182 旅行の目的
数日後、
「うぉー!旅行だー!」
学生さんの元気な声が
―――まぁ…それは
行き先はリンゴ王国。ギルドの職員さんに紛れ、
「それでは…出発!」
高らかに
もちろん俺は魔法学部教授として学生さんを預かる立場。研修旅行だってしっかりと成功させるつもりでいる。計画は完璧。
「それにしても、よくリンゴ王国が許可を出しましたね。」
隣を歩くギルドマスターの疑問はもっともだ。友好関係にある国とはいえ、数日で200名近い人数の入国許可はまずおりない。引率としてギルドの職員さんも参加するのでなおのこと。ギルドと国、つまり政治は明確に切り離されている。ただ、それが建前であることもまた事実。そんな複雑な事情が存在する上でも許可がおりたのは、コロンさんの力によるところが大きい。
「コロンさんの
「やはりコロン先生でしたか…。やはり敵にまわしてはいけない方ですね。」
それには激しく同意する。
というわけで研修旅行(とミイナさんの件)の
「ところで…あの女性は…?」
そうですよね。やっぱり気になりますよね。しれっとギルドの職員さんにまじる女性。メガネをかけたり髪型をかえたりと変装は完璧だったと思うのだが、ギルドマスターの目はごまかせなかった。
「ミイナさんも様子をみたいということで…その、お
嘘はついていない。何の様子をみたいのかは言っていない。
「そうだったんですか。突然のことで驚きでしたが、そういう事情でしたか。」
なんだか心が痛む。研修旅行が大成功するように頑張りますので、許してください。
■
「よし!今日も良い感じ。」
ケーキの見た目を左右する、さくらんぼの設置作業を終えたエリ。おばちゃんの定食屋さんでアルバイトをはじめて以来、毎日違うスイーツを作り続けてきた。各日50個限定となっている大人気メニューで、完売までには5分とかからない。
もちろんスイーツを楽しみにしているお客さんが列をなすわけであるが、エリの接客目当てに並ぶ人も少なくない。コウタのちょっとした心配のたねでもあったりする。
「今日もスゴイわね、エリちゃん。」
「そういえば、今日から魔法学科の研修旅行なんですよね。」
従業員のひとりがポツリ。今朝はお弁当の準備でてんやわんやだった。
「エリちゃん、寂しくない?大丈夫?」
「お仕事だし…平気です!それに昨日たくさん…あ、なんでもないです。」
顔がゆでだこ状態のエリ。昨日の真実はさておき、さすがに研修旅行までついていくことはできなかった。ミイナを心配する気持ち、コウタと一緒にいたい気持ちはもちろんあるが、仕事の邪魔はしたくない。
「良いなぁ…私も結婚したいなー。誰か付き合ってくれないかなー。」
従業員のひとりがポツリ。今度は願望がだだ漏れ状態。
「ほら、よくお店にくる元気な男の子、あの子とか良いんじゃない?冒険者としても有望だし、明るくて楽しいと思うわよ!」
おばちゃんのアドバイス。
「あ、ビーンズさんですか?」
「そうそう。エリちゃんとパーティー組んだりしてるのよね?どう、良い子じゃない?」
話を振られるエリ。
「良い人ですけど…その…。」
実はビーンズ、ユイと良い感じなのだ。受験勉強を手伝って以来、お互いにちょっとだけ階段をのぼれたらしい。エリとバニラはじれったい思いをなんとかおさえこんで、
いろいろな人の幸せを願い、今日もスイーツづくりに励むエリだった。
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