第5話 お嫁さんは夫の実家に行く
悪魔の虫歯の呪いのせいで50年に一度、竜族は人間の花嫁を迎えると言うことで相殺できるということを神様に言われ…そうしているがぶっちゃけると竜族側からも不満が出ていた。
「人間て…めんどくさくね?」
「食料と結婚すんの?わろ…」
「そもそも人間と交渉するのもめんどくせえ。そもそも人間は山を切り開き自然を壊す害悪」
「でも悪魔から訳の判らない虫歯の呪いあるし。50年間は安心だけどさ…。まぁブス寄越してきても困るから美人貰うことにしようぜ?人間なんか竜の加護で魔物から守ってやるって言ったら大体言うこと聞くぜ」
とか言うことで代々50年毎に美人の嫁を娶ることになった竜族。
この城と城下街は結界で人間には気付かれないようにしている。竜族と言えど繁殖はするのでここでは人間姿で過ごすことが多い。その方が効率的に暮らせるからだ。
多くは山に住んだり、人間が気付かない空に神様が島を点々と造りそこを領地にして村や町を作っている竜の貴族達も多い。人間達は空に島が有るとは思っていないから侵攻されることも戦争になることもないし、人間達は空を飛ぶと言う発想はない。
*
リオン王子がフィリス様の贈り物を買われた後、部屋に戻り寛いでいる時に私が給仕をしている姿を見てボソリと言った。
「クレイグ…そう言えばお前あの人間娘と結婚して何日になる?」
「…丁度1週間くらいですかね??」
リオン王子は珍しく端正な顔に皺を寄せて
「済まなかったな…。お前に…新婚休みをやるのを忘れていた!いつも通り給仕してるし…」
「はぁ…仕事ですからね…」
するとリオン王子が
「おい、俺もあれだったけどな、流石に新婚なのに働きすぎだろ!!子作りとかもしろよ!!よし!休暇を2週間与える!!」
「えっ!!?そんなにいりません!!王子の従者は私です!」
「捨てられた動物みたいな顔すんな!ばか!!お前の仕事人間もいい加減にしろ!休め!少しは!後嫁と仲良くしろ!!」
「そ、そうは言っても…何を話せば…。結婚もいきなり書面上だけでジュリエットさんも直ぐにフィリス様付きの侍女に成られたしあまり話してません。廊下であったら「仕事頑張ってください」「そちらも」くらいしか無いので…」
と言うとリオン王子が頭を抑えた。
「お前等は夫婦だろうが!!いいか!クレイグ!!2週間のうちに嫁と仲良くなれ!!可能なら子作りしろ!!世間一般の新婚生活とやらを満喫しろ!これは!命令だ!!」
と命令が下されたら王子甘やかしの私は逆らえない!!というかそもそも新婚生活よりも恋人生活すら今までしてこなかったのに!仕事命の私には不要な産物なのに…。
まぁ…王子のお嫁になれるのだろうと思って私の背中の上で嬉しそうに
「イケメン王子様と結婚できる!やったー!」
と喜んでいたジュリエットさんには酷いことをしたな…とは思うけど。いや、実際酷いと思う。いくら王子とフィリス様が超ラブラブだからたぶんこのままの結婚はないだろうし、村娘さんは別の人と結婚させられるだろうなと思っていた。
まさか私の嫁にされるとは思ってなかったのですが!!!
想定外だったけど王子の命令には逆らえない!!竜族なら誰でもいい。でも王子の命令だから結婚した。というかサインしただけでジュリエットさんと私の間に愛だの恋だのは無いと思う。労いの言葉をかけるのみ。
それにまだ…手紙は送ったけど、実家にジュリエットさんと挨拶に行ってないのでこの機会に行くしかないか…。後、家も手配しないといけない。あんまり住まないだろうけど。
ああ、実家にしばらくジュリエットさんを預けて私が家選びをすればいいのか。王子から特別ボーナスだと家を買う資金も頂いてしまった。家政婦さん…いや、管理人を雇わないとね。家を開けることも多いだろう。基本城に勤めるし。
あれ?ジュリエットさんは……お城に勤めたいのかな?でも王子命令でフィリス様付きの侍女になったし。お互い仕事はしてる。でも最初金持ちと結婚したいとか言ってたしな。私は侯爵家の次男だけど爵位は長男の兄さんのものだし。王子付きの侍従長で給金は良い方だけど…。特に贅沢したいとかも無いんだよなぁ。でも女性は贅沢したいのかも!!?
うーん。その辺は聞くか。
と休憩時間中に私はジュリエットさんに声をかける。好奇心で皆が覗き見していたので
「すみません、ちょっと…」
と私の部屋に呼びつけた。
ジュリエットさんはお昼を持ちモグモグとサンドイッチを食べながら聞いた。
「なんですか?何かご用事?」
と素っ気のない返事が帰ってきた。
私は王子から休暇をいただいたことや実家への挨拶や滞在などを話した。
「で、私が貴方の家で待ってる間…貴方は家を買ってくると?」
「そうです。そう言えば、ジュリエットさんはお仕事はどうします?家にずっといますか?」
「……いや…働くわよ。家にいたってやることも無いじゃない…。働いて給金を貰い、自分の好きな物を買うわ」
「そうですか。ならば私は何も言いません。それからもう一つ」
「何?まだあるの?貴方のお母さんとも上手くやれっての?嫁姑問題あるしね?はぁ、めんどくさいなぁ」
とボヤいている。
「い、いえそれも確かに有りますけど…王子の命令でこ、子作りを可能ならやれと。世間一般の新婚生活を送れと言われて…」
と流石にモゴモゴと言うと彼女はあっさりと
「ああ…そんなの適当に休み明けに言っておけばいいわよ。口裏を合わせればいいだけでしょう?だって私達愛があるわけじゃないし、クレイグさんのことは私、同僚の少し上の上司くらいにしか思えない…貴方もでしょ?」
と半目で聞かれて私は少しだけ胸がちくりとした。
「ええまぁそうです。そ、そう言えば実家は空の島の一つにあるんですよ!」
「へぇ。空に島が有るのね?それはちょっと初めてで楽しみかも」
と興味を持ってくれた。
後は実家に帰るだけか。
しかし私はそこで気付いた。
皆がジュリエットさんを…餌として見ないだろうか?いや…流石にないか?
………いや、有り得る…。
どうしよう…。言うべきかな?でも怖がらせちゃうかも。帰らないと言い出しそうだし。
まぁ私が家族に厳重注意しておけばいいか。
ここに連れてきて同僚達は度々ジュリエットさんを盗み見てヨダレを垂らしてる奴らがいた。
「あの…まぁ…そう言うことなので2週間ですがよろしくお願いしますね」
「了解致しました。クレイグさん」
とピシッとした。これじゃ嫁ではなく部下だ。
普通なら今…私の部屋にいるし…イチャイチャしているんだろうけど…ジュリエットさんにはその気は皆無だし別に私もそんなつもりはない。ジュリエットさんは面白い人だと思うけど。
お昼を済ませジュリエットさんは仕事に戻ると言い部屋を出たのだった。
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