエミルがほとほと感心したというように首を振った。竜は左の掌の上のマルギリスの残骸を消して、照れと嬉しさと満足で頬を緩めた。額の前髪を揺らす微風が気持ちいい。
果樹園に着いてから、まずレウリスを歌わせた。何の問題もなく、拍子抜けするほどにすんなりできた。
そしてマルギリス。昨日は渾身の力を込めなければいけなかったのに、今朝は全くそんなことはなかった。例えていうなら、昨日は精一杯の力で全体重をかけて押さなければ開かなかった重いドアが、今日は指一本で突いただけでついっと開いた、という感じだった。昨日のように辺りが眩しくなったりもしなかった。
語りかける言葉も今日は必要なかった。昨日エミルが言っていた、「ただ歌わせようとするだけ」という意味が今は竜にもわかる。レウリスやマルギリスを掌にのせ、意識を集中させる時に、自然とそうなるのだ。
「でも…」
眉を寄せて竜は言った。
「まだエミルみたいにはできません。歌わせている間に周りを見たり喋ったりする余裕はまだとても…」
エミルがおかしそうに笑う。
「そんなに一生懸命謙遜するなって言っただろ。そんなのは慣れればできるようになるし、できなくったって構わないんだから」
竜はふと思いついて訊いてみた。
「エミルは『歌わせる』魔法をよく使うんですね?」
「そりゃあね。魔法発明学をやってればよく使う魔法だから…」
エミルはふと言葉を切り、幻を見たような表情をしてふわりと微笑んだ。
「…なんですか?」
「いや、一瞬、竜がフリアの研究室で魔法発明学の実験をしている姿が頭に浮かんでさ」
竜は息を呑んだ。勢いこんで尋ねる。
「それって、予知夢みたいなのですか?」
「まさか。ただの想像だよ」
「…そうですか」
肩を落とした竜を見てエミルが訊く。
「竜はフリアで魔法発明学がやりたいのか?」
「魔法発明学がやりたいかどうかはまだわかりませんけど、フリア魔法大学にはぜひ行きたいです。魔法のことをもっと色々学びたいんです。理論とか、歴史とか、そういうのも全部。実験とか研究とかもして。もっと魔法のことを何から何までちゃんと知りたいんです」
熱心に言うと、エミルは難しい顔をしてうーんと唸った。
「魔法大学に行くとなると、その期間だけでも移住しないと無理だぞ。向こうと行き来しながらなんかじゃできない」
「そうですよね」
竜はうなずいた。昨日フリア魔法大学に行ってから、少し考えてみたのだ。
「こっちの6年間は向こうの3ヶ月だから、3ヶ月間だけ真みたいにどこか外国に行けばいいかなって思って。しかも留学とかじゃなく、一人旅をするとか言って行けば、誰にも心配されずにずっとこっちにいられます。たまに数分間向こうの世界に帰って、日本に連絡すればいいでしょう?」
エミルが呆れた顔をした。
「竜はまだ11歳だぞ。外国を一人旅なんてさせてもらえるもんか。それに、こっちで6年過ごして17歳になって向こうに帰って、一体どうするつもりだ。3ヶ月間で11歳の子供が17歳になったら世間が大騒ぎだ」
「だから、今すぐじゃなくて、7年後、僕が向こうで大学生くらいになったら大丈夫かな、って。18歳なら、多分両親も3ヶ月の一人旅くらいいいって言ってくれるでしょうし、18歳が24歳になったって、まああんまり外見も変わらない…わけにはいかないかもしれないけど、11歳が17歳になるよりは、ごまかせるでしょう?」
「…なるほどな。それならまあ、不可能ではないな」
エミルがふむ、とりんごの木を見上げた。
「今からそっちで7年後…となると、こっちでは…168年後か」
竜はそれを聞いてぎょっとした。そのことをすっかり忘れていた。
「…168年後…」
「フリアがまだあるかな…。まあもう創立800年くらいいってるんだし、あと168年くらい大丈夫じゃないかな」
竜が考えていたのはフリア魔法大学の存続のことなんかではなかった。168年後。エミルはもういない。マリーもカールもライラも。
「すっかり忘れてました、そのこと…」
竜は呆然として言った。
「こっちでも7年しか経たないような気がしちゃってて…。だから、その頃にはもうエミルも多分フィルさんと結婚してて、子供がいるかなとか、フリアに住んでたら、もしかして下宿させてもらえるかなとか、今度は僕がエミルの子供に魔法を教えてあげられるかなとか、まだエミルが大学で研究を続けてたら、毎日大学でも会えるし、ピエールさんのカフェに一緒に行ったりできるし、もしかして一緒に魔法発明学の研究ができるかなとか、思って…」
なんだか泣きそうな気分になって、竜は口をつぐんだ。168年。向こうではたった7年なのに。168年…。
「…残酷だろ、24倍の速さで時間が経つって」
黙り込んでうつむいた竜の額に、エミルが低い声で静かに言った。
「昔、真がいた頃も、よく考えたよ。なんて残酷なんだろうってね。真がまだ大人にもならないうちに、僕は大人になって、老人になって、死んでしまうんだ…って」
竜はなんだかぼうっとなってしまって、頷くこともできなかった。
24倍の速さで時間が経つ。わかっていたはずだったのに。向こうの朝までの9時間で、こっちで9日間過ごせると聞いたときは、すごく嬉しくて、得をしたような気分だったのに。3ヶ月間向こうを留守にするだけで、魔法大学で6年間勉強できると思って、喜んでいたのに。
どうしよう。どうしたらいいんだろう。
エミルのいない168年後なんかにフリア魔法大学に行きたくない。そんなことしたくない。
「まあ、どうしようもないことだからね」
竜の思いを読んだように、エミルがそう言った。
「仕方のないことだから、諦めるしかない。辛いけどね」
いやだ。諦めたくない。竜は強くそう思った。
諦めたくない。
でも、じゃあどうする?
移住だ。それもすぐに。
向こうの生活を諦めることはちっとも構わない、と竜は思った。家族や友達や学校やピアノやスイミングも好きだけれど、こっちの世界が大好きだし、移住してずっとこっちで暮らすなんて、むしろ望むところだ。
問題は、行方不明になって両親を悲しませ、世間を騒がせてしまうことだ。
…そうだ。父さんたちに打ち明けてしまえばいい。真もいるんだから、何とか信じてもらえるはずだ。カールの魔法があるから、時々会いに帰れるんだし。世間には…行方不明になったと思ってもらうしかないだろう。騒がせてしまって申し訳ないけど、それしかない。外国に行って行方不明になったって、騒がせてしまうことは同じだろうけど…、でもそのほうがまだマシかな?よく考えてみなくちゃ。家族にも、周りの人たちにも、できるだけ迷惑がかからないように…
「こら、竜」
はっとして現実に戻ると、エミルが竜をじっと見ていた。
「何企んでる」
「すぐに移住するためにはどうしたらいいかと思って」
正直に言った。
「両親にちゃんと本当のことを話して、わかってもらって、協力してもらって、すぐにこっちに移住します。カールの魔法が使えるんだから、たまに会いに帰れるんだし、だから永遠の別れとかいうわけじゃないですし」
エミルが苦笑した。
「真とおんなじことを言うんだな。でも竜、僕も真に言ったのと同じことを言わせてもらうけど、ご両親がそんな簡単にわかってくれるわけないと思うよ」
竜はうなずいた。もう心は決まった。
「わかってます。でもやってみるしかない。とにかく、向こうに帰ったらすぐ両親に話して、許可してもらえるなら許可してもらって、すぐに戻ってきます。フリア魔法大学って何歳でも入れるんですか?」
「と思うよ。入学試験に通りさえすれば。ああ、でも11歳か…」
エミルが考え込む。
「親とか、保護者が一緒に暮さないとだめかもな」
竜は別なことを考えて青くなっていた。
「入学試験…。入学試験って、どんなことするんですか?」
高校レベルの数学とか言われたら、どんなに一所懸命勉強しても、今すぐにはとても無理だ。
「実技試験と学科試験だけど、竜なら実技で断トツの成績で合格だよ。学科試験は免除になるんじゃないかな。大学で訊いてみよう」
「エミルの時はどうだったんですか?」
「僕は普通に実技と学科の試験を受けた。でも竜の場合は隣からだし、しかもこの才能だからね。学科なんかできなくったって大学側は喜んで受け入れるだろうと思うよ。ま、もちろん魔法数学だの魔法物理学だのの知識はある程度なきゃ困るから、入学前に少しやっておく方がいいかもしれないな…」
エミルはそこで真顔になると、
「竜…本気なのか」
「もちろんです」
竜がこれ以上ないほどきっぱり言うと、エミルは竜をじっと見た。
「ちゃんとよく考えなきゃだめだぞ」
「わかってます」
「こっちで何年も暮らして、その後結局やっぱり向こうに帰りたくなったら、…帰れないわけじゃないけど、でも帰ったらいろいろ大変だと思うよ。年齢のことだってあるし、他にも色々」
竜はふと、カールの母親のことを思い出した。カールのお母さんなんだからエミルにはお祖母さんというわけだ。魔法に夢中になって、向こうに戻らない決心をして、でもずっとホームシックで辛い思いをして、とうとうカールの研究の成功を待たずに向こうに帰ってしまった人。向こうに帰って、そして、どうしただろう。
カールがもう大人になっていたんだから、カールのお母さんはこっちで20年以上は過ごしたはずだ。仮に24年とすれば、向こうでは1年。1年間行方不明になっていた音大生が、中年の女性になって現れる。それって、向こうの世界でどういうことになるんだろう。
本人だと名乗ったら、例えばDNA検査とかで本人とは認めてもらえるだろうけど、でも人々の好奇心の的になるだろう。現代なんだからまさかサーカスの見せ物とかにはならないだろうけど、医学か何かの研究対象にされてしまうかもしれない。
じゃあ本人だと名乗らなかったら?記憶喪失の振りをして別人になるとか。そうしたらちゃんと身分証明書とかももらえるのかな。向こうの世界でちゃんと生きていけるのかな。
でもそもそも、本人だってこっちの世界であったことを覚えていないのだから、なぜ若い音大生だった自分がいきなり中年のおばさんになってしまっているのかわからなくてパニックだろう。そんな状態で、記憶喪失の振りをするなんて考えられもしないだろうし…
「どうした?」
「いえ、カ…」
カールのお母さんのことを考えていて、と言いかけて、竜は慌てて口をつぐんだ。もしエミルに訊かれたら話してもいい、とカールは言っていた。訊かれてもいないのに話してはいけない。
「…帰りたくなったりは僕はしないと思います。エミルの言うような意味では。だって、他の…普通に移住している人たちとは違って、僕はいつでも向こうとの行き来ができるから。たまに向こうに帰れるなら、ホームシックにだってならないし、ずっとこっちの世界で、魔法の研究をしながら、楽しく暮らしていけると思うんです」
「なるほどな」
エミルは頬杖をついて竜を眺め、にこりとした。
「じゃ、早速大学に入学について色々訊いてみよう。それから、ベッドルームの二つある部屋を探さないとね。竜が弾けるようにピアノも調達して…ここのうちのを持っていってもいいかもな。もう誰も弾かないんだし。でも楽譜の散らかしっぱなしは禁止だぞ」
竜は嬉しくて思わず座り直した。
「僕、エミルと一緒に住んでいいんですか?」
「当たり前だろう」
「でも…フィルさんに悪いなあ」
「フィルに?」
「だって、フィルさんはすぐにでもエミルと結婚したいんじゃないですか?」
エミルは吹き出した。
「あれは冗談で言ってるだけだよ」
そうかなあ、と竜は思った。かなり本気っぽく聞こえたけどなあ。
「どっちみち、僕の方はそんなすぐ結婚なんかする気はないよ。大体、まだつきあってみてもいないのに。それに今は研究の方も忙しいしね」
「でも、邪魔になったらちゃんと言ってくださいね。僕、大学の寮でも暮らせると思いますし」
生真面目に言うと、エミルが笑って長い指で竜の額を突いた。
「そんな心配しなくていい。魔法の喪失をしないこと。竜はそれだけ心配してればいいよ」
エミルと一緒に笑いながら、竜は真のところにジリスとフュリスがあるようにと心から願った。ジリスとフュリスがなければカールの魔法は使えない。カールの魔法が使えなければ、きっとエミルが危険を冒して僕を迎えにこようとするだろう。もしそれが成功しなかったら?エミルが死んじゃったり消えてしまったりするなんて、そんなのは絶対に絶対に嫌だ。
ライラとリルをいくつか半分こして食べた後、いよいよ二つの魔法を同時に行う練習を始めることになった。
まずは簡単な魔法からということで、昔エミルと真がやったことを参考に、リルの実を宙に浮かばせ、それを手を使わずにスケッチしてみることになった。竜は、りんごの木の下に少し緊張して腰を下ろした。目の前の草の上には、一房のリルの実、最後のページを開いて置いたカールにもらった手帳、そしてペンが並べてある。
「前にも言ったけど、これについては僕が教えられることは何もないんだ」
申し訳なさそうな顔をしてエミルが言う。
「見てるから、竜の好きなようにやってごらん。くれぐれも、魔法の喪失の兆候に気をつけて」
「はい」
竜はうなずいて、深く息をついて、意識をリルの実とペンに集中させようとした。
「……」
何も起こらない。
もう一度やってみる。やっぱり何も起こらない。
何度やってみても同じだ。なんの手応えもない。自分の頭や身体のどの部分も反応しない。
別々の二つのものに同時に意識を集中しようとすることが、なんとも奇妙奇天烈に感じられる。まるで、右目と左目で別々のものを見ようとしてみた後のような、妙なもどかしさと気持ちの悪さだけが残る。頭や身体が「出来っこないだろう。無理言うなよ」と文句を言っているようだ。
いやでも待て、と苛つき始めた心を竜は宥めた。ピアノだってそうだ。慣れない人は、右手と左手で別々の旋律を弾くことができないけど、練習すればできるようになる。忍耐忍耐。
しばらく黙って見ていたエミルが、自分もやってみると言って、ジーンズのバックポケットから手擦れのした小さな黒い手帳とペンを取り出し、ちょっと手を伸ばしてまだ青い小さなりんごをもぎ取って、竜の隣に腰を下ろした。
「二人でやれば、より早くコツを見つけ出せるかもしれないからね」
「はい!」
竜は嬉しくなって、決意も新たにまたリルの実とペンを睨んだ。隣でエミルが集中する気配が感じられて、わくわくする。頑張るぞ。
「まいったな」
額にかかった髪を苛立たしげにかき上げて、エミルがため息をつく。その隣で竜も目を閉じてため息をついた。全くその通りだった。まいった。魔法の喪失の心配なんかまるで無い。何も、なーんにも、起こらない。魔法が使えない。
太陽はもうかなり高くなって、ライラはただただじっと座っている二人を見ているのにも飽きたのか、気持ちよさそうに眠っていた。
「こういう感覚は久しぶりだなあ」
エミルが疲れた声でちょっと笑う。
「子供の時以来だ」
目を閉じていた竜は、ふと隣に少年時代のエミルがいるところを想像した。11歳のエミルと一緒に、同じ魔法に挑戦しているような気持ちになって、なんだかちょっと楽しくなった。口元がほころぶ。
「なんだ、竜は楽しそうだな」
そう言われて目を開けると、エミル少年は消えて、イケメンのドクター•ブリュートナーが竜を見ていた。
「いえ、なんだかこういうのもいいなって思って。教えてもらってるんじゃなくて、二人で同じ魔法にチャレンジしてるっていうのが、なんだか楽しいなって思ったんです」
エミルは微笑んだ。
「そうだな。よし、どっちが先にできるか、競争だ」
竜はにやりと笑ってみせた。
「負けませんよ」
「お、言ったな」
「負けた方が勝った方のいうことをなんでも聞く、でどうですか」
エミルもにやりと笑った。
「後で『やっぱりやめた』はなしだぞ」
「もちろんです」
「よし」
頷き合って、二人はりんごとリルと手帳とペンに戻った。竜はリルとペンを凝視しすぎて疲れた両眼を目蓋の上から擦った。きっとできるはずだ。
まずリルの実を浮かばせる。爽やかなサップグリーンの真ん丸い粒が三つふわりと浮かぶ。次はペンだ。リルの実を空中に留まらせたまま、少しずつ、少しずつ、ペンの方へ意識を移す。ペンがぴくりと動くが早いか、リルの実が草の上に落ちる。
ペンを手帳の上にスタンバイさせる。リルの実の方へそろりそろりと意識を移し始める。手帳の上にペン先を下にして立っているペンをなんとかそのまま立たせておこうとしながら、リルの実を浮かばせる。ペンが倒れる。
リルの実とペンを両方浮かばせてみる。これはできる。リルの実とペンを両方草の上で動かしてみる。これもできる。草の上で円を描いて動いている二つのうち、リルだけをふっと浮かばせようとする。できない。リルが浮かんだ瞬間、ペンは止まる。
草の上で、リルを右、左、右、左、と動かし、ペンを前、後ろ、前、後ろ、と動かす。これは最初は難しかったけれど、できるようになった。次に、これも草の上で、リルで三角形の軌跡、ペンで円の軌跡を描く。これも最初はちょっと手こずったけど、できるようになった。クラス全員で先生にやらされたこともある。左手の指で三角形の軌跡、右手の指で円の軌跡を机の上に描くのだ。こういうのは、ピアノをやっている者に分があると先生が言っていたっけ。
そのまま、ペンだけを浮かばせようとする。円を描いている動きをそのままに、螺旋状に宙に上らせようとする。が、ペンが宙に浮いた途端、やはりリルの動きは止まってしまう。
もうどれくらい同じようなことを続けているだろう。竜は頭の真上にある太陽を重なり合う緑の葉越しに仰いで、額の汗を拭った。腕時計ベルトを作り出す練習よりも疲れる。腕時計ベルトの時には、たとえ失敗作ではあっても、毎回必ず結果が出た。今回のは違う。ただ、できない、できない、の繰り返しだ。竜はため息をついた。何か他の方法がないだろうか…。
その時、ぱっと閃いた。意識の空間!光のボール!そうだ!できるかも!
最初の頃の感覚を再現しようと努めながら、意識を集中しない状態で、懐かしい薄青い空間に入る。そこで、拡散している意識を集中しよう、と自分に呼びかける。意識の空間の中に浮かぶ自分の身体から、様々な色の光線があちらこちらに向かって伸びている。竜は、頭の中でそっと力を入れた。光線たちを注意深く動かしていく。できるかどうか…?ゆっくり、ゆっくり…。しばらくして、竜は、薄青い空間の中に浮かぶ二つの光のボールを眺めていた。実際の世界で、ふとこちらを見たエミルがあっと声をあげ、笑い出した。
「その手があったか。やられたな!」
竜はにこりとした。
三つのリルの実がふわりと宙に浮かび、ペンが手帳のクリーム色のページの上を滑ってその絵を描いた。
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