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「なんですか?」
「まず、クラブの YouTube チャンネルを開設して欲しい。で、クラブの演技会とか試合の動画とかを、そこにアップロードして欲しいの。そうすれば広告収入が稼げるでしょ? 君のバイト代の財源は、できればそれで確保したい。うちのクラブもそれほどお金が潤沢にあるわけじゃないからね」
……ってことは、出来高払いになっちゃうのか?……これはやっぱり、バイト代はあまり期待できないかもな……
「どう、YouTubeチャンネル、開設できる?」
「やったことはないですけど……ノートパソコンは持ってますから、多分調べれば出来ると思います」
「ありがとう。頼りになるわね」令佳先輩がニッコリと笑う。この人のチャーミングな笑顔がこんな間近で見られるなんて……ほんと、なんて幸せなんだ……
だけど、令佳先輩はすぐにその笑顔を曇らせる。
「それから……その……」
先輩の口調が、なぜか少し歯切れ悪くなった。
「君も知ってると思うけど……新体操のコスチュームって……いわゆるレオタードってヤツだから、体の線とかモロに出るし、脚を広げたポーズも取ったりするし……だから、結構キワドい映像も……撮影できちゃったりするワケよね……」
「……」
確かに、それはある。
正直、コスチューム姿の令佳先輩……見たくないと言えば、真っ赤どころか遠赤外領域くらいのウソになる(なんじゃそりゃ)。
「そういうのは当然だけど、公開したらダメだからね。そういう映像の方が再生回数稼げるから、とかいってアップロードなんかしたら……」
令佳先輩がそう言った、次の瞬間。
「!」
風圧が、僕の顔に叩き付けられる。
「……こうだからね」
先輩の右の拳が、僕の鼻先から1センチも離れていないところにあった。僕の背筋に冷たいものが走る。
「一応、私、フルコンタクトの空手の経験者だから。と言っても小学生の頃に辞めてるからかなりブランクはあるけど、今でもまともに入れば、男でもアバラの二~三本は覚悟した方がいいかもね」
そう言って、令佳先輩は不敵に笑った。
「……」
こ、怖ぇ……
「でもね」先輩が拳を引っ込め、いわくありげな顔つきで言う。「君が個人的に楽しむ範囲においては、別にいいわよ。私もそこまでは君を束縛できないし、そうする権利もないと思う。それもまあ、君に対する報酬の一つってところかな。あ、もちろん私達のコスチューム姿を君が魅力的に思うのであれば、の話だけどね」
「……」
そんなの魅力的に決まってる。少なくとも令佳先輩のそれは。
だけど、そんなこと絶対に言えない。
つか、令佳先輩……自分たちのコスチューム姿の映像を、僕がそういう用途に使っても……平気なのか……?
「いずれにしても、浜田君、そういうキワドい映像は、撮ってもいいけど絶対に他に漏らさないようにね」
「は、はい……」
僕はおずおずとうなずいた。
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