閑話 坂本太郎
小春さんと冬木雪芽の一見が終わり数日経った。
あの事件、イベント?が終わった後は何時もの日常に戻った。
ただ、今日は少しだけ珍しいことが起こっている。
「おお、坂本君が部活に来るなんて珍しいな」
そう、何時もは部活動に顔を出さない坂本太郎が顔を出していたのだ。
「……久しぶりです。」
坂本はこちらを見ずにボソッと返事を返す。
………………。
気まずい。非常に気まずい。俺自身もあまり話が得意な方ではないし……。
あちらも沈黙に耐えかねたのか、鞄の中から本を取り出す。
「おっ!」
その本の表紙には黒髪の少年とサイドテールの美少女が描かれている。
題名は「ときどきハイスクール」実は俺も読んでいるライトノベルなのだ。
捻った裏設定や伏線はないが、コメディー、恋愛、感動がしっかり盛り込まれた作品であり、何より鬱要素がないのがこの本の売りである。
勿論、そのせいで、ストーリーとして面白みに欠けると言われることもあり、賛否が別れる作品ではあるが、俺は結構好きなのだ。
「ど、どうしたの?」
俺の反応に坂本が少し引き気味に問いかけてくる。
「いや、それ『ときはい』だろ?実は俺も読んでてさ」
「えっ。『ときはい』読んでるの⁉」
坂本は俺の言葉に驚き問い返してくる。それもそうだろう。ラノベ好きの中でも『ときはい』を読んでいるのは一部のコアなファンくらいだ。
前に優治にこの本を貸した時も半分くらい読んだところで返されたことがある。
故に『ときはい』好きというのは非常に珍しいのだ。
…………
そんなこんなで俺と坂本は『ときはい』を通じて非常に仲良くなった。
そんな中、俺はふと疑問に思い、坂本に質問を投げかける。
「そう言えば、どうして、今日は部活に来たんだ?いつもは来てなかったのに」
俺の質問に坂本が気まずそうに目を逸らしながら答えてくれた。
「えっと、元々は幽霊部員でもいいって田中君に頼まれたから入ったんだけど……。クラスの方で友達が出来なくてさ、みんなどうやって友達作ってるのかと思って聞き耳を立ててたら結構、部活を通して友達を作ってる人も多いらしいから、今更ながらにね」
…………なるほど、そいう言う事情が
俺は坂本の方をガッと掴む。
「わかる、それめっちゃわかる。」
どうやら、坂本も優治の被害者らしい。
おのれ優治め‼
俺がそんなことを考えていたら、坂本君のいる席とは反対から声がした。
「いや、むしろ今回は俺ファインプレーだろ」
振り向くとそこには優治がいた。だから人の心を読むなと言ってるだろ‼。
優治は心の中でそう考えている俺に対し心底めんどくさそうな視線を向けてくる。
「なんでもいいけど、そろそろ部活始まるぞ」
その言葉に周りを見てみれば既に全員集まっており、優治の言葉通り部活動が始まった。
…………。
俺達にとって部活は最早日常と化しているんだが、坂本からすればそうではないらしく、部活が終わる頃には非常にぐったりしていた。
……折角できた『ときはい』友達だが次の部活では会えないかもな
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