第116話 星の観測会
結局、私とリリアの関係はぎくしゃくしたまま、夏休みに突入してしまった。
まぁ、時間が解決することもあるだろうし、私はやれるだけのことをした。
リリアの方も、完全に私を拒絶したという様子でもない。彼女の中で折り合いがつけば、仲直りできる可能性は高いと踏んでいる。
だいたい、乙女ゲームというのは得てしてこういうものである。
ちょっとつらく当たられたり気まずい時期があったりするそのスパイスが、その後の甘い展開をより引き立てる。そういうものだ。
種も蒔いたし、芽も出た。今更あがいたとてどうにもなるまい。
だが、あまり長引くのも良くないだろう。
どうなるにしろ私には陳謝の手札しかないのだが、ルート分岐のダンスパーティーまでの日数を考えるなら、あまりのんびりもしていられないのも事実だ。
「姉上。星の観測会の参加届、出しました? まだなら、ぼく一緒に出しておきますけど」
夕食の席でクリストファーから話しかけられ、私は頭の中でぽんと手を打った。
星の観測会。
夏休み中に行われる、林間学校とお盆を掛け合わせたような学園行事だ。
星を観測して先人たちに思いを馳せるという名目の、実質は一泊二日の登山・天体観測・ロッジ宿泊体験ツアーといった行事である。
自由参加で、学年を問わず希望者が参加できる。
ちなみに私は去年警邏の深夜シフトと被ったのでパスした。アイザックもパスしたと聞いた。
王子連中はどうしていたのか知らないが、今年はクリストファーも行くようだし、去年より人数が多そうだ。
まぁ、ゲーム進行中の現在、攻略対象たちには「参加しない」という選択肢は端から存在しないのだろうが。
ゲーム内では、登山の途中にはぐれて遭難しかけた主人公を、そのとき一番好感度が高いキャラが助けに来てくれるというイベントが発生する。
狙っていないのにロベルトが来てしまって「お前じゃねぇよ!」となる例のイベントである。
ゲーム通りに物事が進むかはわからないが……行ってみる価値はあるだろう。
2人きりになれるチャンスがあれば、少なくとも話ぐらいはできるはずだ。
このまま夏休みが終わるのを待つよりもずっといい。
私はクリストファーの申し出に甘えることにした。
お母様からは「どちらが姉か分かりませんね」とお小言を貰ってしまった。
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