第5話 お姫さまのナミダ

とおいとおい砂漠のくにの

ちいさなちいさなお姫さま

いちども笑ったことがない

灼熱の国の氷姫


あるとき男があらわれた

黒いローブの魔法使い

笑顔を知らない姫様に

ひとつの魔法をかけました


恋を召しませ 素敵な恋を

夢見心地の 素敵な恋を


すると砂漠のお姫さま

ちいさくちいさく微笑んだ





とおいとおい砂漠のくにの

ちいさなちいさなお姫さま

とびきり素敵な微笑みに

男も女もみな夢中


あるとき男が消え失せた

黒いローブの想い人

微笑み教えた姫さまに

ひとつの呪いをかけたあと


追いかけておいで 可愛い姫よ

私を愛しく思うなら


ほほえみ浮かべたお姫さま

男を追いかけ旅に出た





とおいとおい砂漠のくにの

ちいさなちいさなお姫さま

今ではどこへ行ったやら

行方を知ってる者はない


あるとき噂が吹き抜けた

ほほえみなくしたお姫さま

ひとりぼっちでいるという

涙を覚えたお姫さま


どこにいるのか愛しい人よ

かなしみ教えた憎い人


砂漠のくにのお姫さま

今でもずっと泣いている――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る