聖ニコライ学園の惨劇

事件と探偵

 聖ニコライ学園は150年ほど前にニコライ神父が設立したいわゆるミッション系学校である。

 その学内には礼拝堂があるのだが、そこで女子学生の死体が発見された。

死体はベンチに座らされていて、さながら秋の紅葉もみじのように周囲に血がばら撒かれていた。

「ほうほう、春道列樹ですか」

と、そう言った、まるで捜査員のようにそこにいる男に、ホントの捜査員が思わず聞き返す。

「え、なんですって」

「知らないんですか、『山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり』って百人一首の歌」

「知りませんよ。つうかあなた誰?」

「ああ、すまんすまん」

と、あらわれたのは、馬みたいな顔の男。

「あ、栗林検事」

「わたしがよんたんだ。名前は……」

「法原林五郎です、よろしくお願いします」

 紹介された男、林五郎はそう言って会釈した。


 法原林五郎は探偵である。栗林検事の依頼で数多くの事件を解決してきた。


「タイヘンですにゃ!!」

「どうした?」

「新たな被害者が」

と、言われて現場に急行したかれらは、同じように紅葉のように血を散らばらせた女学生の死体を発見した。

「彼女は?」

「ええと、最初の被害者の友人で、2人の関係を聞いたばかりでしたにゃ」

「なるほど」

「法原くん、なのかわかったのかね」

「ええ、これは合わせ技ですね」

「??」

「『ちはやぶる神世も聞かず館田川からくれないに水くくるとは』と『恋すてふ我が名はまたぎ立ちにけり人知れずこそ思いそめしか』の合わせ技ですよ」

「???」

「つまり、彼女が犯人だ、少なくともそう自白してる」

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