第3話
西の空の夕日に照らされて、ほのかに明るい風景になってきています。カモの親子は自分たちの巣に帰ろうと草むら近くを泳いでいます。と、その時、茂みの中から音もなく川の中に黒くて長いものが、川の中にすべり込んだと思うやいなや、カモの親子のすぐ後ろで、水しぶきがあがりました。一体何が起きたのでしょうか。親ガモは、けたたましく鳴きました。
「クワー、クワー」
親ガモは、羽で水面を激しく叩きます。抜けた羽が川の一面に何枚も飛び散ります。しばらくした後、親ガモが子ガモたちを呼び寄せるように鳴きながら、茂みの方から離れます。親ガモは、子どもの数を確かめます。一羽が足りません。どうしたんでしょう。そうなんです。茂みから出てきた大きなヘビに捕まってしまったのです。
子ガモたちには、何が起きたのかは分かりません。でも、親ガモは分かっていました。前に一羽がいなくなった時は、イタチに捕まってしまっています。親ガモが振り返って見ると、子ガモたちは、二羽になっています。これで、自分たちが住んでいた巣にはもどることができません。また、ヘビがねらって待ち伏せをするかもしないからです。
数日がすぎました。ちょうどお昼のころです。日ざしも強くなって、川の水も少しずつ温かくなってきます。カモの親子は、今は川の岸の方には行かないようにして、一列になって泳いでいます。子ガモは親ガモの後ろを泳いでいます。子ガモが少し大きくなっています。でも、鳴き声は、
「ピィーピィー」
と、あまり変わりません。カモをいつも見守っているおばさんが、
「本当にかわいそうに。4羽いたときは、にぎやかでかわいかったのにね。さびしいね」
と、ため息をつきながらつぶやきます。
「もうこれ以上、やられないように気をつけなさいね」
と、カモの親子に優しく声をかけています。それから、おばさんは川のそばの自分の家に入っていきます。
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