はじまりの場所その2

 カタンカタンと鈍い音を立てながら、ゆっくり動く蒸機馬車に揺られながら、カズマはエレンに訊いた。

「それで、今回の予選はどんなコースで争われるんだ?」

「うん、イルリグとかいう遊牧民族の遺跡だってさ」

「ふうん」

「なによ、興味ないの!?」

「いや、そうじゃないんだけどさ……」

と、カズマは親指で後ろを指した。

 指した先には、競争ライ相手バルと思われる蒸機馬車がいて、それは近づいてきた。窓からカウボーイハットをかふった見るからに性格が悪そうな顔をした男が顔を出し

「へえ、カップルでバカンスかよ、うらやましいニャア」

と、中指を立てて挑発してきた。

「なんだ、あいつら……」

「やめなよ、あいつら『ドミンゴス兄弟』とかいう良いウワサを聞かないチームだ。無視して……」

「売られたケンカは買わないとな」

「ええ、ちょ、ま……」

 エレンの制止を無視して、カズマは運転席にあるボタンを押した。

 すると、かれらが乗っていた蒸気馬車が急加速し、またたくまにドミンゴス兄弟チームに追いついた。

「くそ、やってくれるニャ!!」

 それに対して、ドミンゴス兄弟チームに蒸機馬車をぶつかろうとするが、さらに加速してかわされてしまう。そして

ドカン!!!

 そのまま岩にぶつかってしまった。

「どうだ、やったぜ!!」

と、ガッツポーズをしたカズマ。

 しかし、かれらの乗っていた蒸気馬車が、ガタンガタンと揺れ始めた。

「なんだ、なんだ!!!」

と、怒鳴るカズマにエレンは同じくらい怒鳴り返した。

「蒸気機関が暴走してるのよ、無茶するんだから!!」

 エレンは蒸気馬車の手綱を必死に動かしている。

「どうするつもりだよ!?」

「こうするのよ!!」

と、言うやいなや彼女は手綱を大きく動かして、そのまま蒸気馬車は横転してしまった。


「ふう、なんとかなったわ」

「なんとかなってない気がするんだけどな」

 ホコリまみれの二人がそう話していると、小さなモーター音が聴こえてくる。

 それに気づいたカズマは

「うん、なんか音するけど、何だろ?」

と、首をかしげた。

「なんかイヤな予感がする」

 エレンが心底イヤそうな顔をして言うと、そのモーター音は徐々に近づいてくる。

「あぶない!!!」

と、エレンがカズマを引っ張って身をかわすと、かれらのいたところに、巨大な脚がブンと接地する。近くにあった岩壁から四脚の巨大な機械ガーディアンがあらわれたのだ。

「あんなの、どうするのよ!?」

「エレン、あれ見ろ!」

と、カズマが指差した先には、接合部からかすかに、蒸気機関が見える。

「あそこになんかぶつければ」

「まかせて!!」

と、エレンは近くにあった石をおもいっきりぶん投げた。

ビューーーン

 飛んでいった石は

ドゴン

と、でかい音をたてて命中する。

 そのまま、巨大な機械は静止してしまった。

「ふう、アブなかったなあ」

「うう、これじゃあ強制リタイアじゃない……」

と、安堵と悔しさが二人を包んだ。

「それにしても、あの機械はなんだったんだろうな?」

 カズマが疑問を口にすると、の音がした。

「ははは、その通り」

 その声を聴いたエレンが驚愕びっくりする。

「トルーアント博士……!」

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