第2話 竜が迎えに来た

 朝になり私はドレスを着て村長や領主様や家族に村人達に花束をもらっていた。因みに腹が痛いと言いポーリーナは出てこなかった。


「ジュリエット…天国に行けばこの花より美しいものが見れるだろう。よくこの村の生贄となってくれた。ありがとう!!」


「ありがとうございます。領主様」

 後で捨てときますわ。しかもなんか安そうな花だなおいいい!!ざけんな!花代すらケチったの?


 するとバサバサと栗色の竜が降りてきた。

 まごうことなき竜だ。初めて見た。


「生贄の娘を迎えに来た」

 と竜は言い、私を見た。


「ふむ、村1番?まぁ可愛い方だからいいだろう」

 となんか竜も失礼なこと言ってるんだけど!?


「別れは済ませたようだな…では背に乗れ」

 と竜が屈む。凸凹している。角によじ登るのに必死だよ!余計な体力!!


 角にロープを結びつけしっかり身体を固定し私は竜の立髪を掴んだ。落ちてたまるか!

 まぁ喰われるから別に落ちてもいいんだけどね。(投げやり)


 翼をはためかせ竜は飛び上がる。下で皆がジュリエットさようならーー!と叫んでいた。そして竜がくるりと方向を変えた瞬間、下で領主様のパンパンという手を叩いて解散の合図が聞こえた。


 えっ!!?


 ちょ!こういうのって消えて見えなくなるまで涙で見送るでしょ?雑!!

 な、何なの?ざ、雑!!

 イベント終了したみたいに皆もう興味なさそうに振り返りもせず行ってしまう。ちょっとは泣けよ!!この薄情者達があああ!!


 すっかり意気消沈した私に竜が声をかけた。


「あのぉ…なんかお疲れ様ですぅ」


「あれ?なんかさっきと態度違わなくない?竜様」

 と言うと


「はぁ、まぁ…私は…下っ端ですからね。ただ迎えに来ただけの…。貴方は竜の王子様と結婚されるんですよ。生贄なんて人間たちへのただの誤魔化しでして、50年に一度人間の花嫁を貰うのが竜族の繁栄にも繋がりましてね」

 と言われた!


「えっ!!?そ、そうなの?喰われるとばかり!!しかも王子様!?や、やった!!ねぇそれイケメンなの?」


「はい、リオン様とおっしゃり、大変端正で美しいお顔です!人間姿は」


「っしゃ!キタコレ!!イケメン王子様大逆転!!なっはっはっ!ポーリーナ!ざまぁ!お前より断然いい暮らししてやるわーー!!」

 と私が笑うと竜も


「なんか凄い人だなぁ…」

 とクスリと笑っていた。


 *

 しばらく雲の近くを飛ぶと竜がギャアギャア言ってる所にきてその先に城のようなものに街が見えた!!


「街!城!?何でっ!?」


「何でって…普段は人間姿で暮らしてるからです。こんな大きい竜が棲む所なんて限られてますからね」


「あ、そうなの…所で貴方の名前は?」


「ああ、私はクレイグ・レナルド・ラスキンと申します。お妃様」

 と言う。やだぁ!お妃様だって!!ただの村娘の私が!!イケメン王子様のお嫁様なんて!やったぜ!!可愛くて良かった!!そして美味しい料理に豪華な生活…へへへ、想像したら楽しみ過ぎ!


 しかもーー!!結婚式!!イケメン王子様と初夜!!うっふふふふふげへへへへ!!ぐはは!!ポーリーナ!勝ったわ!悪いけど勝ったわ!!あんたは男爵の嫁で私は王子様の嫁!!


 格が違うわ!!いっひひひ!!

 もはや笑いが止まらん。


「お城に降ります。ほら皆待ってますよ」

 と下で待ってる皆…人間姿の竜たち…矢を構えて待ってる…。


 はあ!?

 クレイグが着地しても矢を構えたままだ。


「に、人間だ…。本物の人間の肉だ…。

 グルルルル」

 ひっひいあああ!!!

 皆の目がギラつきヨダレまで垂らしている!


「ちょっとおおお!完全に私食料と思われてない!?大丈夫なのっ!?」


「た、たぶん…」


「たぶんてなんなのよおおおお!!」

 クレイグはそこで1回転して人間姿になった。クレイグの人間姿は特にイケメンというわけではないけど特に不細工過ぎるわけではなく普通に優しそうで頼りなさそうな感じだった。


 髪は栗色で瞳だけ赤い。瞳も細い。

 するとボテボテとこちらに走ってくる中年男性がいた。


 太った男は


「そちらが?人間の嫁ですな、クレイグ」


「ああ、まぁそうです。村で1番美しい娘だそうですよ宰相様」

 と言うクレイグ。

 大臣はジッと私を見て


「うーん…50年前の娘の方が美人で巨乳だったんですがな…」

 と言った。私は泣きたくなった。確かに私は胸なんて普通サイズ!ポーリーナの方が巨乳だった!胸でも負けてた!!くっ!!

 大臣を睨み付けると


「ひっ!!」

 と竦み上がる。クレイグはクスリと口を押さえて


「ええと、人間の女性に対してそれは失礼に当たるそうですから宰相様…」

 とフォローしてくれた。


「済まない。大きい方が安産型だと思ってな。まぁとにかく王子のところにお通し致しましょうぞ」

 とボテボテと歩く宰相様とクレイグに連れられ私は豪華な扉を潜ると背景にキラキラする光を纏った美しいイケメンがいた。

 黒髪で赤い目をしていた。

 かかか!!カッコいい!!やったーーー!!

 私の王子様カッコいいーーーん!!


 もう目がハートになりつつあるわ!!鼻血出そう!やっべ!!


「………この娘か?」

 とイケボイスだしもう何もかもがカッコいいー!


「はい!リオン様。ジュリエットさんです。村で1番美しい娘とか」


「ほーん…。全く美しいとは思わないな。この程度ならそこらにいる。胸もないし。タイプでもない。つまらん。残念だ。いらん」

 と王子様は私を見て言ってさらに


「俺はやはりフィリスと結婚する!そもそもこの50年毎の儀式は別に王家でなくともいいんだし一族の竜の誰かならいいんだし……そうだ!クレイグ!お前恋人もいないしお前の嫁にしろ!」


「えっ!?」

 流石のクレイグも私も驚いて固まりかけた。

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