第4話

 それから少しの時間がすぎたときです。カモの親子は、川の真ん中の一番深いところを泳いでいます。川の水は、今日の朝早く降った激しい雨のせいで、少しだけにごっています。いつもは、川の底がはっきり見えるようにとてもきれいにしています。水の中にすんでいる恐ろしい敵がいるかいないかよく分かるのです。

「今日は水が少しにごっていて、川の中が見えにくいわ。こんなときは、用心深く泳がないと」

親ガモがふっと、そんなことを思ったときです。後ろの方で、ズボッと何かが水の中に吸い込まれるような、にぶい音がします。親ガモがあわてて振り返ってみると、そこには、水の輪がなめらかにいくつも、静かに広がっています。

 水の中から子ガモを襲っているのは、カエルやザリガニなど何でも食べてしまうライギョです。親ガモは、敵がそっと水の中から来たらどうすることもできません。そして、子ガモはたった一羽だけになってしまいます。

 親ガモは、悲しそうに鳴きます。まるで、一羽だけ残った子ガモに、あなただけはどんなことがあっても守りますよと言わんばかりの泣き声です。

「クエークエー、クエークエー」

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