風の想い出
勝利だギューちゃん
第1話
ヒュー、ヒュー
風が吹いている。
「風に乗って空を飛びたい。」
子供の頃、夢に見ていた。
父の田舎の近くには、綺麗なお花畑があった。
僕は男だが、よくそこで遊んだ。
でも、それ以外は覚えていない。
ただ・・・
不思議な体験をしたような・・・
夢だろう・・・
でも、大人になると出来ないと知る。
ていうか、したくない。
そう・・・
僕は、高所恐怖症。
落ちても死なない程度の高さなら大丈夫。
でも、命を落とす高さなら、無理。
眼を開けていられない。
ヒュー、ヒュー
風が吹いている。
僕に語り掛けているみたいだ・・・
空を見上げる。
鳥が飛んでいる。
それをみて思う。
「お前らは怖くないのか・・・」
答えない・・・
当たり前か・・・
答えたら、怖い。
「じゃあ、君の飛んでみる?」
声がする。
誰だ?
「ここよ、ここ。君の眼の前」
「なぬ?」
すると、風が渦を巻き、少女の形となる。
「飛んでみない」
「やだ」
「どうして?」
「怖い」
そう、怖い・・・
「ところで・・・君」
「何ですか?」
「私が誰か、訊かないの?」
訊かないといけないのか・・・
「・・・風の精霊というんでしょ?」
「当たり。なら、話は早いね」
「で、どうする気?」
僕の体が宙に浮く。
「さあ、行こう。空の旅へ」
「眼を開けていられない」
「大丈夫。私が握っていてあげるから」
「気体なのに?」
「失礼ね。精霊に不可能はないのよ」
ご都合主義だな・・・
まあいい。
「私の名前は・・・」
「いい、知らなくて」
「覚えてない?」
「うん」
「前に会っているんだよ」
「いつ?」
「君が子供の頃。あの頃もこうして、飛んだよね」
いつだ?だから・・・
「君が2歳の頃だよ」
「普通、覚えてないわ」
「人間は、記憶力がないんだね」
そういうと、少しだけ上にあがる。
「ふうたくん、久しぶりだね」
「なぜ、僕の名前を?」
「2歳の頃に会ったって言ったでしょ。ずっと見てたよ」
「ストーカーですか?」
彼女?はにやける。
「?はいらない。私は女の子よ」
「いくつ?」
「女性に歳と体重は、訊くな」
変なところで、人間ぽいな・・・
「私が、ついているから大丈夫。空の散歩を楽しみましょ」
「だから、怖い」
「平気。」
まあいいや。
しばらくは、このままでいよう・・・
何かを、思いだすかもしれない・・・
でもなんだろう?
だんだんと、よみがえってくる・・・
それを、確かめるのもいいかもしれない。
「さあ、どこへ行きたい?」
「田舎のお花畑」
「了解」
風の想い出 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます